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街中でスナップするなら、シルバーのカメラがいいのではないか。

 ここ最近、とみにそう思うようになった。
 昔のライカがシルバーよりもブラックの方が値段が高かったのは、塗装という手間や原料が必要だったことに加え、ステルス性が高い、という特徴があったからだ。いわゆるプロ仕様というわけだ。
 ガラスに映りこむのも抑えられるし、なにより黒いボディのカッコよさといったら、ということもある。

 フジフィルムのカメラ、X100は、最初シルバーモデルしかなかった。あとで、特別仕様としてブラックが出たが、これがなかなかカッコイイと思った。それでX100Tを手に入れるとき、通常モデルとしてラインナップされたブラックを手に入れたいと思った。しかし、つかっているテレコン、ワイコンがシルバーに合わせてあったため、ここでボディを黒くするとなんだか違和感があるなあ、と思ってしまった。それで結局再びシルバーにしてしまったが、あの少しあか抜けない感じのTのフォルムにはブラックが良かったな、と今でも思っている。
 テレコンやワイコンがシルバーで合わないと考えてのシルバーボディだったが、先日ライカのブラックボディに貴婦人を付けている人を見かけ、全然アリじゃん!と思ってしまった。が、実際X100のブラックのレンズ鏡胴部にシルバーのテレコンなりを装着したら、違和感があるだろうなあと、当時そこまで考え込んだのだから、今さらしょうがない。
 とはいえ、X100Fを手に入れるとき、今度こそ、もうテレコンやワイコンをつけたときのみてくれなんてどうでもいいからブラックにしようと思った。ら、今度はシルバーの色味が変更になったじゃないか。なかなかよさげじゃん、と思いつつ、でも、今度こそ、という思いでブラックにしてしまった。そうしてシルバーのテレコンワイコンを付けてみると、思ったほどちぐはぐ感はなかった。

 で、X100V。もしこれを手に入れるとしたら、シルバーだろう、と思っていた(多分買わないけどさ)。細部がよりスタイリッシュになって、角々しているこのカメラなら、シルバーがいいだろう、と。しかし、実際に、お店で触る機会を得て、「ん?」と思った。このシルバーの色味に比して、ずいぶんとボディの軽さが際立ってしまい、シルバーの金属感が軽薄に感じられてしまったのである。
 これならブラックのほうがいいかもしれない。そう思うものの、ブラックボディを実際に手にしていないので、どうなるかは分からない。でも、どちらにしても、しゅっとしていてかっこいい(いや、買わないよ、きっと、…たぶん)。

 下手なシルバーは、むしろ安っぽく見えてしまう。EOSkissdigitalXをシルバーにしたとき、あとで感じた感想だ。X100Vはけっこういいんだけれど、でも、この色味ならもっと重さがあった方が釣り合うような気がしてしまう。

 そうやって、X100シリーズ、どっちの色にするか問題はけっこう悩みの種であった。
 ライカMに関しては、迷う隙がなかった。
 このお値段で??? このお値段で???
 というのが先にあって、色がブラックじゃないといやだ、とか言ってられなかったから。

 そうしてシルバーを手に入れたのだけれど、そこから思ったのが、いや、X100Fを手に入れてからかもしれないが、街中で撮り歩くには、実はシルバーの方が目立たないんじゃないか、ということだった。

 一眼レフで街中をスナップすると、大げさな感じがして嫌だった、それでX100シリーズはその小ぶりさで、街中をさっと撮れる感じがし、かつ持ち運びも楽だから、そればかり使ってきた。が、寧ろ小さくて、黒いボディはステルス性が高い分、逆に、このおっさん、街中でなにしてんだ? となるのではないかな、と思ってしまう。自意識過剰なのかもしれないが。

 通り過ぎる人にぐっと寄って、というようなキャンディットフォトのようなことはしないけれど、ただ普通に街中をスナップするにおいてはシルバーの方が警戒心が少なくなるのでは、とも思う。

 そういうと、X100Vの発売当初のくだんの事件のことが思い出されるのだけれど、まあ、あそこまで露骨にすると、どんなカメラだろうが、嫌がられるに違いない。あの件の前から知っている方だし、そんな撮り方もあるのな、とは思っていたけれど、僕自身は他人を不愉快な思いにさせてまでは撮ろうとは思わない。

 ただ、シルバーのカメラという存在は、街に溶け込みやすいと思うのは今の実感としてある。街に紛れてむしろ目立たない、というか、ああ、写真が好きな人なんだね、と流されるのでは?というように。

 先日、スタバでコーヒーを注文していたら、首からさげたままのライカを見て、「わたしそんなに詳しくないんですけど、それライカというカメラですよね」と店員さんに声をかけられた。「いいものお持ちですね」と。
 そうやって声掛けいただけるのは嬉し恥ずかしなのだけれど、むむむ、とも思った。いや、むしろこれでいいのかもとも思った。この、赤丸のロゴをなんとかしたい!という気持ち。Pではないライカがそのロゴを消し去るには、シルバーだとちょっと難しい。対して、いやいや、40そこそこのおっさんが、金にあかして高いカメラふりまわしているだけだ、と思われた方がいっそのこと街スナップにはいいんじゃないの? という気持ち。

 でも、どっちにしても、シルバーは街撮影にいい。目立つ方がむしろ、まわりに溶け込む。それに目立つから自分の佇まいも気を配るはず。
 いや、でもそれなら、一眼レフで撮るというのもまたアリなんじゃないかな、そんなふうにぐるぐる思考はめぐるのだ。

 そう言うわけで街スナップ。
 xpro2 にアポスコパー90mmをつけて。

 xpro2 は黒いカメラです。

街をゆく後ろ姿。あるいは街の背骨たち。
街を支えている人たちの背中は多くを語らないけれど饒舌だ。

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