萩原朔太郎「五月の貴公子」

よるべなく まどろむ
あめの またたきに 
きらめく よろめく 
ストレイシープ

(前橋ポエフェス_2014)

***

「五月の貴公子」

若草の上をあるいてゐるとき、

わたしの靴は白い足あとをのこしてゆく、

ほそいすてつきの銀が草でみがかれ、

まるめてぬいだ手ぶくろが宙でおどつて居る、

ああすつぱりといつさいの憂愁をなげだして、

わたしは柔和の羊になりたい、

しつとりとした貴女あなたのくびに手をかけて、

あたらしいあやめおしろいのにほひをかいで居たい、

若くさの上をあるいてゐるとき、

わたしは五月の貴公子である。

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