手ぬぐいとミュージアムと私。
こんにちは、フェリシモミュージアム部 mitu.です。
「もう充分だ!」という枚数があるにもかかわらず、「日常的に使うモノだし!」という言い訳を盾に、私がついつい集めてしまうもの。それが【手ぬぐい】です。
て‐ぬぐい〔‐ぬぐひ〕【手拭い】
手・顔・からだなどをふくのに用いる布。鉢巻きやほおかぶりなどにも使う。ふつう、一幅 (ひとの) の木綿を3尺(約90センチ)に切ったもので、模様や文字が染め出してある。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
ミュージアムグッズとしても例にもれず、素敵だと思うとついつい購入してしまうのです。 今日は、私の手ぬぐいコレクションの中からミュージアムにまつわるものを、少しずつですがご紹介したいと思います。
幅約30~36cm × 長さ約90cmという細長いキャンバス。その中に一体何が表現されているのか? 一緒に見てきましょう。
地域の伝統とシンボルマーク 青森県立美術館
端のこなれ具合からも伝わるかもしれませんが、こちらかなり気に入ってヘビーユースしております。青森県立美術館のミュージアムショップで購入した手ぬぐい「雪ななこ」(アルバムをめくってみると8年前(!)のGWに訪問していました)
雪のような文様は、津軽塗の伝統的な研ぎ出し変わり塗りの技法の一種「ななこ塗り」がモチーフになっています。(調べたところ、ななこ塗りは、菜の花の種を蒔き付ける技法で、 菜種による小さな輪紋の集まりが魚の卵を連想させる模様から、「七子」「魚子」「菜々子」「斜子」などの文字が当てられるそうです。魚卵!)
右下には、青森の「a」と「木」の形がモチーフになった美術館のシンボルマーク。このシンボルマークはもちろん、ヴィジュアル・アイデンティティ(VI)・サイン計画を、菊地敦己さんが担当されています。(菊地さんによるVIについてのコラムが美術館サイトでお読みいただけます→★)
当時、撮った写真を振り返ってみると、美術館の各所で、心躍らせているのがわかります。
オリジナルフォントにときめいて、コインロッカーまで撮る始末。
この手ぬぐいは、津軽塗という青森の伝統工芸と、美術館自身のこだわりが感じられるところがお気に入りです。
フロム収蔵品 九州国立博物館
福岡県 太宰府天満宮のお隣にある九州国立博物館。こちらの手ぬぐいのモチーフは左から「ウンスンカルタ」と「鳥蒔絵螺鈿聖龕(かちょうまきえらでんせいがん)」 です。とも九州国立博物館の収蔵品です。
ポルトガルから伝わったカルタを日本風にアレンジしている「ウンスンカルタ」。ドラゴンに福の神、鎧兜の武士にドレスを着た女王など、和・洋・中が混在した絵柄が興味深いカルタです。
そして「鳥蒔絵螺鈿聖龕」は、近世初期、西欧に輸出された聖画を納める厨子形式の教会祭儀用の漆器のひとつ。こちらの手ぬぐいは、厨子の扉の意匠をモチーフにデザインされています。鳥がかわいい。
この2枚の手ぬぐいは、外国との交流が感じられる収蔵品をモチーフであり、国際的に開かれてきた九州の歴史を象徴するものにもなっています。そういう意味でミュージアム的ご当地感があると思うのです。
博物館のウェブギャラリーで元となった収蔵品がご覧いただけます。
>ウンスンカルタ >鳥蒔絵螺鈿聖龕
個性が生きる 犬島精錬所美術館&博物館明治村
最後は個性派ミュージアムから2枚をご紹介。
上段は犬島精錬所美術館、下段は博物館明治村のミュージアムグッズです。
犬島精練所美術館の手ぬぐいのイラストでは、“「遺産、建築、アート、環境」による循環型社会を意識したプロジェクト”という美術館の取り組みが表現されています。
銅製錬所の遺構である煙突やカラミ煉瓦、太陽や地中熱などの自然エネルギーを利用した環境に負荷を与えない三分一博志の建築、日本の近代化に警鐘をならした三島由紀夫をモチーフにした柳幸典の作品、そして植物の力を利用した高度な水質浄化システム。描かれたHEERINGとCOOLINGの矢印をたどりながら、美術館の記憶も思い出せる手ぬぐいです。
そして、明治建築を野外保存する博物館である明治村。こちらの手ぬぐいのモチーフは、保存されている建物のひとつ「聖ザビエル天主堂」の薔薇窓。
建物正面に入口の上に、直径3.6mを超える大きさで付けられたステンドグラスが美しい窓なのですが、単色でデザインすることでグラフィックとしてのおもしろさが出て、持ち歩きしやすいデザインになっています。車輪や果物の断面のようにも見えます。
鑑賞の余韻とともに
私のミュージアム系の手ぬぐいのすべては、実際に美術館・博物館へ赴き、そこでの鑑賞の後、購入にいたります。ミュージアムグッズとしての手ぬぐいは、訪問の記念品であり、鑑賞から得た知識や感動を、その後の暮らしの中で思い出すきっかけアイテムなのです。もちろん純粋なデザインのかわいさなども心惹かれる理由になりますが、「なるほど……だからこの絵柄、このモチーフなのね!素敵!」そんな手ぬぐいと出会えたときこそ、心打ち震え、わが家へお迎えしてしまうのです。
みなさまにもそんな【手ぬぐい×ミュージアム】はないでしょうか? 世の中には私のような手ぬぐい好き、かつ、ミュージアム好きがいるはず! いつか、これぞという一枚を見せ合い、語り合う会がしたいものです。
今回ご紹介した手ぬぐいのミュージアム
タイプもジャンルもバラバラ(笑)しかしすべて魅力的。現在はコロナウイルス拡散防止の観点から各館休館中ですが、再開した際にはぜひお楽しみいただきたいところばかりです。