澤田智洋さん×島田彩さん「自分の“弱さ”を愛する方法」イベントレポート
「自分の"強み"はなんだろう?」人生のあらゆるシーンでこう問いかけてきたひとは多いでしょう。これまでの世界は「強さ」が正義でした。しかし、強さばかりで戦うことは、決して簡単なことではありません。それに、強さは人間のごく一部でしかありません。強さにこだわるよりも、誰しもがかかえる弱い部分を愛して生きていけたら、人生はもっと生きやすくなるのではないでしょうか?
そんな考えのもと、noteは、3月3日(水)に澤田智洋さんと島田彩さんが出演するトーク番組「自分の"弱さ"を愛する方法」をライブ配信しました。
大手広告代理店のコピーライターでありながら、息子さんの視覚障害をきっかけに人生の舵を切った世界ゆるスポーツ代表理事の澤田智洋さんと、教育や就活分野のソーシャルデザインに関わってきた島田彩さん。自分のかかえる「弱さ」に真正面から向き合ってこられたおふたりに、どんなふうにひとや自分の弱さを捉えているのか、どのように弱さを愛し、居心地のいい世界をつくっているのかについて、じっくりお話を伺いました。
イベントのアーカイブ動画はこちらからご覧になれます!
おふたりの人生を振り返る
息子さんの視覚障害をきっかけに、「弱さを生かせる社会」をつくりたいと考えた澤田さん。広告代理店でのコピーライターの経験を生かし、広告的な手法でマイノリティに光を当てるプロジェクトを次々に立ち上げてきました。3月3日(水)に発売された著書『マイノリティデザインー弱さを生かせる社会をつくろう』(ライツ社)では、ご自身の経験から辿り着いた「マイノリティデザイン」の心得、実践例、発想法を紹介しています。
「小学1年生ぶりに、父の前で真っ裸になった話」、「7日後に死ぬカニ(完結編)」、「今週末の日曜日、ユニクロで白T買って泣く」などのnoteの記事が大きな話題を呼んだ島田さん。作家活動を中心に、企画やデザイン、司会業など幅広く活躍する島田さんは、「HELLOlife」で教育・就活分野のソーシャルデザインに取り組んだ経歴を持っています。
おふたりはどのように「弱さ」を捉え、そうして見えてきた「自分」と「社会」をどのように接続しているのでしょうか?
「弱さ」をブレストする
これまで200人くらいの障害のある方やそのご家族に会って話をしたという澤田さん。障害者の方たちが、弱さをシェアすることで周りを味方につけ、前向きに生きている姿を見て、「弱さブレスト」という新たな視点が生まれたといいます。
ビジネスの世界では、「この商品の強みは何か?」とブレストすることはあっても、「弱さ」をブレストすることはありません。しかし、強みを追求していくと、結局ほかの商品と被ってしまいます。「『弱さ』は被りがあまりないし、弱さブレストをすると無限にアイデアが出てくる。すごく視界が開ける感じがありました」と澤田さんは振り返ります。
昔から自分のいいところより弱いところに目がいくタイプだったという島田さんも、澤田さんの言葉に深くうなずいていました。「ひとは自分の身を守るために弱みを隠しているけど、そのひとが本当に大事にしていることは弱みから見えてくるんじゃないかな」。強みは目につきやすいけれど、弱みに目を向けたほうがそのひとの本質を知ることができるのではないか、と島田さんは指摘します。
誰もが笑いながら楽しめる「ゆるスポーツ」
「自分の弱さを出す」という方向に考え方をシフトさせた澤田さんは、自身が苦手なスポーツに着目します。スポーツが得意なひとだけが活躍するのではなく、苦手なひとでもオリンピック選手に勝てるようなスポーツをつくれないかと考え、「世界ゆるスポーツ協会」を設立しました。
ゆるスポーツは、運動が苦手なひとも障害があるひとも「誰もが笑いながら楽しめるスポーツ」で、「弱さ」を生かしたルールがつくられています。「たとえば、心臓病で、走り続けることができないという弱さがあったら、それを生かして『500歩しか歩けないサッカー』をつくる。心臓病のひとの擬似体験をみんなでするわけです。このように、弱さを起点に考えると思いもよらないアイデアが出てきます」と、澤田さん。
同じくスポーツが苦手という島田さんも、「弱いひとにハンデをつけて力をならすのではなく、みんな同じスタートラインに立ち、そして本気で楽しめる…その環境をデザインするという、ゆるスポーツの考え方が好きで。普段の日常生活でもその考え方を大事にしたいなと思います」と話してくれました。
「マ"ジョノ"リティ」という考え方
澤田さん、島田さん、そして司会のnoteディレクターの志村さんも、スポーツが苦手。3人とも「スポーツが苦手=マイノリティ」と思っていたけれど、3人全員スポーツが苦手なら、それはこの場では「マジョリティ」なのでは? という話に。
マイノリティとマジョリティの概念が混じっていくことについて、澤田さんは「シチュエーションが変わると、それまでマジョリティだったひとがマイノリティになることがある」と、具体的な例を挙げてくださいました。
たとえば、風邪をひいて寝込むことも期間限定のマイノリティ体験。動けなくなったならではの気づきが生まれます。その体験を大切にして、それを起点にアイデアを出せればいい、と澤田さんは言います。
島田さんは、マイノリティな部分を持つ人は大勢いる(マジョリティだ)という状況を、「マジョノリティ」という造語で表現しています。
「世の中には三角形が怖いとか、お茶が飲めないとか、さまざまなマイノリティがいます。マイノリティの内容はひとそれぞれだけど、みんながマイノリティを持ってるんじゃないかな?」と島田さん。誰もが「マジョノリティ」だともいえるのかもしれません。
弱さを「みじん切り」する
志村さんの「どうしたら弱さを見せられるようになるのですか?」という質問に対して、島田さんのおすすめは「弱さをみじん切りする」こと。「弱さはカボチャみたいな物で、外が硬くてなかなか踏み込めない。でも、それをみじん切りにして小さな塊にすると、ひとに言いやすくなることもある」。
澤田さんも、「弱さは単体で成立しているわけではなく、さまざまな要素が重なってできています。弱さを分解して軽量化すれば、具体的になり、解決の糸口も見つけやすくなる」と教えてくれました。たとえば、「親とうまくいかない」という弱さがあったら、それを分解してみる。そこから「お父さんが野球が好きすぎて話が噛み合わない」など、弱さが具体的になると、より取り組みやすくなります。
「弱さをみじん切りする、分解するというのは、自分の気持ちを軽くするだけでなく、弱さとのお付き合いの仕方を工夫することでもあるんです」と島田さん。確かに、深刻な弱さはなかなかひとに見せられないけれど、みじん切りにした弱さのかけらを少しずつ開示していくことならできそうです。
視聴者のみなさんの質問
最後に、イベント中にみなさんからいただいた質問に答えていただきました!
島田さん:たとえば服を片付けるのが苦手だったら、木の形をしたハンガーラックにぽんぽん服をかけることで「服の木」ができますよね。それを「自分の服でできたアート作品」と捉えることもできる。このように、片付けができないことを逆手にとって自分の「オブジェ」をつくっちゃうといいかも。
澤田さん:「片付けができない」という言葉を「育っている」と言い換えてみるといいかもしれませんね。「あれ、先週よりめっちゃ服育ったな」みたいな。
最後に、おふたりからひとこと
澤田さん:自分がスポーツが苦手でよかったと思っています。得意なひと、強いひとから見えている世界は狭いんじゃないかなと。弱いひとのほうが世界を解像度高く見ている。そこから社会が変わっていけばいいなと。みなさんも、弱さという視力を人生のどこかで生かしていただけるといいなと思います。
島田さん:弱さについて語れるこの場があってよかったなと思いました。弱さの話しかしていないのに楽しかったです。弱さというのは愛すべきものだなと。普段からこのような場を持つことができればいいなと思いますね。
澤田さん、島田さん、ありがとうございました! おふたりのnoteも、ぜひご覧ください!
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text by 渡邊敏恵