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大丈夫。ちゃんと前進していたから。

退職しようと思っていた。

「趣味の旅行と仕事を両立したい」と転職して2年、なんとなく私はこの会社にいないほうがいい気がしていたから。

仕事は順調だった。転職して初めてクライアントワークを経験したが、お客様に恵まれ、社内メンバーとも良好な関係が築けていた。好きな海外旅行にも年5回程度行けるようになり、転職前は考えられない働き方ができていた。

でも、社外イベントに参加して人脈を広げたり、SNSでの個人発信が苦手な私は、好きなだけ休みをとって海外に行けるという働き方を、社外に発信できていなかった。心の中ではしたいと思っても、「なんとなく偉そうに聞こえるのでは、バッシングを受けるのではないか」と思うと怖かった。今、「働き方改革」と様々な企業が多様な働き方を広めている中、会社が許してくれるこの働き方を発信できていない自分は、ただ"個人のわがまま"のために休みを取っているだけの存在のように感じ始めていた。会社に恩返しができていないことに、ひどく後ろめたさを感じた。だから、もうこの会社にいないほうがいいのだと。

ちょうど「ゆっくりと数ヶ月かけてアフリカを旅したい」と考え始めていたこともあり、仕事を辞めて旅に出ようと思った。

「欲求に従うのは大事」と承諾してくれた上司

ある日の訪問帰り、上司の重枝義樹さん (@SGDYSK) に伝えた。

「数ヶ月のうちに会社辞めますね。なんだかとっても長期間アフリカに行きたい気分です。」

少し表情が曇ったような気がしたが、すぐに「そういう欲求には素直に従ったほうがいいですね。」と返事がきた。私が日々「旅行のために生きている」と公言していることもあり、すんなり承諾された。ただ、少し探るように「それは今までみたいに働きながらじゃダメなんですか?」と質問が返ってきた。

「うーん、1ヶ月以上ですからね。流石に仕事を他の人に代わってもらわなければならないので、休暇が取れるイメージがつかないです。」

今までは10日程度の休暇だったため、お客様にご承諾・ご協力をいただきながら、休暇の前後に仕事を寄せて自分で対応しており、ほとんど他の人に仕事をお願いせずに済んでいた。どうしても休暇中に発生する請求書のやり取りなど、最低限の仕事のみに留まっていた。

ただ、1ヶ月休暇だとそういかない。一部どころか、全てをお願いしなければならない。たとえ上司がOKしたとしても、他のメンバーにお願いできる理由が思いつかなかった。もし私がお願いされる側なら、なぜ海外に遊びに行く人の仕事を引き受けなければならないのか、納得がいかない気がしたから。

「みんながみんなそれに不満を感じるわけではないと思いますが。それに1年前までは10日間休暇すら不可能だと思われていた部署で、今は誰もそれを問題視してない。それならなんで、1ヶ月はダメだと思うんですか?」

「だって、10日間休暇はもうすでに何度も取ってるから取れるという確信がある。でも・・・」

「・・・前例って大事なんだな。」そのまま上司は黙ってしまった。

私はこの「前例」という言葉が妙に引っかかっていた。

1年前は10日間休暇すら、"当たり前"ではなかった

思い返すと入社して半年後の仕事にも慣れてきた2018年3月、初めてインド旅行のために2週間ほどお休みを頂いた。

もともとリモートワークやフレックスを導入していた会社だけあって、社内メンバーから反対の声は上がらなかった。仕事は調整できるイメージはあったが、不安だった。何より、会社で初めてそういった休暇を取ろうとしていたため、旅行中に予期せぬトラブルが起きてしまったら、他の人にしわ寄せがいってしまったら、「やっぱり長期休暇なんて馬鹿げてる」と言われてしまうかもしれない。私の立場が悪くなるのは構わないが、もしかすると他の人の休みの権利すら狭めてしまうかもしれない。怖かった。

1回目と2回目は大きな問題なく休暇が取れた。でも3回目の休暇の際、直前に予期せぬ差し込みが入った。2日ほど徹夜したがどうしても終わらず、他の方にお願いをして引き受けていただいた。

悔しかった。涙が止まらなかった。

「私に泣く権利はない」と歯を食いしばったが涙は止まらなかった。何度も止まれと太ももを叩いたのを覚えている。


入社して2年、海外旅行のために取った休暇は計5回となっていた。

一部悔しい思いはしたものの、基本的には順調に休みが取れ、今では「2〜3ヶ月に10日程度の休暇なら、問題なく取れる」という確信がある。月日が経つに連れ、業務量も増加、担当するお客様数も3倍ほど増えているが、この感覚は絶対的なものとなっている。

そして、先日「休暇を取るってネガティブなイメージだったけど、考えが180度変わった。休みながら仕事をこなすほうがかっこいい」と同僚が話していたと噂で聞いた。部署全体の有給消化率も上がったらしく、こんな私でも誰かに影響を与えられているのだと嬉しくなった。

「ああ、ちゃんと前進してたんだな」と。

かっこ悪くていいや。だってそれが私だから。

今は「この会社に務めながら、1ヶ月の休暇を取ってアフリカに行こう」と思っている。

方法は分からない。

お客様へ提供するサービスの質を下げず、仕事を代わってくれる同僚が不満に思わず、みんながハッピーな方法じゃなければならない。そうでないと、そもそも私が納得できない。

でも、仕事を辞めて行くより、この会社で実現するほうがかっこいいと思った。

そして、社外への発信も、ありのままの自分の感情を、状況を、そのまま伝えればいいやと思えた。Twitterを見ていると世の中すごい人だらけで、自分がちっぽけに見えるのだけど、でもそのちっぽけな自分が私だから、かっこ悪くていいのだと。

だから、今後もゆっくり、私なりに、発信していきます。

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