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DNAを使った超伝導ジャングルジム

みなさんは超伝導という言葉を聞いたことがありますか?

あんまり有名な言葉ではないと思いますが、リニアモーターカーを宙に浮かせる技術としても有名な未来において重要な技術の一つです。

ただ超伝導と聞くと、金属や半導体と同じように何か固い物質って感じがすると思います。見た目も石見たいですもんね。

ただ科学技術はもっと多様に進んでいます。今回紹介する技術は超伝導とはまるで関係がないようなDNAを使った新たな超伝導物質の作製技術です。

以前、DNAが束になるバンドル化について紹介しましたが、どうにも何に使えるのかよくわからなかったかもしれません。そんなDNAが束になる現象を使いながらもさらに面白い構造を作り上げる研究を紹介したいと思います。

DNAを使ったナノ構造体

そもそもなぜDNAを使うのかというところが疑問になりますよね。実はそこには複雑な理由はありません。

DNAを使うととても小さなナノ構造を自由に設計して作製することができるからなんです。小さなものを作れるだけ!?ってなりそうですが、そうなんです。

まず初めにDNAを適切に設計してやる必要があります。驚く方も多いかもしれませんが、今の時代DNAは自由に設計して作製することができます。遺伝子ほど長くはないものの、自分たちで遺伝子のような情報を決めている感覚ですね。

そうして作ったDNAを使うと、私たちが思ったように形を作ります。このとき、DNAは束になり強い骨格が出来上がります。

参考文献より引用(灰色の骨組みがDNAでできている)

この研究ではDNAを使ってジャングルジムのようなしっかりした骨組みを作ります。とはいっても、当然目で見えるような代物ではないですけどね。

この状態ではただのDNAよりはしっかりしているものの、金属やセラミックスに比べれば、まだまだやわらかいため簡単に使うことはできません。加えて、DNAは溶液中で安定な物質なので、残念ながら大気中ではぐちゃぐちゃになってしまうんです。

そこで、溶液中でDNAの表面をシリカでコーティングします。やら若いフニャフニャなジャングルジムを固くしっかりした骨組みに変化させてやるんですね。

こうして、大気中でも利用できるナノジャングルジムが出来上がりました。

どうやって超伝導にするのか

ここまではあくまでDNAを使ったモノづくりで、超伝導の要素はありませんでしたよね。

それではここからDNAナノ材料を超伝導物質に変えていきましょう。

DNAからシリカになったナノジャングルジムにニオブという物質を吹きかけます。このニオブが超伝導を示す物質のようです。そして、これが結構難しいらしいです。

DNAの骨組みをシリカ→ニオブの順にコーティング(参考文献より引用)

簡単そうに聞こえますが、ナノの世界です。ニオブをたくさん吹きかけてしまうとナノサイズの隙間が埋まってしまうようです。

確かに、ウイルスよりも小さな隙間を持つジャングルジムですからね。そう簡単にはいきません。

研究グループではどの条件でニオブを吹きかければジャングルジムの骨組みだけを覆うようになるか調査し、適切な量を明らかにしました。その結果、超伝導を示すニオブでできたジャングルジムを作り上げることができました。

参考文献より引用


超伝導ジャングルジムの何がすごいのか?

ニオブをコーティングしたジャングルジムは、実際に超伝導としての特徴を示しました。

そんなこと言っても、普通の超伝導があるんだから、わざわざDNAを使う意味ないじゃん!ってなりますよね。

もう少しよく見てみるとこのジャングルジムの各ブロックは細いつなぎ目によって結合している様子がわかります。この小さなつなぎ目部分がジョセフソン接合と呼ばれる状態のようです。

黄色い部分がジョセフソン接合

ここからは超伝導の本格的な話になってしまい、私も正確に説明することができないのでざっくりとした紹介になりますが、このジョセフソン接合というのが超伝導現象を扱う上でとても重要な役割を果たします。

すごいスピードで計算する高速電子計算機ではこのジョセフソン接合を利用して高速化を図るという話があり、ジョセフソン接合を狙って作るのがとても重要だそうです。しかし、この接合のサイズはせいぜい1,2ナノメートルという極小サイズ。そんな簡単には作れません。

今回紹介しているDNAを使った研究では狙った位置にジョセフソン接合を作り上げ超伝導としての特性を持った材料を実現することができました。

この超伝導ジャングルジムが直接すごい性能を持つコンピューターになるわけではありませんが、DNAを使うことでそのようなコンピューターに使われる素子を簡単にかつ制御して作製することができる可能性を見出したという研究なんですね。

最後に

私は超電導の専門ではないので、今回は”DNAのものづくり”にフォーカスして紹介しました。

ちなみにこの研究のボス(PI)は私の大師匠に当たります。直接話したことはありませんが、とにかくすごい研究者だな~といつも論文を読みながら感心しています。やっぱり独創的な研究をできる人には憧れますよね。

参考文献
DNA-assembled superconducting 3D nanoscale architectures
こちらから無料で読めます↓
https://www.nature.com/articles/s41467-020-19439-9

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