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心地よい呼吸とエネルギーの交換は、十分に生きること

心地よい呼吸とエネルギーの交換は、十分に生きること

 古代の人も、身体は世界に向かって開いているものとして捉えていました。
 
 しかし、内と外は、はっきりした区分されたものではなく、呼吸を通して混じりあっていたとも言われています。東洋においては、小宇宙をいう人間の身体は、大宇宙という世界と対応して両者はつねに交流して交じりあっているものだと考えられてきました。自分の身体という小宇宙を呼吸でコントロールすることによって、大宇宙と交流できます。
 
 その身体の源流となるのが、ヨガの呼吸法です。古代インド哲学では、生命・宇宙は「気」に始まり、「気」が還るのだという考え方をしています。プラーナヤーマと呼ばれる呼吸法では、宇宙の「気」(エネルギー)を体内にとり入れてめぐらし、還す身体技法です。
 
 呼吸と同様に、エネルギーも受動と能動が反転し、ダイナミックにポジションチェンジをしてきます。エネルギーは流れるもので、そこにある運動性が大切になります。
 東洋の思想を表した陰陽図(太極図)は、刻一刻と陰陽が反転し、入れ替わっていく森羅万象を表した図です。
 光と陰、男と女、善と悪、融和するか戦うか、私たちの中には対極な構図がつねにあります。しかし、それが固定されずに動いて、ずれて、反転していくイメージです。
 
 相反するものが、交じり合い、交代するなかで飛躍積感が生まれる運動性がここにはあります。例えば、太極拳では、相手の流れをまず感じ取って、その方向性を微妙にずらして次の攻撃に変えていきます。
 押していくなかで、陽と陰が入れ替わります、どちらが陽で陰という関係ではなく、その時々の動きの中で陰と陽が柔らかく入れ替わります。
 
 固定せず、反転し、混じり合っていくことで、エネルギーは停滞せず、生き生きと流れ出します。この運動性は脳科学とも合致します。
 ニューロンのネットワークシステムの構造では、ニューロンの送り手側、受け手側が十何位入れ替わり、そういう組織がたくさん集まることで、柔らかい脳というシステムがうまれているそうです。ニューロン個々の役割は、固定ではなく、いつでも高速に入れ替わっているようです。
 
 合気道、太極拳、柔道でも、基本的にはいかに相手を受けるかです。
 禅の修行においては、呼吸を通して内と外が混じりあう一体感、積極的能動性を身につけることを目指しました。
 受動的な感覚の中で物事を柔らかく受け止めてきた感性は、今度は積極的に、「いかにエネルギーを変えるか」といった時にもそのまま生きてきます。
 エネルギーはいかようにも流れを変えることができます、エネルギーの好循環は生きる喜びの根源になります。心地よいエネルギーの交換は、十分に生きること、そのものです。
 人の存在は、内と外にきっちり分けられた閉鎖系ではなく、エネルギーを通して常に外部と交流している解放系です。反転し、溶け合う間の領域に生きることの醍醐味もあります。
 
 同じ自分のはずなのに、自分のエネルギーが変化することで、体験する現実が変わります。
 もっと言えば、エネルギーが変わるということは、あなたは、「それまでの自分とは、まったく違う自分になる」ことを意味しています。 

#創作大賞2023

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