と言っても
夏の夜は暑い。
何度暑いと言っても暑いものは暑い。
夜と言ってももう朝日は差し込んでる。世は所謂朝のようだが、私達にとっては夜である。
我が家のエアコンはずっと28度で働いている。何故なら電気料がかかるから。それ以外の理由はない。彼がいる時だけ24度で働く事となる。エアコンも24度にエアコンを向けられたら
"はいはい。また男ね。"と思って働いているはずだ。
「乾杯〜!」
「もういいよ、乾杯っていうの。何本目だよ」
目に入った人、端から声を掛けて遊んでいた。自分がどの程度 世間で構ってもらえるかを試していたからだ。毎晩酒に溶け、空いている時間は全て遊びに徹した。そんな時、突如出会った彼に惹き込まれてしまい、遊び歩いていた足は止まって彼の方に向かって歩いた。散々新鮮さを求めて遊び尽くしていたが、遂に新鮮さは枯渇し、寂しくて辛くて魅力のない自分は心身の安定を求めて落ち着いた。
「いつだって新鮮な気持ちでいたいでしょ」
私は彼に言い返した。
「お前らしい遊び人の返事だな」
彼の見透かした返答だ。でも彼になんと言われようとそれは過去の話だ。もう、なんと言うか。彼にどっぷりと惹かれてからは体が動かないのだ。惚れた女の負け。諦めよう。しょうがない。
でも言い方を変えれば遊び人と思われてるのは褒め言葉だ。自然体の自分を認めてくれたと言う訳だ。安心しよう。
「ありがと」
「は?」
彼は眉間に皺を寄せ、お酒を一口飲む。そんな彼の背中にぴったりと自分の背中をつけて座る。暑いと言われても離れないんだ。違う方を向いて背中合わせでも、心はこれからも繋がったまま。絶対に繋がったままなんだ。根拠はない。でも、あなたについて行くと決めたから。そう決めたから。