ここがすごいよ超格子:3次元超格子のアプリケーション
前回、超格子について簡単に紹介していきましたが、今回は現在研究が進められている3次元超格子の期待されているアプリケーションについて紹介していきます。
次の10~20年で一気に花開く分野かなと思っているので、是非ちらっと読んでもらえると嬉しいです。
それでは見ていきましょう。
オプトエレクトロニクス
量子ドット太陽電池
現在、シリコン太陽電池が限界を迎えているとかどうだとかよく聞きますが、全く新しいタイプの太陽電池が必要とされています。その中でもペロブスカイト型太陽電池と並んで、3次元超格子を使った量子ドット太陽電池も作製されています。
(太陽)光から電気を取り出すためにはバンドギャップを理解する必要があります。難しい話は置いておいて、簡単に言ってしまえば、とある材料(構造)を使うと、特定の色の光しか吸収することができず、残りは捨ててしまうことになります。
これはもったいないということで、3次元超格子構造にした半導体を使います。
半導体のナノ粒子:量子ドットについてはこちら↓
この量子ドットをたくさん並べると、はじめは紫~青の光しか吸収できなかったものが、他の色の光も吸収して電気に変えることができるようになるそうです。
※科学的には、量子ドットの持つバンド構造が中間バンドを形成し、波長の異なる光のバンド間遷移に対応するらしい
オプティクス(光学)
メタマテリアル
透明マントと言ったら、ワクワクしませんか?
まさに、透明マントすらも可能にしかねないメタマテリアルの1つに3次元超格子が挙げられます。
透明マントを作るためには、人工的に物質の誘電率と透磁率という性質を制御できなければなりません。細かい説明は置いておいて、この2つの性質を自由に操るのはそんなに簡単ではありません。
しかし金属ナノ粒子を使った3次元超格子を使うと誘電率をかなり幅広く制御できることが報告されています。
実はこれだけでも、かなりすごい技術なんですが、ゆくゆくは透磁率の制御も可能になり、透明マントも実現するかもしれませんね。
メタマテリアルに関しての説明はこちら↓
熱マネジメント
以前、フォノンエンジニアリング・フォノニック結晶の回で熱を伝えるフォノン(格子振動)を操ると、効率的に熱から電気を作ったりすることができるというお話をしました。
実は3次元超格子はフォノニック結晶にもなることができます。すでにいくつも報告がされており、電気は良く通すのに熱だけ通さないような材料が開発されています。
そんなことして何ができるのかと思われるでしょう。電気は通すのに熱は通しにくい物質は、熱から電気を作る熱電材料などに期待されているんです。将来的には排熱から電気を作ることがもっと身近になるかもしれません。
完璧な熱制御には3次元超格子構造だけでは実現しませんが、いくつかの技術を組み合わせることで、夢の熱制御が可能になるでしょう。
触媒化学
ナノ粒子はその体積に対して非常に大きな表面積を持ちます。
触媒反応は粒子の表面で起こるので、表面がたくさん出ているナノ粒子は有利になります。
このナノ粒子を並べて3次元超格子にすると触媒性能が向上するようです。
これに関してはきれいに並べる必要があるのか?という疑問がありますが、とりあえず並べないよりは並べた方が良いらしく、なおかつ安定性も向上するという報告があります。
最後に
他にもいろいろと使い道が報告されていますが、今回紹介したものは10年以内に産業利用され始めると思います。
ちなみに、私はバイオ系のものづくりをやってるのですが、この分野の世界的権威の先生たちは、この3次元超格子を時間とともに動かして、4次元物質にしてやろうといっています。
まあ正確な意味で4次元超格子ではないと思いますが、世界のすごい研究者は考えることがぶっ飛んでいますね。
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