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宇宙のさかいめ。2013.12.22.

宇宙でも星空は見える
地上で見上げる星空と違うところは
足の下にも星空があるというところだろう

無重力って不安かな
なんにもないのただなかでプカリ浮かぶってどんなだろう

なんのミッションも与えられず
真っ暗な宇宙の中で
ぼんやり明るい青い地球をながめてみたい

夜には、光がともるところが街で
なんにも光がないところにも人がいたりシマウマがいたりしている

後ろを振り返って月を見てみればどんなだろう
太陽は暑いだろうか

宇宙には後ろなんてなかったっけ
地球が前で月が後ろなのは、ぼくが地球人だからか

宇宙のただなかで
どこにも定点をさだめないその中で
考え事をしてみたい
昨日のことや
人生のつじつまではなくて
その、今、そこで、ただよっている、わたくし
真っ暗ですっぽり奈落な足下の中で
周りに点々と灯された光を
胸が張り裂けるほど恋い焦がれたい


ほんとうに、人が大地を愛したいのなら
みんなが宇宙から地球を見ればいいと思う
と、どこかの宇宙飛行士が言ってた

ほんとうに、たくさんの民族や生き物が
ほかはどこをみわたしても暗い宇宙の中で
ほんとに奇跡みたいにたったひとつ
青く光ってるんだってさ
そこが自分の住む場所でそれ以外ではないってさ


それでも、ぼくは宇宙に行ってみたい
そこで、ほんとうに寂しく、心狭く、悲しくなってみたい

それは、じぶんが心のほんとうのところでは
たくさんの愛しているふりをしている人たちを
ほんとうに愛したいからだとおもう

石垣島の誰もいない浜辺で
アメリカの知らない人々の雑踏の中で
気が狂いそうになった白い壁の前で
大きくて独りだったバオバブの木の前で

感じた寂しさ、独りの暗さ、そのなかでぼくは、ほんとうに誰でも愛せる心地だったんだ

けれども、ぼくはまだ知らない
じぶんのほんとうの暗闇を
それを知らない限り
星空はどれも寂しげなままだ


今日もぼくは、木を植える
一日一生懸命だけど
ちらと眼の端に写った山の間の青い空は
今、ストーブの前で鮮明に思い出せる

ぼくは、きっと永遠に向かってクワを振り下ろしているんだ、その木を、植えなかったとしてもきっと別の木が生えるだけなのだけど、ぼくは木を植える

ただ僕が植えた木の根が土としっかりくっついていて春になって根から白く気弱なヒゲの根が生えてきて、土に向かって自分を広げることができたなら

その木はいつかの森に向かって歩きだす
ぼくは、この山の生態系に向かってクワをふっている
この山はたくさんの山々と貿易している
あの空の青さも、白い雲のそのカタチもきっと無関係じゃあない

ぼくが木を植えている時に眼の端でみた青い空も、ぼくのふりおろすクワと無関係じゃあない、ぼくと関係のないものなんてひとつもないんだ

ぼくがかんしょうできないことなんてなんにもないんだ

昨日までの雪が、朝日に溶けだした頃
ぼくを含んだ山の斜面の全体は
はーー
って白い息を空に向かって吐きかけた

土の妖精が空に帰るみたいで感動的だった
寒い空気はぼくを冷やすけども
空は透明で山が近い
そのほんのもう少し奥の方が宇宙というやつで
どこから宇宙がはじまるというような境目はない
だとすればだな、この土の上にあったとしても
ここも宇宙なんだな

無関係ではないんだな、いつか行ってみたい場所ではないのかもしれない、山から立ち上る湯気の中にもぼくの吐く息は混じりこんでる、ぼくは雲を吐く男だ、ぼくは宇宙の中にあって宇宙を見る人だ、ぼくは宇宙の未来に向かってクワをふる人だ

きっと宇宙にはじまりなんてないのだろう
きっと宇宙にはてなんてものもないのだろう
今ここにたつ自分の腹の中にも広がってる空っぽが

はじまりと、終わりの向こう側と、つながっているということ、ドーナツを眺めながらそんなことを考える、いかにも確かに大いばりする台風ですら、その勢いをその外側から取り入れている、それでいて、そこには真ん中はないんだな、台風の目はぼくが一日いかにも確かに生きているけども、その腹の中には空っぽを隠し持っているのと同じような様子をしている

ぼくの外側のすべてがぼくの内側のすべてだとすると、ぼくという現象は、その間だということなのか?そういえば地球と宇宙に境目なんてないんだったっけ?

「これから」を消しても、今は残る、「さっき」を消しても今はのこる、でもすべての「これから」とすべての「さっき」の間に境目なんてあるのだろうか?

ぼくの歯は、ドーナツの外側と内側のその間をかじる。いかにも確かにドーナツの味がする、けれどもそれはさっきの話だ、かじられたドーナツは、それでもまだドーナツと言えるだろうか?

ぼくの動きはいつも境目にある
ぼくの動きはいつも境目を<つくる>

こことここじゃないをつくる足
今と今じゃないをつくる心臓
あれとあれじゃないをつくる頭

ぼくという存在は、あれと、これの間だ
内と外と、その間に存在するドーナツや台風のように
ぼくにもきっと味がある、勢いがある

宇宙は転がりながらも「間」をすべりつづける
くわをふるぼくや、ジタバタするぼくを含みながら
それに、ぼくは無関係じゃない、大気圏でさわることができる大気との摩擦のように、すべての挙動が宇宙と直結していて、それはたいした話ではない

たいした話ではないけども、当たり前の中にある宇宙を発見した時、ぼくは感動する。

今朝みた、山々の間に光る青空が、地球の青い光なんだということ、それを感じる時、ぼくは、宇宙にいてる。

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