#短歌
萩原朔太郎「石竹と青猫」
花燃えて落ちる
九月にさく心
色のない無花果
生温い夢
The Burning flower
Fall in September
It tears my heart
That un-favorable fig
A lukewarm dream
(前橋ネコフェス_2015)
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「石竹と青猫」
みどりの石竹の花のかげに ひとつの幻の屍體は眠る
その黒髮は床にながれて
手足は力なく
萩原朔太郎「月光と海月」
絡めては こごる指先 春の雨
解いて 溶かして その舌先で
(前橋ポエフェス_2014年)
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「月光と海月」
月光の中を泳ぎいで
むらがるくらげを捉へんとす
手はからだをはなれてのびゆき
しきりに遠きにさしのべらる
もぐさにまつはり
月光の水にひたりて
わが身は玻璃のたぐひとなりはてしか
つめたくして透きとほるもの流れてやまざるに
たましひは凍えんとし
ふかみにしづ
萩原朔太郎「五月の貴公子」
よるべなく まどろむ
あめの またたきに
きらめく よろめく
ストレイシープ
(前橋ポエフェス_2014)
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「五月の貴公子」
若草の上をあるいてゐるとき、
わたしの靴は白い足あとをのこしてゆく、
ほそいすてつきの銀が草でみがかれ、
まるめてぬいだ手ぶくろが宙でおどつて居る、
ああすつぱりといつさいの憂愁をなげだして、
わたしは柔和の羊になりたい、
しつとりとした貴女