オリジナル小説│端役の徒然 6 無
ハロウィンが終わると世の中は一気にクリスマス一色に染まる。うちの店も例外ではない。
10月31日の営業終了時刻が近づくと毎年いるのが、
「まだハロウィンの仮装グッズありますか」
と訪ねてくる客だ。
結構多いのだが、例に漏れず仮装グッズは早々に売り切れる。31日当日に残っているのは、インテリアなど置物ばかりだ。
営業終了後すぐにハロウィンのオバケやカボチャなどの飾りはバックヤードにしまい込まれ、すぐ出せるように仕分けしておいたクリスマスグッズを入り口付近に並べる。
すぐ片付けられるよう、なるべく売り切れる量を仕入れるのが腕の見せ所だ。まぁ、基本的に本社が送ってくるのだが。
インテリア系は動きが悪いので、物によっては数年持ち越されていたりする。それでも売り場に並べられるのは、見ていて可哀想に思える。
まだまだハロウィンの夜はこれからだっていうのに、ただひたすら無感情で片付けてクリスマス用品を並べる。
毎年こうで、イベントなんてなんの楽しみもない。ひたすら出して片付けるだけ。
これからまた、お正月、バレンタイン、ホワイトデー…
二人組になれない私には関係のないこと。
一つ終わったら、また入れ替えるだけ。
キラキラしたイルミネーションで彩られた街は綺麗だと思う。ただ、その周りにいるのは幸せそうなカップルや家族連れ。
私はいつも、ひとり。
誰もいなければいいのに。
イベントなんて大嫌いだ。
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