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オオバコが増えれば石油が採れる!?

「風が吹けば桶屋が儲かる」ばりの謎展開ですが、こんな不思議な研究があるんです。

もう少し正確に表現するなら、オオバコ科の植物であるサイリウムハスクを使うことで、石油の掘削が効率的になるという研究です。

サイリウムハスクとはあまり聞き馴染みはないですが、外国では健康食品のような感じで売られている食べれる植物だそうです。(本当に体に良いのかはわかりません)

でも、そんな植物を使ってどうやって石油を採るんだ? と思いますよね。

かなりぶっ飛んだ研究ですが、1つずつ見ていきましょう。

サイリウムハスクをどうやって使う?

石油などの掘削というとまずはドリルを思い浮かべると思います。

しかし、植物を使ってドリルを作るなんて研究ではありません。このサイリウムハスクは掘削時に使用する掘削液と呼ばれる液体に混ぜて使う材料として重宝します。掘削液とはドロッとした液体で、ドリルで穴を掘るときに使うようです。

このドロッとした掘削液があることで、掘削時にでた切り屑などを上手に外に逃がすことができるんですね。

一般的に、掘削液には主にベントナイトと呼ばれる粘土を利用します。なにそれ?ってなる方は以下のリンクをご覧ください。

こう見ると、掘削液はいわゆる泥水って感じですが、この粘土を混ぜた泥水の粘性や流動性といったものが掘削する際に重要になるそうです。

そして、この掘削液の性能を上げて、安定化させるのがサイリウムハスクの役割です。

参考文献より引用

実際、これまでキサンタンガムやセルロース誘導体、でんぷん誘導体といった植物由来の高分子が掘削液におけるベントナイト(粘土)の安定化のために使われたり、研究されたりしています。しかし、どれも温度が高くなり140℃を超えると、有機物なので分解が始まり、その性能が落ちてしまうことが知られていました。

そこで研究グループは、高温にも強いサイリウムハスクに目を付けたというわけです。

サイリウムハスクの効果

実際にサイリウムハスクを使ってみると高温下においても、他の有機物を使うよりも高い性能の掘削液を作ることができたようです。これはお見事読み通りですね。

ここで、掘削液の性能を表す指標について紹介しましょう。それが流体損失(Fluid Loss)と呼ばれる指標です。

この流体損失とは液体を掘削現場に投入した時に、それが地面に染み込んだり流れたりしてなくなってしまう損失です。

掘削液は流し込んでも勝手に亀裂などから外に流れていかない特性を持ちながら、ドリルで掘削した際に出てくる切り屑などを外に排出する必要があります。この流体特性がとても重要ということでした。

ここでサイリウムハスクを使うと、内部の有機分子が粘土微粒子をつなぎネットワーク状になり水を良くふくむ物質へと変化するようです。論文ではcakeと書いてありますが、おそらく水と粘土微粒子を含んだもったりとした物質になるのではと考えられますね。

参考文献より引用


そのため、簡単に流れてしまうことはなく、流体損失の観点から見ても非常に良い損失の低減に寄与したようです。

そして前述したように、高い温度でも有機物のネットワークは切れないため流体損失は悪化せず、安定性の高い掘削液を実現したということでした。

最後に

物質科学の観点からは馴染みのある領域でしたが、その掘削という目的から少し難しい印象でした。もし認識が間違っているところがあったら是非教えてほしいです。

それにしても、人間はまだまだ自然の力を使えていないのかもしれません。いまだにオオバコ(サイリウムハスク)といった自然の産物のお世話になるんですからね。

参考文献

Application of Psyllium Husk as a Friendly Filtrate Reducer for HighTemperature Water-Based Drilling Fluids

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