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「縛られなくていい。ルールは自ら作るものだから」元メガバンク出身のシナモン山村 萌 氏が創り上げたスタートアップ執行役員までの軌跡

「誰もが新しい未来を描こうと思える、創造あふれる世界を、AIと共に」をパーパスに、高度なビジネスAIソリューションの開発に取り組む株式会社シナモン。同社の執行役員として活躍する山村 萌(Moe Yamamura)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。

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“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。for Startups, Inc.のヒューマンキャピタリスト砂川 紗輝(Saki Sunagawa)と申します。私たちが所属するfor Startups, Inc.では累計650名以上のCXOを含むハイレイヤーや経営幹部クラスのご支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。

EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。

山村 萌(Moe Yamamura)
京都大学経済学部卒業後、新卒でメガバンクに入社。法人向け営業職として、ベンチャー企業を含む中小企業向け提案営業に従事。その後、2019年9月より株式会社シナモンに入社。営業として参画後、2022年2月に執行役員に就任。

AIで人間らしく創造性あふれる世界を実現するシナモンの事業内容とは

-- まずは、シナモンの事業内容と山村さんの役割について教えてください。

シナモンは「誰もが新しい未来を描こうと思える、創造あふれる世界を、AIと共に」をパーパスとし、高度なビジネスAIソリューションの開発に取り組んでおり、それらを多数の国内大手企業に提供しています。

AI OCR、特化型音声認識技術等を開発・展開し、Digitize(デジタル化)、Structure(構造化)、Understand(理解・活用)という3つの独自研究領域に基づいて、業界特有の非構造化データを活用するビジネスAIソリューションの開発を進めています。

私はその中で執行役員として、ソリューションの強化、および、それによる受注の最大化をミッションとしております。クライアントとの接点となるマーケティング・インサイドセールス・事業開発の3領域を担当し、ニーズを俯瞰的に把握する中で、日々進歩するテクノロジーをどのようにビジネスに落とし込んでいくかを考えています。

今あるルールに縛られず、自らルールを作っていく

-- 山村さんの過去を遡らせてください。どんな幼少期を過ごされていましたか?

私は物事が平常的に進むことはなく、常に予期せぬ出来事が起きていく方が普通だと考える性格なので、幼少期かなり過保護に育ててもらった自分の環境に対して、恵まれすぎていることへの大きな焦りを感じていましたね。
京都大学に進学したのも、守られた環境の中で本当の意味で大人になれるのかと、焦りを感じたからです。周囲の人間関係も固定されていたので、果たして違う環境の中で自分は通用するのだろうかと思い、実家を出ることを決意しました。

-- 実際に、違う環境に飛び込んでみていかがでしたか?
生まれ育った地域を離れるという意味では違った環境でしたが、大学そのものは同質的な環境であり、周囲に対しては変わらず焦りを感じましたね。大学に合格することがゴールになってしまっているような方も周りに多かったからです。こんなに恵まれている環境なのに、新しいことにチャレンジせず、現状維持のまま過ごすのは勿体ないなと。

大学生は時間の制約がない中で、たくさんの特権を持っていると思います。私は体育会サッカー部のトレーナーを務めていたのですが、当時は大学生という特権を使って、地域活動や営業活動を通してスポンサーを集めたり、小学生と交流をしながらイベントを企画するなど、いろいろな取り組みを行っていました。

本業のトレーナーとしても、選手の怪我をどのように減らせるか、どうすればパフォーマンスを高められるかを念頭において、組織として試行錯誤を積み重ねていくことが非常に面白い経験でした。

–– 大学生の特権を活かしながら幅広く活動されていたのですね。振り返って、仕事に繋がっていると感じる部分はありますか?

自分でPDCAを回して改善を積み重ねていくことと、ゴールを定義して自らルールを作っていく経験ができた点は、今の仕事に向き合う姿勢に通ずるものがあるなと思います。学生時代から一貫して、人に与えられたルールに則って生きていくのではなく、自分でルールを作っていくことが好きな性分なんだと思います。

ルールの中で価値を出せずに苦しんだ新卒1社目の葛藤

-- ルール作りが面白いと感じる山村さんが、新卒でメガバンクを選ばれていますね。当時はどのような就職活動をされていたのですか?

スタートアップを含め、業種・規模問わず、様々な会社を見ていました。ただ、どの会社も面白そうに見えたのと、実際に働いたことがなかったので、まずは会社そのものを見極める力をつけ、ビジネスを学びたいと思いました。最終的には、いろんなビジネスを見られる環境ということ、加えて「すでに出来上がったルールを実行する」という、自分が苦手としていることを敢えてやってみようという意識で、メガバンクに決めました。

-- 実際入社してみていかがでしたか?

新しい事業に挑戦する企業を支援する機会も多く、環境としてはとても恵まれていて、ものすごく貴重な経験をさせてもらいました。ただ葛藤もありました。

-- どういうことでしょうか?

スタートアップへ融資を検討する機会も多かったのですが、数多くの課題と日々向き合っている中で、スタートアップは1年間でガラリと景色が変わっていくことを実感していました。

一方で、高リスクと分類されるスタートアップ向け融資はとにかくハードルが高く、どんなに融資に付随して収益機会が見込めても、1つやりたいことを提案するのに、20のステップを踏まなければならないといった仕組みになっていました。

もちろん、洗練された仕組みであり、会社を守るためには必要です。スタートアップに転職してから、大企業ならではの仕組みや仕事の進め方を理解していることで助けられたこともたくさんあります。当時、丁寧に教えてくれた周囲の方々には改めて本当に感謝しています。

ただ、「なぜそれが自分たちの会社に必要なのか」「その目標設定は本当に正しいのか」という考えが生まれやすい環境ではありませんでした。学生時代から常にルールに従うのではなく、作っていくという考え方をしてきたので、苦しかったのだと思います。

ふと立ち止まる。そして同じ目的地に向かうバスに出会う

-- そのような中、約3年半在籍されたメガバンクを、どのようなきっかけで離れようと思われたのでしょうか?

スタートアップの方とお話をすると、資金調達はさることながら、銀行としては支援できないものの、人材が足りないとのご相談をいただくことも多く、むしろ自分がこの中で働けたらいいのに、という想いが徐々に芽生えてきました。

そんな中、体調を崩して、一度立ち止まった時期があったのです。その時、私が休んでいても組織や社会が回っている様子を見て、「自分はこの組織で働くことで本当に社会に価値を出せているのだろうか」と感じました。良い機会だと思い、かねてから挑戦したいと考えていたスタートアップへの転職を考えはじめることにしました。

-- スタートアップへの転職を検討されている中で、弊社の杉本容啓にお会いいただいたのですね。当時はどのような印象を持たれましたか?

杉本さんとの出会いは、一言で言うと衝撃でした。私は銀行で働いている時、「なぜそんなところにお金を貸すのか」と言われ、ある種の孤立を感じていましたが、自分と同じようにスタートアップを信じ、支援している姿がとにかく楽しそうなのが印象的でした。

実際に何社かの面接を受ける中で、大企業での経験を持つ私に可能性を感じてくれる人がスタートアップの中にいることがわかり、少しずつ自信がついてきました。その中で、自分が一番化けられる、一番吸収できるところで働きたいと考えながら選考を進めました。

-- なぜシナモンに入社を決められたのでしょうか?

一番よくわからないところだったからです(笑)。

私は会社をベクトルの集合体で捉えていて、個人が持っている方向性とベクトルの長さみたいなものがつながって、会社の方向性に沿っていくと思っています。

各社、ベクトルの向きが揃ってうまく事業を収斂させていくと思うのですが、シナモンに関しては、どうベクトルを整理していくのかがまだ決まりきっていないところが面白そうだなと感じました。生意気ですが、やりようがあるなと。

夢は、走りながらアップデートするもの

-- シナモンでは、営業からスタートされていますよね。

はい。シナモンはAIを起点にした事業を行っていますが、メガバンク出身の私には、最初はAIどころかITの知識も何もなく、一番の下っ端として上司の営業にひたすらついていくところからのスタートでした。空き時間がないくらいにとにかくいろいろな場に顔を出していましたね。

-- すごく充実されている印象でしたが、その分苦労されたことも多かったのではないでしょうか?

大前提、綺麗なオペレーションが整っているわけでもなく、かつ無駄な時間は1分もないため、一回のアウトプットがものすごく重要になります。その点、最初はかなり難しかったですね。色々な問題が常に起こることが普通なので、埋まっているスケジュールを無理やり空けて対応することが何度もありました。

一見するととても大変なように見えますが、何もやらない方が辛いので、今の仕事は本当に性に合っていると思います。

-- そして、2022年2月に、執行役員に就任されましたね。

はい。ただ、経営と近い距離で仕事をしていたこともあり、執行役員になる前と後では、やることが驚くほど変わらないんです。執行役員ってなんだろうとすら思っています(笑)。ただ、チームが大きくなる中で、自分ひとりでPDCAを回すだけでなく、会社の課題を踏まえて会社・チーム・個人の目標を擦り合わせていく役割が重要になってきていると感じています。

-- 山村さん含め、社員一人一人と会社の方向性をすり合わせるということですね。シナモンに入社されてからこれまで、山村さん自身が大事にされてきた考えなどありますか?

1つは、目標やゴールは自分で考え、目の前のひとつひとつの事象にコミットするということです。大企業のように、このタイミングでこれをしなければならないというマイルストーンは勿論なかったので、「守破離」を意識し、まずはできる人を徹底的に真似して、徐々に自分のスタイルを確立していきました。このように目の前のことにコミットした結果、少しずつできることが増えていきました。

もう1つは、同時にそのゴールをそこまで絶対視しないことです。弊社代表の平野がよく、「夢をアップデートする」と言っています。今日見える景色と1年後に見えるそれは大きく違うので、夢(=目標やゴール)は一旦置いて、走ってみてまたアップデートしていく。この考え方をすごく大事にしてきました。

-- 山村さんにとって”夢をアップデートする舞台”として、スタートアップがぴったりだったのですね。それは誰しもに当てはまると思いますか?

いいえ。自分たちで考えて新しいことに挑戦する、それを楽しみながらやっている人がいる環境であれば、スタートアップであれ大企業であれ、形態は重要ではないと思っています。大企業には潤沢なリソースがありますし、スタートアップにはゼロから積み上げていく面白さがある。

大企業もスタートアップも経験したからこそ、あくまで自分のやりたいことを実現するためのステージがどちらなのか、自分がより価値を提供できる場所はどちらなのかという考え方が大事だと気づきました。

個人と会社のベクトルがうまく重なる組織に

-- 最後に、山村さんが選ばれたシナモンという舞台で、今後成し遂げたいことについて、教えてください。

個人のベクトルと会社のベクトルがうまく重なる組織をつくりたいです。会社のベクトルの中に無理やり自分のベクトルをはめるのではなく、あくまで自分のベクトルの中に、会社のベクトルがあると私は考えています。全員が、本当に自分の意思でやりたいことに邁進できる、そんな組織を作っていきたいです。

-- そのためにどんな人と一緒に働きたいですか?

「わからない」を一緒に楽しめる人に来ていただきたいですね。最初はわからないことの方が多いと思いますし、完璧に整ったオペレーションは用意されていません。もしかすると、自分のやりたいことも完全には明確にならないかもしれない。ただ、その「わからない」状態で、まずはやってみる、それを楽しむということを私はすごく大事にしているので、そんな人と一緒に働きたいです。

砂川 紗輝(Saki Sunagawa):中央大学商学部在学中、ソーシャルビジネスコンテストを通して社会課題の解決に興味を持つようになり、卒業後は日本の最重要社会課題である労働人口不足の課題を解決するネオキャリアに新卒で入社。介護事業部にて介護事業所での介護職経験を経たのち営業に従事。その後、介護領域だけでなく広く、成長産業による社会課題の解決に取り組むスタートアップを支援したいという思いを抱き、フォースタートアップスに参画。現在はヒューマンキャピタリストとして「個人の個性や情熱を価値に変える」パッションエコノミーを牽引するスタートアップの支援に力を入れる。

EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Saki Sunagawa/ Editor:Hanako Yasumatsu、Takumi Kubota / PR : Megumi Miyamoto / Photographer : Hideaki Ichikawa

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