『不安な童話』恩田陸 感想
自粛期間中に、恩田陸の再ブームが、自分の中で訪れた。
好きな人のことはとことん知りたい私は、デビュー作から再読することに・・。
今回は、デビューから3作品目のこちらの作品について。
*あらすじ*
私は知っている、このハサミで刺し殺されるのだ――。
強烈な既視感に襲われ、女流画家・高槻倫子の遺作展で意識を失った古橋万由子。彼女はその息子から「25年前に殺された母の生まれ変わり」と告げられる。
時に、溢れるように広がる他人の記憶。そして発見される倫子の遺書、そこに隠されたメッセージとは……。
犯人は誰なのか、その謎が明らかになる時、禁断の事実が浮かび上がる。
*感想*
「ぼろきれのように砂浜に横たわる女。すでに波の冷たさも濡れた砂の硬さも感じなくなっている女―――これは私――私。」
高専の時、ある日見た夢をもとに、小説を書いたことがある。
私にしてはめずらしく、ファンタジーで、でもリアリティのある夢であった。
そして、その小説の始まりがまさにこの小説のこの文章(セリフ?)のようだった。
そもそも、この小説は初読みだった気がするのだけど、中学生の時に読んだことあったっけな、と記憶をさかのぼってみたりもした。
思い出せないけど・・。
完全に初読みの気持ちで、ウキウキ読み始めたら、この情景知ってる・・となった。不思議。
私の中に、すでに恩田陸がいたという解釈でよろしいかしら。
物語自体は、不思議な力とミステリーで、読み進むほどに先が気になって、手が止まらなかった。最後まで止められなくて、1日で読み終えた。
恩田陸は、不思議な力と”日常”をナチュラルに組み合わせるのがうまくて、「超能力者?!」みたいな、そっち側の小説に仕上がってないのがステキ。
「素晴らしいもの、価値あるものには必ずほんの少し毒が含まれているものさ」
このセリフ、『夏の名残りの薔薇』を思い出す。
「桜子は私の毒なのだ。やめられない毒。禁断の甘い毒。」
恩田陸の歴史としては、『不安な童話』からしばらく経っているけど、私は最近読んだから記憶が新しい。
恩田陸の作品も巡りまわっているのかもしれない。
これだから恩田陸はやめられない、私の甘い毒である。
*言葉*
・生きているものはみんな、形や姿を変えていつまでも世界を回り続けるの。
・遠い海への道のりは、ある日、突然に始まる
・すべての道が、海に繋がっているように見える
・「あんたはいっつも月の裏側に行ってるみたいにたそがれているわ」
今日も、ありがとうございました。
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