【1分で読めるミニ記事】特殊なコーティングで音を遮断するセラミックス
騒音に悩まされた経験がある方も多いかと思います。
今回はそんな騒音課題を解決するかもしれないセラミックスの紹介です。
吸音素材
今回注目されているのは小さな穴がたくさん開いた多孔質セラミックス(ZnO)を用いた吸音素材です。
研究グループは多孔質セラミックスの吸音特性を上げるために、酸化グラフェンとSBRという高分子の混合物を表面にコーティングしました。
このコーティングにより音の流れを阻害することができるようです。
今回紹介する論文の肝はこんなところですが、もう少し詳しく見てきましょう。
酸化グラフェンと高分子によるコーティング
そもそもどうして、コーティングをする必要があるのでしょうか、これはもともと小さな穴の開いた多孔質セラミックスにさらに微細な構造を付与するためなんです。
それではどうしてこの小さな構造が必要とされるのか?それには音について少し知っておかなければなりません。
音が空気の振動であるというのは中学校の頃に習いますが、音は空気だけでなく弾性波という固体を伝わる振動でも生じます。つまり、材料に侵入した音は、材料内部を振動の形で伝わって私たちのもとに届きます。
この振動を何らかの方法で阻害してやれば、音は遮断されて私たちには聞こえなくなるわけですね。
その方法というのが先ほど挙げた微細な構造をたくさん作るということにつながるんです。振動はセラミックスやコーティングによって作られた微細な構造の中を通る際に、特にその境界部分でストップされます。
そこで注目されたのが酸化グラフェンとSBRを組み合わせです。この微細なセラミックス構造の中に酸化グラフェンとSBRのネットワーク構造を作り、多彩な境界構造をたくさん生み出すこと、振動を阻害させて吸音することができるようになります。
また酸化グラフェンとSBRは分子レベルでうまく結合しており、その割合は酸化グラフェン:SBR=1:10の時が最も効果的に吸音することができるようです。
一方で、酸化グラフェンを使わずにSBR高分子だけでコーティングしようとするとセラミックスが持つ小さな穴をSBRの粒がふさいでしまい、せっかくセラミックスがもつ多孔質構造が台無しになってしまいます。このような点からからも酸化グラフェンというのは重要なファクターだと言えるでしょう。
実際に吸音率は200〜800Hzの周波数領域で30.4%も向上したようです。
最後に
以前はレーダーから感知されなくなる特殊なステルスセラミックスの研究を紹介しましたが、今回は音の吸収する特殊なセラミックスのお話でした。
どちらにも共通するナノスケールでの複合化・セラミックス・酸化グラフェンといったところがこれらの振動を制御するキーになるような気がしますね。
この分野は私もまだまだ分からないところがあるのでもっと勉強しなければなりませんが、電磁波や音波を制御する材料研究というのは今後も広がっていくと考えられます。
今後ももっと面白い研究が出てくることを期待できますね。
参考文献
Enhanced Sound Absorption Properties of Ceramics with Graphene Oxide Composites