クリエイターの母親業 #01 “保活”は出産前から始まっていた
もはや子供を授かる前から始まっていたと言っても過言ではないくらい。
出産前にやっておいてよかったこと、やらなくてよかったこと。
当事者にならないと見えないことがたくさんありました。
子供を授かるまで分からなかった“保活”の実態。
個人的に印象に残った体験を書き留めておこうと思います。
1.産休育休を取得するには条件がある
わたしはデザイナーという職業で
アルバイト→フリーランス(業務委託)→正社員
と雇用形態を渡り歩いたのですが、雇用契約上、業務委託のままでは産休・育休を取得できませんでした。
まだフリーランスの状態だったらこの時点で心折れていたと思います。
たまたま妊娠発覚の1年ほど前、メインでお世話になっていた会社に正社員として雇用していただく機会がありました。そのお陰で会社の規定にある「入社して1年以上」という条件をクリアし、産休育休を取得できました。
会社にもよりますが、育児でお休みを頂いている期間にもお給料に準じた給付金をいただけるという環境は、生活面でも精神面でも大きな支えになるはずです。(なりました)
育児休業給付金は職場で加入している雇用保険から支払われます。
【支給対象者】
・育休開始する日より2年以内に12ヶ月以上、雇用保険に加入している
・育休期間中の各1ヶ月ごとに、休業開始前の1ヶ月当たりの賃金の80%以上の賃金が支払われていない
・育休期間中、働いた日数が1ヶ月に10日(10日を超える場合は80時間)以下
・実子養子、男女は問わない
参照:厚生労働省 「平成29年1月施行対応 育児・介護休業等に関する規則の規定例」
ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」
2.育休中にもらえる給付金の額は給料で変わる
産休期間には健康保険から「出産手当金」が、育休期間には雇用保険から「育児休業給付金」が支払われます。
「育児休業給付金」の金額については
休業開始時賃金日額×給付日数×給付割合(給付割合:180日以内67%、181日以上50%)
と定められています。
休業前の給料が月30万円だった場合、ざっくり計算すると
育休の最初の半年間は月20万円、半年以降は月15万円もらえる仕組みです。
休業前の給料が高いほど、育休中にもらえる給付金も高くなります(※上限あります)。
育休期間中「給付金じゃ心許ないし、スキマ時間を使って在宅で稼ごうかな」と考える方もいるかもしれませんが、育休前の収入の80%を超えてしまうと給付金の支給対象から外れてしまいますので注意が必要です。
「じゃあ、事前にキャリアを積んである程度昇給しておけば給付金も充分にもらえるし安心して育休を過ごせるね!」
そう考えていた時期がわたしにもありました。
しかし、この「バリバリ働いていた時の給料」が後に思わぬところで影響を及ぼします。
3.産前に稼ぎすぎると保活で不利?になる
産後、子供を認可保育園に入園させるためには、家庭状況をポイント化した「点数制度」によって充分な点数を獲得する必要があります。これは両親フルタイム共働きで基本的に満点となり、さらに一人親世帯や単身赴任、祖父母の介護など、保育が難しい状況で加点される制度です。
認可保育園の倍率は待機児童問題があるように(特に都市部で)ものすごい競争率です。しかも応募する家庭は基本的に満点がとれているので、満点が足切りボーダーラインとなるのはザラです。満点同立の家庭が多く並ぶなかで各自治体がそれぞれ持っている優先事項に則り選考されています。
優先事項の例として、主に
・応募する市区に長く居住している
・同じ市区に祖父母や親戚が住んでいない
などが挙げられます。それに加え、
世帯年収が高いと落とされやすいとも言われています。
自治体が設ける基準としてはっきり明記されてはいないですが、同点で並んだ場合、高所得の家庭ほど落選したという報告を多く目にします。(完全に肌感ですが、都内激戦区だと世帯収入1000万を超えるあたりから加点無しだとかなり厳しそうでした)
保育園はあくまで福祉施設であり教育機関ではない…という事情から、そのような判断が下されるようです。これは「お金に余裕があるなら認可外の保育施設を利用して欲しい」とも受け取れます。
解らなくもないですが、これからの人生をより豊かに、より安心して過ごすために一生懸命働いてきたのであって、復帰の足かせになってしまうことなど誰も望んでいません。
認可外・認証保育園の場合、地域によっては月に10万円以上の保育料がかかります。たとえ世帯年収1000万円あったとしても安くはない出費です。
進んで認可外を選択している家庭もありますが、認可に落ちたし仕事にも復帰しないとつらいので仕方なく…隠れ待機児童として認可外に通わせる家庭も少なくありません。だから認可外でも相当保育料が高額な園でない限り枠は空いていません。
また、認可外に預けていると認可での保活で加点されるため「次年度認可に内定するために認可外を利用する」人も多く、早い人だと出産前から認可外保育園に申し込んで備えます。
妊娠中のわたしは当時「仕事をどこまでやり切って引き継ぎするか」「出産をどう乗り越えるか」で頭がいっぱいだったので、すでに周りで保活が始まっていたことに気付いてすらいませんでした。厳しい実態を情報としては知っていても、分かっていなかったのです。
保育園の申し込みポスターを見かけるようになってから詳細を調べて驚愕。倍率やボーダーは自治体によって情報を開示していない場合もあるため、直接問い合わせる方が良いです。
そんなに保育園に入れたいなら地方に行けば良い、という意見も頻繁に見かけますが、残念ながら待機児童は東京だけの問題ではありません。
参考:2018年4月1日時点の最新の全国の自治体別待機児童数を厚生労働省が発表
4.結果的にやらなくてよかった時短勤務
これも自治体によりますが、わたしの住む地域では産休前の3ヶ月間の勤務記録が就労の常態として点数に反映されました。もし「体調が思わしくないし無理もしない方が良いから時短に変更しよう」と判断していたら、充分な点数が取れなくなるところでした。フレックスタイム制と有給や時間休暇を活用して最後まで乗り切ったことが結果的に功を奏しましたが、良かれと思って時短に変更する人もいると思います。フルタイムで満点を取らないと保活のスタートラインに立てないことを知る機会もありませんでした。
無理をしないシフトを組ませてくれて契約上フルタイムのまま勤務記録を出してくれる融通の利く会社もあると思うので、事前に相談してみるのが吉です。
5.生き方の多様化に追いついていない
女性の社会進出や経済的自立を推し進めているにも関わらず、人生のひとつの転換期に今まで培ってきたものを犠牲にしろ、と強いるのは矛盾しています。男性の育休取得など少しずつ家庭を支える役割分担は変化していますが、未だに「母親になるなら女性はキャリアを諦めろ」という考えが根強く、そうせざるを得ない人々で溢れているのが実状です。
ただ、行政も住民の声を反映させようと取り組んでいるので、保活の優先事項や加点項目などに毎年少しずつ変更が加えられています。自分の住んでいる自治体のホームページなどは常にチェックしておくと損はないと思います。
人生のフェーズによって物事の優先度が変化することはあっても、全てを諦める必要はないはずです。ロールモデルが増え「自分はこの時期にこういう生き方をしてみようかな」と早い段階で選択肢を想定することができる世の中になれば、今よりもう少し生きやすい社会になるのかな。そんなことを考えさせられた自身の産休〜育休期間の実体験でした。
我が家は第3希望の認可保育園に内定をいただくことが出来ましたが、来年度の1歳クラスだった場合とうてい太刀打ち出来なかったと思いますし、今回たまたま運が良かったのだと思っています。
クリエイティブ職(特に作家)だとフリーランスは1つの生き方として身近に存在しますが、フルタイム会社員と同等の自営業を証明するにはハードルが高く、今後結婚・子育てを考えられている女性にはフリーランス1本の働き方を持続することは今の社会制度だと正直かなり厳しいという印象を持ちました。
これからお子さんを授かる方々の何かの参考になれば幸いです。
次回は、自営業でもフルタイム同等の証明をし、激戦倍率の認可保育園の内定を得た事例を紹介したいと思います。
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