<美味しい本①>それからはスープのことばかり考えて暮らした
ご飯を食べるとわからないけど元気になる。
私の小説選びの永遠のテーマの一つとなっている「ご飯」
・ふらっと入ったお店のカウンターで一人で食べる小料理とお酒。
・悲しいことがあったときに口いっぱい頬張るパスタとワイン
・早起きの日のコーヒーとホットサンド
・目の前で湯気を立てるラーメンと冷えたビール
登場人物が、食べるものから元気や前向きになる気持ちをもらっていることが多い。
私自身、落ち込んでいても結局美味しいご飯を食べればなんだか元気が出てくる、そう思って生きている。
それからはスープのことばかり考えて暮らした
吉田篤弘さんが書くこの小説には「サンドイッチ」「スープ」が出てくる。
それから「ラーメン」も。
主人公の大里(オーリィ)は、恋をした銀幕の女優に会うためにいつものように映画館に行く。ところが映画館に持ち込んだ「トロワ」というお店のサンドイッチの美味しさに気を取られて恋する相手の出演シーンを見逃してしまう。
今まで一度も見落としたことはなかったのに・・・
それからはサンドイッチのことが頭から離れなくなり毎日サンドイッチのことを考え始める・・・・
おそらく私が今まで読んだ小説の中には、主人公が我を忘れてしまうほどおいしそうなサンドイッチは出てこなかったと思う。
ポテトサラダ、ハム、きゅうり・・なんの変哲もないサンドイッチなのだが、ポテトは栗のペーストのように滑らかな舌触りらしく、それはそれは美味しいらしい。
おいしいサンドイッチとは
個人的には、サンドイッチはパンが全てを決定すると断言しても間違いないと思っている。
「ふわっとしっとり甘みのあるパン」がベースにある事。
それは焼き目がつけてあっても同じである。
先日、気になっていたコーヒー専門店で大きな桃の入ったフルーツサンドと、たまごサンドを買った。見るからに美味しそうなサンドイッチだったが、一口食べると何かが違う。「美味しくない・・・?ことはないんだけど・・」
そもそも「パン」「生クリーム」「桃」が完全に独立してしまっているのだ。仲良くない感じ。強いて言えば、パンが硬すぎる。そして甘みがない。
コーヒー専門店なのでしょうがない?のかもしれないが、サンドイッチショックに全部持っていかれてしまった。
コーヒー&サンドイッチ好きにとってこんなに悲しいことはないので、全国のサンドイッチを出してるコーヒー屋さんは、是非パンと具材の一体感についても考えていただけると大変嬉しいと思います。
セブンイレブンの食パンはたまごサンドとの相性が良いと思いますが、みなさまいかがでしょう。
ちなみに、私はハードなパンを使ったサンドも好きですよ。
スープはどこへいった
ここまで読んで、小説のタイトルのスープはどこへいった?となると思うが、
安心して欲しい。
サンドイッチは導入部分で心をがっちり掴み、中盤からはスープの話一色になる。
寒さが増してきた頃、オーリィはサンドイッチの売り上げが芳しくない「トロワ」オーナーから何か売れる策はないかと聞かれスープを作ることにする。
うわの空になるほどスープを作ることばかりを考え、またもや見にいった映画で恋する相手の出演シーンを見逃してしまう。
そんな中「名前のないスープ」を作るある人と出会い・・・
結論
静かだが、サンドイッチとスープ、それから登場人物の暖かさに満たされる。肩に入った力がふっと抜ける小説である。
きっとどこかにあるちょっとレトロな街、もしかしたら自分の住む街に近いかもしれない。
ちなみに、オーリィはちょうど会社を辞めて無職のタイミングなので、会社を辞めてもどうにかなるんじゃないか?とさえ思ってしまい、通勤時に読書していた私の心を大きく揺さぶったのも事実。
番外編
近所のビールやさんの空き時間を使って喫茶を開こうと思っている私だが、この小説を読み直したタイミングで、サンドイッチとスープという考えが頭をよぎった(安易)
がしかし、スープストックトーキョーの遠山さん曰く、スープはコストも時間も非常にかかるものらしい。
確かに、一人でやる喫茶には不向きかなぁ・・・・さてさて私の模索はまだまだ続きます。
それではまた次回、おいしい小説をご紹介します。
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