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魅了

やらなければならないことをやる時、なにかやりたいと発起した時、これをやらなきゃ!これだ!というものを見つけた時、そいつは必ず現れる。

如何にもそれらしいピンク色のオーラを纏ったアイツ。

四枚の薄羽を忙しなく羽ばたかせて、私の前に現れ、耳元で囁くのだ。

「こっちの方が楽しいよ」「そんなことよりこれはいいの?」「先にこっちに手をつけようよ」

勝手気儘に私の耳元、眼前で囁き、チラつかせる。

意識を傾けたが最後、当初の目的を見失い、アテもない荒野を彷徨うことになる。

荒野にいることに気が付いた時にはもう遅い、いつの間にかピンクのアイツは居なくなって、自分一人残され、罪悪感、虚無感に苛まれる。

そんなアイツの攻略法は実に簡単だ。

強い意志を持つこと。

しかし、強い意志を持つことはあらゆるものの根幹にあって、最も重要なクセに、最も得るのが難しい。

基礎の基礎を得ることが最難関とは、人間の意思がいかに薄弱なのか思い知らされる。

こんな思考に至るまでも、ピンクのアイツは何度も囁いてきた。

「もうやめようよ」「遊ぼうよ」「帰ろうよ」

幾つもの誘惑を振り払い、前を進むことが出来たらば、既に物語は始まっているのだ。

しかし、ゆめ忘れることなかれ、ピンクのアイツはいつでも、足元を狙っている。

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