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さよならシャボン イラスト待機

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#短編小説

星

なにものでもない、なんでもないぼく

なんでもないぼくはどうしたらなにものになれるのだろう

ただ、誰かにとっての"なにか"になりたい

でも、その為にはなにをすればいいのか、それすら分からない

誰かの近くにいるにはなにをすればいいのだろう

誰かに見てもらうにはどんな姿をすればいいのだろう

誰にも見てもらえないなにかは、なにかですらない、存在そのものが空気に溶けていくようで、それはとても恐ろ

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魅了

魅了

やらなければならないことをやる時、なにかやりたいと発起した時、これをやらなきゃ!これだ!というものを見つけた時、そいつは必ず現れる。

如何にもそれらしいピンク色のオーラを纏ったアイツ。

四枚の薄羽を忙しなく羽ばたかせて、私の前に現れ、耳元で囁くのだ。

「こっちの方が楽しいよ」「そんなことよりこれはいいの?」「先にこっちに手をつけようよ」

勝手気儘に私の耳元、眼前で囁き、チラつかせる。

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不定路線

不定路線

卒業後から着続けているリクルートスーツに袖を通さず、リジットのデニムジャケット、レザーのショートパンツ、キャップ。今日の気分のコーディネート。

髪の毛はセットせずに粗雑にヘアバンドで後ろで束ねる。

目覚めた時に電源を淹れていたケトルがお湯が沸いたことを知らせるとすぐにそれを止め、用意してあったコーヒーカップに注ぐ。

インスタントコーヒーの味だけはいつもと同じだ。

毎朝通勤に使っている路線と

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