木材を使った太陽光で動く加湿器
森林浴といえば、心も体もリラックスできるある種セラピーのようにも使われていますよね
森林浴の科学的なお話はさておき、今回はこの森(つまり木)が新鮮な空気を作り出す作用を使って、人間の力で蒸気発生装置を作ってしまうという研究です。
ナノテク×木材=最強の蒸気発生装置
今回紹介する研究では、木材の表面にいくつか処理を施すことによって、太陽光のみで水を超強力に蒸気に変える材料を作りました。
それでは未来の加湿器に使われるかもしれない新材料を詳しく見ていきましょう。
参考文献より引用
最初にざっくりと紹介すると以下の3つの層に分かれています。
表面層:太陽光を集める層
中間層:熱を伝えないための断熱層
基板 :水を吸収する層
水を強力に吸収する基板
それでは重要な基板から見ていきましょう
基板になるのはバクテリアルセルロースという木材が微生物によって変化したものを使います。
私も初めて聞きましたが、このバクテリアルセルロース自体が注目の材料の1つであるそうです。この素材は非常に細い繊維がネットワーク上に張り巡らされた構造を持っています。
この微細なネットワーク構造は水を効率よく吸収する役割を果たします。つまり一番下の層になるバクテリアルセルロースは水をグングン吸収するポンプのような役割を果たします。
水を吸収する毛管力についてはこちら↓
そして、水は2番目の中間層に到達します。
熱を通さない中間層
2番目の層はバクテリアルセルロースと泡状のガラスが混ざった構造になっています。泡状のガラスというとちょっと想像が難しいですが、この構造も小さな穴がたくさん開いており、水を吸収するのに適しているそうです。
それではどうして泡状のガラスの層を用意するのでしょうか?
実は、このガラスの中間層、熱を通さないために用意されているのです。
最初に簡単に示した通り、表面は熱を集める層です。そして、熱はなるべく表面にとどめておきたい!なぜなら、内部に熱がこもっても水は蒸発できないからです。
そのため表面だけ熱くして内部には熱を届けず、一方で効率的に水を蒸発する表面に届けるために挟まれた中間層ということになります。
参考文献より引用(左は中間層がない、右は中間層がある)
中間層があることによって熱が表面のみにこもっている様子がわかりますね。
熱を集める表面層
そして最後に、カーボンナノチューブの粉を表面にくっつけて、太陽光を効率的に熱に変える表面を作ります。
先ほど書いたように、表面に集められた熱は中間のガラス層によって内部には届かず、表面だけが熱くなります。
そしてバクテリアルセルロース基板と泡状ガラスの中間層の小さな穴を通して水はどんどん吸収されていきます。
表面に届いた水は太陽光により熱せられた表面で蒸発していきます。
このような仕組みで、勝手に水を吸収して、太陽光の熱で蒸発させる新木材が完成したということになります。
最後に
最近SDGsだエコだと騒がれていますが、この新木材は電気を使わず自然エネルギーだけで蒸気を作る優れものです。
自分はおしゃれな人間で詳しくはないですが、無印とか行くとアロマディフューザーが売ってたりしますよね。そんなおしゃれグッズももしかしたら電源に使わずにおいておくだけで良くなるかもしれませんね。
参考文献
Sustainable Wood-Based Hierarchical Solar Steam Generator: A Biomimetic Design with Reduced Vaporization Enthalpy of Water
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