『和紙』について
和紙は日本文化に深く根づいた伝統素材です。1400年もの歴史があり、奥深い存在であり続けています。
今回は、和紙について解説いたします。
〈目次〉
1.紙は中国から伝来。日本で和紙として進化
2.和紙の原料
(1)麻
(2)楮(こうぞ)
(3)三椏(みつまた)
3.和紙の製法
(1)手漉き
①溜め漉き
②流し漉き
(2)機械漉き
4.和紙の用途
(1)明かり
(2)雨具
(3)記録
(4)建具
(5)日用品
(6)浮世絵
1.紙は中国から伝来。日本で和紙として進化
紙そのものは中国から伝来しましたが、その後、日本で「和紙」として進化をとげました。
和紙は、日本ならでは素材と技術で創作された、
日本文化の結晶と言えます。
和紙は時代を経るに従って、使用する人々の裾野が広がっていきました。そして、江戸時代にはピークを迎えました。
2.和紙の原料
和紙には麻や楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)、桑、竹、など多くの原料があります。
代表的な麻、楮、三椏の原料で作られる和紙の特徴を説明します。
(1)麻
古い時代に使われていた和紙の原料です。繊維が強いため、煮たり、すり潰したりして使われました。楮が登場するまでは和紙の主要な原料でした。
(2)楮(こうぞ)
現在、最も多く使われている和紙の原料です。繊維が長いため、丈夫な紙を作ることができます。
楮は成長が早く、2-3年で収穫できるので環境に優しい原料です。
(3)三椏(みつまた)
繊維が細いので柔軟性と光沢感のある仕上がりになります。
「世界一品質が良い」と言われている、日本の紙幣の原料に使われています。
3.和紙の製法
和紙の製法は「手漉き」と「機械漉き」があります。また、手漉きには「流し漉き」と「溜め漉き」があります。
それぞれの製法の特徴に関して説明します。
※漉く(すく): 溶かした原料を簀子(すのこ)の上に薄くのばし敷いて紙をつくること。
和紙の製法は大きくは、手漉きと機械漉きに2分されます。
(1)手漉き
紙を漉く人の個性が現れます。また、様々な素材を和紙に漉き込むことによって、デザイン性の高い和紙を作ることができます。
手漉きの方法には、溜め漉き と 流し漉き があります。
平安時代の和紙は、溜め漉きで作られていましたが、その後の時代では、流し漉きの方法が主流になりました。
溜め漉きと流し漉きでは材料が異なります。
①溜め漉き
紙を漉きた後に、湿紙同士がくっつかないように、布を間に挟んで重ねていきます。
②流し漉き
「ネリ」という材料を加えます。「ネリ」は和紙の繊維のちらばりを促し、繊維の絡みを助ける効果があります。
流し漉きは、ネリの効果により繊維の結束力が強まり、紙がくっつきにくくなるので、布は使わず、直接湿紙を重ねることができます。
(2)機械漉き
均一の品質の紙を、大量に生産するのに向いています。
3.和紙の特徴
和紙には強さ、保存性、吸湿性という3点の特徴があります。
(1)強さ
和紙の強さの秘密は、繊維の長さにあります。
楮(こうぞ)の繊維の長さは約7ミリ、洋紙の原料であるパルプは1~2ミリです。
洋紙に比べて軽いにも関わらず、破れにくく、しなやかで水にも強い、という特徴は繊維の長さに由来するのです。
(2)吸湿性
和紙は長い繊維が絡み合っているため素材の表面積が大きく、水分を吸収したり放出したりして、湿度を調整する機能があります。
夏は高温多湿、冬は乾燥という日本の気候を過ごしやすくするために建具の素材として使用されました。
(3)保存性
正倉院(東大寺の財宝庫)には今から1000年以上前に使われた紙が残されています。和紙の保存性の高さを示す事例です。
洋紙の寿命は、酸性紙が100年、中性紙が3ー400年と言われています。
和紙の1000年以上という寿命がいかに優れているかおわかりだと思います。
4.和紙の用途
和紙の持つ強度、吸湿性、保存性という特徴を生かした様々な用途があります。
(1)明かり
和紙は裏が透けて見えるほど、薄く作ることができます。薄い紙は光を通します。
光の通しやすさを利用したのが障子や行灯、提灯、灯籠など照明に関連する道具です。
和紙は柔らかで温かみのある明かりを生じます。
例: 提灯(ちょうちん)、行灯(あんどん)、ぼんぼり
(2)雨具
和紙に油を塗布して防水性を高め、傘や合羽などの雨具も作られました。
例: 傘、合羽(かっぱ)
(3)記録
書物、巻物、日本画紙、版画紙、書道紙、手紙、色紙、紙幣
(4)建具
障子、襖、衝立、屏風
(5)日用品
折り紙、紙衣、扇子、うちわ、紙袋、懐紙、鼻紙、尻拭き紙
(6)浮世絵
浮世絵に用いる用紙は、一般的に和紙です。一枚の紙に何色も色をすり重ねていくので、丈夫な和紙が適しています。
参考元: 「おうちで名画印刷」ホームページ
以上
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