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【ハートの結晶】日本式双晶とは

ひとこと結晶といってしまうと、雪の結晶を思い浮かべる人が多いと思いますが、結晶は想像以上にいろいろな形で生まれてきます。

今回は、特徴的な形を持つ結晶の中でも特にわかりやすいハート型の結晶を持つ水晶の話をしたいと思います。

ハート型の結晶(引用元

紹介するハート形の水晶は日本式双晶と呼ばれ、”日本”の名が冠するようにとても日本に関わりの深い結晶です。

双晶とは

まずは、双子の結晶とも表現できる双晶について紹介しましょう。

一般的に結晶とは原子や分子が規則正しく並んだ物質のことを指します。その中で双晶は2つ以上の結晶が接して1つの結晶となっています。

双晶の例(wikipediaより引用)

一方、数千以上の単結晶が集まってできているものを多結晶というので、双晶はせいぜい数えられる程度の結晶がくっついているものとイメージすれば大丈夫です。(※厳密にはもっと細かい話があるが)

ここからはわかりやすく比較的単純なタイプの双晶についてみていきましょう。

双晶の結晶学

双晶は2つの結晶が向きを変えて接触し1つの結晶になっているわけですが、当然接触しているところでは原子は規則正しく並ぶことができません。

例えば、今回メインテーマになる日本式双晶で言えば2つの結晶が約85°傾いてくっついていますが、このくっついているところ(界面)では原子の並び方が変わってしまいます。

一方、結晶(原子の並び方)には面白い特徴があります。

それは一致サイト格子(CSL)という考え方です。
規則正しく並んだ原子が向きを変えてぶつかると、新しく特徴的な原子の並び方が現れます。これをCSLと呼びます。

CSLの例(ちょうどぶつかったところで新しい格子ができる)

これは、多結晶中などにもみられる構造で、現代でも興味深い性質をもつことから研究の対象とされています。

双晶形成時に、このCSLができるには原子がきれいに並ぶよりも余分にエネルギーが必要になります。

そのため、双晶は結晶ができやすい環境下で生まれるといわれています。(専門用語では結晶化の駆動力が高い状態、高過飽和状態と言ったりします。)

逆に、結晶が生まれにくい環境にしてやると双晶にはなりません。

ハートの結晶なんて何やらかわいらしい話なのに、よくわかんない話が続くな、と思われた方もいるかもしれませんね。

とにかく、日本式双晶をはじめとする自然鉱物の双晶は地球環境の特定の条件の中で生まれるんだよ、ということがわかってもらえればOKです。

ここからはようやく、どうしてハート型になるのかについて紹介していきます。

なぜハート形になるのか

水晶の双晶の形はいくつか特徴的なものがありますが、ここでは特に有名な3種類について紹介していきます。

水晶の双晶には、ハート形、V字型、軍配型があります。ハート形とV字型は比較的よく似ているのですが、軍配型はちょっと違った形をしていますよね。

これらの結晶の研究が始まった当初、多くの研究者はハート形やV字型の結晶が成長して最終的に軍配型になると考えていました。

しかし、X線の技術により、双晶の中身を観察することができるようになると、全く異なる結果が得られました。

このハート形やV字型の双晶は、もともと軍配型であったようです。というのもX線で透かして見ると、ハート形やV字型のコアに軍配型の存在が認められました。

イメージとしてはこんな感じで成長する

はじめは軍配型として成長した双晶はどこかのタイミングで成長のスピードが変わり、ハート形になり、さらに顕著に進むとV型になるというのが、現在の定説になります。

このように、興味がない人から見るとなんの変哲もないい石ころも、とても真剣に研究されており、その中で様々な仮説が生まれ、時に覆され、科学は進歩していくんですね。

最後に

今回は、ハート形の結晶である日本式双晶について紹介しました。

自然界には私たちの知らないところでとても面白いことが起こっているのがほんの少しでも感じられたのではないでしょうか。

日本式双晶を普段見かける人は少ないかもしれませんが、お土産屋の石売り場なんかでハート形の結晶を見かけたら、地球の力で自然に生まれた貴重な石なんだなと思ってください。(加工されてハートになっているのは違いますよ)

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