脱炭素とトラック
1月18日、欧州にて、トラックなど大型車両の環境規制の一つ、CO2排出ガス規制の改定案が暫定合意に至ったというニュースが流れたので、その経緯や一連の流れをサクッと整理してみた。
記事要約
トレーラー等の大型車両から排出されるCO2は、道路交通部門全体の25%、欧州全体の6%を占める。
今回の改訂で、既存の2030年目標強化&2035年以降の目標追加&都市バスゼロエミッション化。
新車はだけゼロエミッション化しても効果は限定的、中古車をどうするかという問題が残されている。
1. 大型車両からのCO2排出と現行規制の整理
日本を含めどこの国でもそうなのだが、乗用車やトラック等の車両から排出されるCO2はEU脱炭素 by 2050達成を目指す上での喫緊の課題となっている。
現状、道路交通部門からのGHG排出は、EU全体の5分の1を占め、都市大気汚染の原因ともなっている。道路交通部門からのGHG排出の内25%が大型車両からの排出(欧州全体のGHG排出量の6%)となっている。
EUは既に、大型車両からのCO2排出を規制するEU大型車両CO2排出基準規則(EU規則 2019/1242)を2019年に制定済み。2019-2020年のCO2排出平均値に対し、2025年までに-15%、2030年までに-30%(会社毎の平均値)となっている。ゼロ/低エミッション車両を登録販売インセンティブや会社間のクレジット取引等、柔軟性メカニズムなども盛り込まれている。
2. 今回の基準規則改定の概要
2023年2月14日、欧州委員会は改定案を発表、欧州議会および閣僚理事会における約一年にわたる審議の末、2024年1月18日に暫定合意に至った。今後、欧州議会および閣僚理事会における正式採択を経て、EU官報にて発行予定。
2030年以降のCO2排出削減目標の引き上げ(下記図参照)に加え、対象車両の拡大(ゴミ収集車やコンクリートミキサー車なども2035年以降適用)。都市部の大気汚染への対応策として都市バスのゼロ・エミッション化(CO2排出5g/km以下)を義務づけた(30年に-90%削減、35年から-100%削減)。なお都市間バスは義務化対象外。
特に揉めたのが、カーボンニュートラル(CN)燃料を使用する内燃機関車両の扱いや炭素補正係数(CCF:Carbon Correction Factor)と呼ばれる概念(燃料の低炭素化を会社毎のCO2規制目標にどう反映させるか)。これについては2027年の中間レビューで再評価することで合意。
この規制が適用されることによって、下記のような様々なベネフィットがあると欧州委員会。
本件を担当した緑の党や社会党欧州議会議員も、今回の暫定合意をポジティブにとらえている。一方で中道右派/保守議員のイェンス・ギスケ(Jens Gieseke)は、水素由来のE-fuel等CN燃料の扱いが盛り込まれなかったことに対して遺憾の意を表明している。
3. 思ったこと。
コーポレートアベレージ/会社平均(新車登録/販売ベース)なので内燃機関はか細く残る形。それがCN燃料やCCFの扱いでどこまで内燃機関の残る余地が広がるかが決まる。
素人目には、排ガス撒き散らすトレーラーやらバスやらがゼロ・低エミッション化していい気もするが、関連業界も大変だなあとはおもうところ。
それ以上に、新車だけゼロエミッション化しても、中古車市場をどうにかしないと脱炭素にばならない。ただそこはおそらく加盟各国の問題(補助金ばらまきながら買い換えを促進する類いの施策)になるだろう。
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