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【物理思考】研究にも仕事にも使える思考法

世の中には論理思考や仮説思考といった様々な思考法がありますが、今回は自分が自然と実践していた思考法を紹介したいと思います。

はじめは科学的な研究にしか使えないと思っていましたが、よく考えると普段の仕事にも使っていて、うまくいってるなと気づいたわけです。

特に理系の大学生にとっては当たり前だけど、研究だけでなくて、その他の多くの仕事に対して有効になる物理の考え方を記事にしていこうと思います。

ここでは”物理思考”としておきましょう。

物理思考とは

今回紹介する物理思考とは、最近流行りの○○思考という流れに乗せて、もともと物理屋だった私が勝手に作った造語です。

物理屋(物理学徒や研究者など)が一般的に使う手法を抽象化したら、世の中の多くの課題解決や仕事に応用できるのでは?と思いまとめてみると、これが意外と使えるんです。

ということで、私が普段使っている物理思考を具体例も示しながら紹介してみようという試みです。

そもそも、物理屋さんは研究に対して一体どんな考え方をするのでしょうか。一般の方にとっては想像もつかないと思いますので、簡単に説明しておきましょう。

まず、物理屋さんは世の中の現象をなるべくシンプルな数式で記述して、その数式に出てくるパラメータ(変数)を制御しようとします。いきなり専門的な表現になってしまい、もう大混乱ですね。

物理の基本的な考え方

具体的な例として、リンゴが木から落ちる現象を考えてみましょう。

物理屋さんは、この現象のどこに注目するのかを決めて、その中から影響を与える因子(パラメータ)を考えます。

リンゴの形には個体差があり、形状によって空気抵抗が違いますね。ただ、こんなことを考え出すと急に難しい問題になってしまいます。そこで、いったん空気抵抗を無視しましょう。

これがいわゆるどこに注目するのかというところです。物事をシンプルにするためには、ときに省略しなくてはならないものも出てきます。ここでは空気抵抗を無視します。

次に、リンゴの落下に影響を与える因子は何でしょうか?これは高校物理で習いますが、重力加速度と時間で決まります。重力加速度は地球上であれば大体どこでもいっしょです。

そうすると、リンゴが木から落ちるという現象はほぼほぼ時間だけで表現することができます。つまり重要因子は”時間”と言えるわけです。

ここでは、リンゴが地球上で空気抵抗がない場所で落下するという、普通は起こりえない前提を考えましたが、空気があれば当然空気抵抗があり、リンゴの形なども考慮する必要があるでしょう。

また地球上でも南極と赤道では重力加速度が若干変わりますし、火星で実験してればもちろん重力加速度は異なるため、どこまで無視しても良いかはよく考える必要があります。

そんなことして何になるのか

少々前提の物理思考の考え方が長くなりましたが、この物理の考え方は一体どのように仕事に活かせるのでしょうか?

実は、仕事でも物理現象と同じように、どこに注目するのか(何を無視するのか)、影響度が高い因子(パラメータ)が何なのかを考えることは非常に重要なことです。

おそらく多くのビジネスパーソンは自然と考えているのかもしれませんが、物理屋さんだって負けてはいません。物理と同じ考え方でビジネスに臨めば、きっと糸口が見てくるはずです。

ここからはその具体的な応用例を見ていきましょう

物理思考の具体的な実用例

プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントというと物理と全く関係がないように思えます。確かに物理とは全く関係のないビジネスの世界です。

しかし、上述した物理的な考え方(物理思考)は使えます。

前提として、ここでのプロジェクトマネジメントを定義しましょう。

仕事の内容はなんでもいいですが、メンバーが10人ぐらいいて、皆異なる部署の人たちだとします。各メンバーが各々の仕事をして次の部署のメンバーに引き継ぎ、会社のプロジェクトを完遂するタイプです。

おそらく多くの会社で、このようなプロジェクトがたくさん乱立していると思います。

この中で生じる大きな問題の一つとして、スケジュール通りに進まず納期に間に合わないということが挙げられますね。

スケジュール通りに進まない理由はいろいろあると思います。上司の鶴の一声で変わってしまった、担当者が病気になって出社できない、サプライヤーから原料が供給されないなど…

それでは、そんなプロジェクトマネジメントにおいて、物理思考を使ってみましょう。

まず、注目するポイントを設定します。フォーカスを決めるとかスコープを当てるといった表現にもなりますが、どこまでは考えてどこからは考えない(無視する)のかをざっと決めるんです。

たとえば、他国で戦争が勃発してプロジェクトがなくなるとか、担当メンバーの家庭環境が悪くて仕事に集中できないとかは、想定のしようがありません。そのため、戦争のような大きすぎる事態や各家庭の事情のような細かすぎる話は無視します。

あくまで社内もしくは協力会社で調整可能なレベルまでスコープを狭めます。これはリンゴが木から落ちる現象でまずは空気抵抗を無視してもいいのと同じ感覚です。

次に、パラメータを決定します。要は、注目したポイントの中で、プロジェクト進行に遅れを生じさせる可能性がある事柄を列挙します。

部署Aは大変忙しくて担当者の手が回らない、部署Bでは感染症が蔓延しており人手不足が起こりえる、サプライヤーの供給が滞っており納期遅延が生じる、などです。

あらかじめ、プロジェクト進行に影響を及ぼすパラメータがわかったら、そのパラメータの上限を決めます。つまり、人手不足が生じでも10日あれば対処できるとか、サプライヤーの供給がどんなに遅れても1か月あれば届くとかです。

基本的にプロジェクトは遅延するものです。上記に示したような予測可能なパラメータの上限(最も遅延するケース)を代入した結果をスケジュールとするべきです。

また、この時点でスケジュールの遅延に影響を及ぼすパラメータがわかっているのであれば、先手を打って対策を打つこともできます。

ビジネスの世界ではこのような最も時間のかかる重大なところをクリティカルパスと呼ぶそうです。

化学専門の方なら律速段階といった方がわかりやすいと思います。どちらもざっくりいえば同じような意味合いだと思います。物理思考では最重要パラメータということになりますね。

いやいや、自分はプロジェクトマネジメントなんてしないよ。もっと簡単な単純労働なんだよって方も、物理思考を使えます。

雑用

雑用いうと表現が悪いですが、それでも若手の社員は雑用が山のように回ってきます。大量の文書に署名して、他部署の偉い人からサインをもらって来るといったくだらない仕事も多いですよね。

そんな仕事にも物理思考を使いましょう。

まずは同様に注目するポイントですが、基本的に雑用なのでやるべきことをやるだけです。せいぜい、考えなくても良いような些細な点は気にしなくても良いぐらいですかね。

私の場合は、自分で判断ができないときは、本質的な要/不要を考えて先輩や上司に確認を取って無駄なことはやらないようにしています。こうして注目ポイントを狭めています。

それでは次に、どうやってパラメータを考えればよいのでしょうか。これは少々難しく感じますが、いったん俯瞰して考えてみましょう。

やるべき単純作業をやるだけですが、その中で一度にまとめてやれる作業を異なるタイミングでダラダラと仕事をしていませんか?何度も同じようなことを繰り返していませんか?

私自身やってしまうことはありますが、これは時間の無駄です。

例えば偉い人のサインを10枚もらうために、自分の席と他部署と10往復するなんてことは何としても避けたいですよね。一度にまとめて10枚もらう方が絶対に効率的です。

雑用であっても、これから自分がやるべき雑用を一度俯瞰して構造化します。どのような順序でこなしたら、同じ行動をひとまとめにできないかを考えます。

その結果、自分が内容を確認してサインする×10枚→他部署の上長に持っていきサインをもらう×10枚→自部署の上長のサインをもらう×10枚といった流れができたとしましょう。10往復するよりはずっとすっきりしましたよね。

この考え方は物理シミュレータで似たような式を10回書くのではなくて、1つの関数に変数を10回入れるのと同じ考え方です。まあ、上の例は物理的に説明するまでもなく、わかりますよね。

そして、パラメータは以下のようになります
・自分が書類を確認する
・自分がサインする
・他部署の上長が書類を確認する
・他部署の上長がサインする
・自部署の上長が書類を確認する
・自部署の上長がサインする

こうしてようやくパラメータが決まるわけです。

ここで、一連の仕事で想定通りにいかない、スケジュールに影響を与えるかもしれないパラメータを考えます。例えば、その一連の書類が自部署の案件であり、自分と自部署の上長は内容を知っているとしましょう。

すると、一番危険なパラメータは他部署の上長の書類確認となります。サインに関しては単なる作業ですからね。

そのため、あらかじめ、他部署の上長に雲行きが怪しい文書の内容を共有し、合意を得ておくというのが手としてありますよね。それは別にメールでもなんでもいいわけです。

その後に、手書きの署名が必要であれば、合意を得たうえでサインをもらいに行けばよいだけです。

この最重要パラメータ(クリティカルパス)を見極めて仕事をすれば、比較的効率よく仕事を進めることができると思います。

最後に

今回は普段仕事の中で使っている物理思考を、実際に私が経験した具体例と合わせて紹介してみました。

物理思考を使えば、仕事が効率的に進められるといいましたが、私自身必ずしもうまくいっているとは限りません。ただ自分への戒めも込めて記事を書くと思考がよりすっきりしたような気がします。

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