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⑬『投資詐欺』に引っかかり、約500万借金した四十路の末路@現在進行形-交番・警察署に駆けこむ・Ⅵ-
閑話休題。
ほんとうにこれを書いている場合ではないのではないかと思うことが、ほんとうに増えてきた。そもそも誰に読まれているか判らないもので、時間を割くのもどうかと考えたりするいっぽう、起こった事象のみならず、そのときの気持ちなり、思いなりを書き綴れたら後世の役に立てるのではないかと考えたのは、世間知らずの思いあがりかもしれない。
世間が欲しいのは、転落していく笑いのみで、悲壮な叫びは求めらていないのではないかと考えが暗くなっていく。
しかし、それでも生きている限りは、このことの顛末は記そう。
目指せ犯人検挙、全額回収。
……まあ、どちらも不可能だと思い知るのが、今回のお話。
さて、本題。
目の前の刑事二人は丹念にぼくが書いた資料に目を通してくれた。
またこの書類には、架空の人物だろうが、容疑者に関する情報も書いているので、少しばかりは役に立つのではないかなと期待はこめていたのだが、……何度でもいう、それは世間知らずの思い上がりだ。
警察官に見せられたのは、何枚かの写真だった。
まあ、誰がどう見てもイケメンの部類に入る種類である。ぼくには一生、縁のないお方。友人としても、伴侶としても。
ぼくは見たことないので、首を振る。
(このあたりは事の経緯を詳しくまだ記していないので、端的に書いておくと、ぼくは直接会ったことがない人間に500万円だまし取られているんですね。バカ、ここに極まれり)
左に座っていた刑事が、スマホを片手に、画面を次々変えて、この人に見覚えはないか、と見せてくる。どれも同じ人間に見えるといえば見えるし、見えないといえば見えない。おそらく韓国系の方なのかなぁとは類推するが、ヨーロッパでは中国人、日本人、韓国人の区別がつかないのと同じような感覚で、ぼくは写真を見せられるたびに首を振った。
「最近、似た事案で多いのは、ネットの画像を拾ってきて、それを本人と偽り、相手をだますケースです。これらの写真はすべて、それらに使われたものです」
ぼくの場合は該当がなかった。
つまるところ、これって新種??
「この写真はないかなぁ……」
二人の刑事は少し首を傾げる。
ぼくが作成した写真の中の人間には心当たりはないようだ。
「声を聞いたとか、話したとか、ほんとうにそういうのはなかったのですか?」
そういうあたりまえのことを訊かれます。
そりゃあ、そうだよ。500万もいかれてしまうのだから。
「ほんの少し、ビデオ通話ならしたことがあります。あと声の会話も。日本語はほとんどできない感じで、緊張するみたいな感じなことを言って、電話で話すのは嫌がっていました」
「その人物と写真の人物は同一人物ですか?」
この問いかけは、やはり来たなぁとかんたんすらした。
「断言はできません。ただ韓国人であることは間違いないとは思います。英語のほかに使用していたのが韓国語でしたから」
そうなのだ。
まさかの「断言できな」いのだ。ただ間違いなく、相手の母語は韓国語だ。あるていど外国語の区別はつくから、これは根拠はないが確信している。中国なまりの英語などでもなかった。何かを韓国語で呟いてはいた。
そんな奴に500万円取られるのは、ただただ脳内がお花畑でいかれていたからだろう。
なぜ断言できないかというと、以下の二点による。
①ホテルの照明の加減と、電波の事情か、鮮明な映像ではなかったこと。
②髪の毛を染めていたこと。
①については、もう詐欺と確定したあたりから、もう人間不信が加速していて、単純に信用できなくなったという心理状態にあることがひとつの要因だ。この読者には、もしかしたら「犯人側」の人間がいることだって可能性はゼロではない。
②については、印象的だったのでよく覚えていた。むしろ通話時の画像が不鮮明というよりは、染めていた髪の毛に目がいってしまい、ほかの記憶が曖昧模糊としているのだ。見せてもらっていた写真は、過去に訪れた観光地で撮影した写真とのことだったので、疑いを持たなかった。(←バカ)
しかし、彼の言動の中で日付と行動に関しては、あるていどの信憑性はあるのではないかと打診はしてみた。もはや何を信じていいのか判らないが、彼は11月は主に福岡におり、12月某日には東京でラーメンを食し、12月某日にフランスに出国している。
フランスの空港の写真はド・ゴールかオルリーかそれ以外か知る由がないが、福岡で訪れたお店、東京のお店については実在し、かつ福岡のお店のうちのひとつは料理の写真を送ってくれていたので、この日に食している可能性が高いと、ぼくは踏んだのだが……。
以下、次回に。
今日もいまのところはどうにか生きている。
明日も生きてますように。
もう死にそう。