【第4回コラーゲンの世界】身近なコラーゲン(皮膚・筋肉編)
皮膚や骨、筋肉といった誰もが知っている私たちの体の部位もコラーゲンでできています。
これまでミクロな世界のコラーゲンについて、そしていろんな種類のコラーゲンの特徴について紹介してきましたが、今回はもう少し身近な私たちの体の中のコラーゲンについて見ていきたいと思います。
皮膚
美肌や美容といった文脈でも語られるので皮膚とコラーゲンに関係があることを知っている方は多いでしょう。
皮膚は表皮、基底膜、真皮の三層構造になっています。コラーゲンが存在するのは皮膚表面から少し内側にある基底膜と、真皮です。
まず、基底膜はIV型コラーゲンでできています。まさにコラーゲン繊維で編んだ布のような組織で表皮と真皮を隔てる役割を持ちます。
面白いことに、基底膜はIV型コラーゲンですが、基底膜と表皮の間にはXVII型コラーゲンが、真皮と基底膜の間はVII型コラーゲンが接着しており、それぞれ異なるコラーゲンが仕事をしているようです。
また基底膜を境に血管がなくなることから、それより表面に近い表皮のみ切っても血が出ないんですね。
基底膜よりも内側に存在する真皮はI型コラーゲンでできています。コラーゲン繊維が集まって高密なネットワークを形成することで、弾力のある生地のようになっています。人類が糸を編んで布を作る前から私たちの体の中にはそのような構造があったと考えると面白いですよね。
また真皮には潤いを与えるヒアルロン酸が含まれていたり、毛細血管が通っていたりとかなり複雑な構造をしています。これまであまり深く考えたことがありませんでしたが、臓器という感じがします。
筋肉・腱・靭帯
私たちの筋肉はミオシンとアクチンというまるで機械のようなタンパク質によってできていますが、実はコラーゲンの存在も欠かせません。
筋繊維は複雑な階層構造を持ちながら筋膜と呼ばれる膜によって区切られています。この筋膜を作るのがコラーゲンです。
I型コラーゲンが主成分を占めるようですが、III型やV型のコラーゲンも含まれています。ステーキなどの肉料理でギザギザハンマーを使ってよく叩ているのはコラーゲンでできた筋膜を破壊し、噛みやすくするためなんですね。
また筋肉だけでなく、筋肉と骨をつなぐ腱や骨と骨をつなぐ靭帯もI型コラーゲンでできています。しかも、この領域のコラーゲンはとても純度が高く、これまで動物実験から研究用にも使われてきたそうです。
さらにスポーツ選手などは負傷した腱や靭帯を健常な箇所から切り取って移植するトミー・ジョン手術を行うそうです。これも非常に効果が高いと言われています。
目
皮膚や筋肉という例を見ると、コラーゲンの印象が出来上がってきたかと思いますが、実は目もコラーゲンの一種でできています。これは私もちょっと驚きでした。
というか、今まで目が何でできてるかなんて考えたこともありませんでしたからね。
目の黒目の部分に当たる角膜に使われるコラーゲンは皮膚と同じI型です。全然様子が違うじゃないか!って思いますよね。
どうやらI型コラーゲンはきれいに整列して並びやすく(配向)、その性質から透明なコラーゲンを作ることができるようです。この透明なコラーゲンは角膜として使われ、光を透過することができるという特徴があります。
そしてこの角膜のコラーゲンはレンズとしての役割を持つようです。そのため、損傷などを受けてコラーゲンの配列が不規則になると光が乱反射してしまいものが見えなくなったりします。
最後に
今回は身近なコラーゲンとして皮膚や筋肉、目などについて紹介してきました。コラーゲンというと美肌みたいな文脈で語られることが多いため、意外なところにコラーゲンが使われていて驚いたのではないでしょうか。
そして私たちの体の中ではまだまだコラーゲンが使われています。次回は身近なコラーゲンの続きとして軟骨と骨について紹介したいと思います。
参考文献
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