見出し画像

【文学フリマへの道】#1絵本共同創作‘‘画家との第一回ミーティング‘‘

11月20日に開催される文学フリマ東京に、友人の画家と絵本をつくって参加しようと制作を進めています。昨夜は、そのための第一回ミーティングを行いました。その結果、絵本の方向性が決まり、制作が本格的に動き始めた感じです。友人の画家ならではの意見には、たくさんの発見があり、目の前の夜色のカーテンがさあっと開いた思いがしました。今日は、ミーティングの様子と決まったことを紹介します。

絵本にするのは、「鳴かない鈴虫と飛ばない蝶」に決定!

前回公開した【文学フリマへの道】#0絵本制作‘‘画家へのプレゼン‘‘を読んでくれていた友人。
そこで私が目指したいと書いた「絵と文が掛け算で物語を生み出す絵本」というコンセプトに共感してくれました。これは、例えば、「Aちゃんが涙をこぼしました」という場面で必ずしも涙をこぼした女の子を描かなくてもいいのではないかという意味です(もちろん、そういった表現が必要な場合もあります)。

友人が子どもの頃お父さんに読んでもらい、大人になってからも好きな絵本。「子どもの頃はそのまま理解でき、大人になってから違う解釈ができる絵本をつくりたい」という。byスズキコージさん作/Amazonより

せっかく共同創作をするのだから、お互いひとりではできない表現を目指したいのです。絵は言葉とは異なる力を持っています。言葉の説明にとどまる必要はなく、画家の解釈や表現が加わることで、ひとりではできない作品ができるはず。

絵本カフェで見つけて好きになった絵本。説明を越えた大胆なタッチの絵がすごくいい。byきくち ちきさん作「しろとくろ」/Amazonより
絵と文がかけあってひとつの世界を生み出している。子どもだけでなく大人のファンも多い。byきくち ちきさん作「しろとくろ」/Amazonより

まずは、テーマを決めようと話し合いましたが、最初に「鳴かない鈴虫と飛ばない蝶」を読みたいと言ってくれた友人。「鳴かない鈴虫と飛ばない蝶」は、私が書いた童話です。とても短いので、ここに全文を載せますね。

鳴かない鈴虫と飛ばない蝶

鳴かない鈴虫は、飛ばない蝶に、出会った。
うろこ雲が広がる空の下だった。

「なんで鳴けないの?」蝶が聞いた。
「鳴けないんじゃなくて、鳴かないんだ」

「なんで飛べないの?」鈴虫が聞いた。
「飛べないんじゃなくて、飛ばないのよ」

「必要ないからね」とふたりは、声を揃えた。

鳴かない鈴虫は、飛ばない蝶と、友達になった。

空が高くなって、風が吹く日、飛ばない蝶は、鳴かない鈴虫を訪ねた。
天鵞絨 びろうどのようだった蝶の黒い羽は、色褪せていた。

「飛ばない蝶、ぼくはもう鳴けない。はやく逃げな」

痩せ細った鈴虫に、蟻がたかっていた。
飛ばない蝶は、鈴虫を抱えて羽ばたき、風にもみくちゃになりながら、飛んだ。
野ばらに引き裂かれても、柳の枝に叩きつけられても。

思い切り飛んで飛んで、鈴虫を草むらにそっと落とすと静かになった。

「あなたも鳴けるわ」と言い残して。

細かい雨の降る冷たい晩、虫も人間も寝静まったあと、鈴虫は、鳴いた。

思い切り鳴いて鳴いて、リーンと最後に鳴いて、静かになった。

朝になったら霜がふる。静かな静かな夜だった。

友人は、一読するなり、「今、絵が浮かびました」と一言。

「最後の静かな静かな夜だったというシーンは、いろんな色を使って夜を表現するといいのではないか」

この提案には、ぞくっとしました。思ってもいなかった提案。でも、一瞬で良い!と思ったのです。

私は物語を書くとき、絵も浮かぶことが多いのですが、実は、この物語だけ絵が浮かばなかったのです。なので、表紙は、黒字にキャッチコピーをのせただけでした。

「鳴かない鈴虫と飛ばない蝶」の黒いnoteの表紙。「絵本で読んでみたい」というコメントもいただいていた

黒一色である夜をいろんな色を使って表現するとはどういうことだろうか?

友人は、すぐに手を動かしてiPadに線を引き始めました。そして唇からイメージがあふれ出します。

「基本はモノクロ。最初は、太い線じゃなくて、蝶の心情に寄り添うような細い線で引きたい。鈴虫を草むらにそっと落とす場面はうって変わって前半を壊さない程度にふわっとしたタッチで。ラストシーンは、非常に細い線で引っ掻いたように表現するクラッチの手法を使ったらよいのではと思うんです」

友人が描いてくれたスケッチ。左は前半部分に使い細い線、中盤は2.3色を使った柔らかな表現、ラストシーンの色を使った夜のイメージ

墨一色だった私の物語に、イメージが与えられた瞬間でした。「鳴かない鈴虫と飛ばない蝶」を読んで、「小学生以来の感動に足が震えた」と言ってくれた友人。「物語の骨格が完成されているので、絵と調和できるか、腕の見せ所」だと意気込みを語ってくれました。

「鳴かない鈴虫と飛ばない蝶」は、表現を限界まで削っています。その分、さまざまな読み取り方のできる作品に仕上げています。友人の提案を聞いて、爆発的な絵の可能性を感じました。どんな表現がされていくのか、ゾクゾクします。

私は、この作品に関しては、今のところ、足すところ、引くところは、ありません。なので、友人が絵に専念できるよう、スケジュールや印刷所探しなどを担うことに決まりました。

今回のミーティングは、オンラインで行いましたが、ふたりの共通する感想は、やっぱり、会話での打ち合わせはアイデアが出る!というものでした。

ラインでもやりとりはしていましたが、テキストベースだと、いくら相談と言っても、どちらかの意見が先行するわけで、それが相手の意見に影響を及ぼしてしまいます。その点、会話は相手の反応を見ながら、自分の意見も都度更新しながら相談できるので、お互い十分にアイデアを出せます。アイデアは、まとまらず、うやむやで、あいまいなところから、湧き出てくると感じました。

今後は、1、2週間ごとにミーティングを行いながらお互い進捗を確認しつつ進める予定です。

絵の進捗や、絵本の判型・ページ数、自分なりに考察した絵本てそもそも何か?みたいなことも発信したいと考えています。

これから、「鳴かない鈴虫と飛ばない蝶」が、どんな風に絵本になっていくのか、見届けていただけるとうれしいです。

読んでいただき、ありがとうございました。

※過去の「文学フリマへの道」







いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集