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出汁VSアミノ酸:究極の「美味しさ」とは?

「美味しい」という言葉は、ごくごく日常では、普通に使われるものです。
とはいえ、年齢、男女、地域、さらに国によって、「美味しい」の基準は、変わってくるものです。

最近、バーガーの取材をうけまして、
「外食のバーガーの違いと、惣菜のバーガーの違いは?」と。

「惣菜のバーガーは、時間が経つとパックされていることでパンが柔らかくなります。しかし、それを逆手に取り、柔らかい食感、つまり食べやすさをポイントにしています。この柔らかさが、美味しさの一要素となるのです。一方、外食のバーガーは牛肉100%のような素材重視のものが主流で、特に牛肉の香りと風味が美味しさの決め手となります。このように、惣菜と外食のバーガーでは美味しさの基準が異なるのです。」

さらに、「中食のバーガーは298円の価格帯が主流なので、動物性たんぱく質だけではコストを賄えず、植物性たんぱく質を加えて原価を調整しています。これにより、柔らかく仕上がります。一方で、100%牛肉のパティは時間とともに硬くなるため、惣菜のように作り置きするのは難しいのです。」と続けて説明しました。納得していただけたことを願っています。

ラーメンもまた「美味しさの基準」が難しい商品です。豚骨味が好きな人、醤油味が好きな人、さらには塩味や味噌味を好む人もいて、好みは人それぞれまちまちです。

開発者としては、どこに焦点を当てるのかが極めて重要で、一歩間違えると売れなくなってしまいます。徹底的なマーケティングを行っても、ヒットする保証はありません。

このように、美味しさの基準は一つの商品を取ってみても非常に多様です。

では「美味しさの基準」とは一体何なのでしょうか。

私が仕事を始めたばかりの頃、「美味しさ」について、オリジンの創業者である安沢会長から徹底的に教わりました。

会長はこう言いました。「一人一人の環境要因を考えると、一概に美味しさを定義するのは難しい。年齢、性別、地域、年収、国などの諸条件を除外していくと、究極の美味しさとは『生まれてから死ぬまでその商品を何度食べるか』、つまり回数だ。」さらに、「日本人が最も多く食べるのはコメだ。ご飯に合う商品を作れば、売れる商品が何か自ずとわかるだろう。」と教えてくれました。洋風料理であっても、ご飯に合う味付けなら売れる可能性が高いということです。


生まれてから死するまで食べる回数。
それは、何度でも食べたくなる味。

さらりと言われた言葉でしたが、「美味しさの究極の真理」をついており、会長が既に末期がんであったからこそ発した言葉だったのかもしれません。

「何度でも食べたくなる味に仕上げることが大事だ。」と会長は続けました。飽きのこない味、それは甘さ、油、そして出汁で作られています。

最近の「味の素論争」についてですが、マウスを使った実験がありました。実験では、自然の出汁とアミノ酸で作った出汁を比べたところ、マウスはアミノ酸で作られた出汁には病みつきになりませんでした。これは香りが大きく関係しているとされています(「味覚と嗜好のサイエンス」伏木享)。核酸とアミノ酸を高濃度で混ぜたものに塩分を加えただけでは、香りは出せないので、魅力は半減するのです。やはり、きちんと出汁を取ることが大切だと改めて思います。

美味しさについて学んでからは、「何度でも食べたくなる商品かどうか」を意識して商品と向き合うようになりました。仕事では、「美味しい」「まずい」といった主観的な言葉は極力避け、その商品の特性を伝えることを心がけています。







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