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それでも人生は続く

「SHE SAID」を観てきました。

映画のネタバレがありますので、気にならない方だけ読み進めてください。

2017年、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた1つの記事が世界中で社会現象を巻き起こした。
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『恋におちたシェイクスピア』『ロード・オブ・ザ・リング』『英国王のスピーチ』など数々の名作を手掛けた映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ・性的暴行事件を告発したその記事は、映画業界のみならず国を超えて性犯罪の被害の声を促し、#MeToo運動を爆発させた。

取材を進める中で、ワインスタインは過去に何度も記事をもみ消してきたことが判明する。
さらに、被害にあった女性たちは示談に応じており、証言すれば訴えられるため、声をあげられないままでいた。
問題の本質は業界の隠蔽構造だと知った記者たちは、調査を妨害されながらも信念を曲げず、証言を決意した勇気ある女性たちと共に突き進む。
そして、遂に数十年にわたる沈黙が破られ、真実が明らかになっていくー。

映画「SHE SAID/その名を暴け」公式サイトより

印象的だったのは、被害に遭った女性達の”その後も続いている人生”が描かれていたこと。
子ども達とソファーに座ってテレビを観ていたり、
ジョギングをしていたり、
前髪の生え際が白くなっていたり、
居場所も仕事も失い、グアテマラで馬の仕事をしていたり、
25年もの間、自らの遭遇した卑劣な犯罪を世に知らしめてくれる誰かを心のどこかで待っていたり、
そういった彼女達の姿が少しずつ描かれていた。

映画後半、ワインスタインが弁護士を引き連れてニューヨークタイムズに乗り込んでくる。
そして取材記者ミーガンの前で、自分は無実であり、女達がいかに嘘つきで卑怯であるかを言い募る。

「そんな被害に遭って笑えると思うか?」

自己弁護の中に、そんなセリフがあった。

被害者のひとりは、自分の居所を突き止めた記者に驚き「25年待った」と言った。それでもなお、すぐには告発することはできなかったのだけど。
25年。
25年だ。
25年間、笑わずにいるのが正しい被害者とでも言うのだろうか。
25年間、泣き暮らしていたら。
それでも人生は続いているのに。
暴力のあとも。
苦しみが去らなくても。

この言葉はアメリカのワインスタイン達からだけではなく、日本のその辺でも見かけることがある。

「そんな辛い目に遭ったなら、笑っていられるわけがない」

多分、それを発するひとの中で、正しい性被害者というのは被害に遭ったら死なねばならないのだ。
死ぬほど苦しんで死んでしまった者だけが、正しい性暴力被害者なのだ。

被害者が人生の再生を選んだのなら、もうすんだことだと思うのだろう。

加害者に共感して、”正しくない被害者”を糾弾する社会をわたしは絶対に許せない。
被害者に向かって「正しい被害者でないなら口をつぐめ」と言い募る世の中を許せない。


取り急ぎの感想になりますが、映画はとても面白かったです。
ぜひ多くのひとに観てほしいと思います。


では、また。

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