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【エッセイ】 やせたんです

 のっけからすみません。自慢 させてください。

 何を隠そう、このおよそ一年半で約十五キロの減量に成功しました!
 スーパーで買う五キロの米が三個分。
 もしくは、幼稚園児一人分。

 一年半前、私はこれを始終身につけていたのかと思うと、我ながら信じられない気持ちになる反面、そりゃ走れないわけだよ、と妙に納得する自分がいる。
 なんせ、赤い服を着ればムックかロボコンか、緑ならガチャピン、黒スキニーを履けば力道山である。我ながら、自虐にも程がある。ここ、笑うとこです。

 減量のきっかけはジムに通うようになったことと、消化器系の手術をうけたこと。
 ジムは皆さんご存知、女性専用のサーキット型のもの。マシンと有酸素運動を交互に回るアレである。そして多分に効いているのは運動だけでなく、月に一度の計測であるように思う。
 毎月第一週に、体重、体脂肪率、骨格筋率、ウエスト、お腹 のサイズをコーチに測られ端末に記録される。この他人の目が、私には重要だったらしいのだ。

 思い当たるフシはある。

 息子二人を産んだ産院は、それはそれは体重管理に厳しいところで、毎日の食事の記録が義務付けられており、検診のたびに栄養指導と体重チェックがあった。先生を密かに閻魔様と呼びながら、指導に必死についていったおかげで出産間際の体重が妊娠発覚時とほぼ同じ、出産後にはマイナス五キロなんてことが起こったのだ。

 しかし!
 産んでしまえば指導も終わり、いい気になって好き放題すれば、あれよあれよという間に歳をとり、更年期太りなんてものも相まって、超お得用サイズと成り果てたのである。

 第三者の目、大事。
 管理してくれる人のありがたさを痛感する。

 余談であるが、三年前に母が亡くなった時に手持ちの喪服がサイズアウトしていることに気付き、急遽某量販店に走った。
 まず、着られると思った11号が入らない。次のもダメ、その次も。その度に夫君に走ってもらい、上のサイズを持って来てもらう。情けなくて、試着室で母を亡くした悲しみとは違う涙が滲んだ。
 結局、好みのデザインを選ぶ余地はなく、着られるモノを買うしかなかったのだった。

 さて、きっかけその二の消化器系の手術だが、手術自体は大したモノではなく、三泊四日の休暇くらいの気軽さであったのだが、自分の体調を見直すには充分な出来事であった。
 元々便秘傾向であったのだが、これを機に腸活なるものに俄然興味が出てきたのだ。

 ジムでは筋肉をつけるために、タンパク質を取りましょうと言われる。
 それにプラスして、食物繊維と発酵食品、プレバイオティクス、プロバイオティクスなんてことを調べまくり、良いと思われるものはどんどん試す。
 食物繊維に水溶性と不溶性があるなんて知らなかったし、乳酸菌とビフィズス菌が異なるモノだとは考えたこともなかった。
 そして、グルテン不耐症なんて言葉に出会い、目下ゆるくグルテンフリー生活を送っている。
 波はあるものの、確実に良くなっていくのが面白い。
 そして腸活に良いと言われるものと、筋肉のためのタンパク質をちゃんと摂ろうとすると、脂質や糖質はあまり食べられないのだ。これは地味にすごい発見であった。

 ひと月にだいたい一キロずつ。妹たちに「誤差じゃん」と笑われながらも、戻らなければそれは次につながる実績となり、気がつけば十五キロ減っていたというわけである。

 惜しむらくは、記録写真を撮っていなかったこと。

 お得用サイズだった頃は、とにかく写真を撮られるのが嫌でなるべく避けてきたために、証拠写真が乏しいのだ。
 確固とした覚悟もなく何となく始めたダイエットだったので、仕方ないといえばそうなのだが、ちゃんと向き合っていたらもしかしてインスタあたりで商売になったかもなんてイヤらしいことを考えてみたりする。

 夫君は妻を褒めてくれる人なので、それももちろんうれしいことなのだが、一番実感するのは不意にのぞいた鏡で絶望しなくなったこと。
 以前は駅やショッピングセンターなどで、鏡を見るともなく見てしまった日には、ぎょっとして「誰?!」と思い、「私ってこんななのか…」と凹んでいたものだ。
 鏡よ鏡、汝の名は絶望。てなもんである。。

 化粧をする時など自覚的に見る鏡には、よそゆきの見慣れた自分が映る。多分に頑張って口角などあげ、少しでもよく見える角度を無意識に探している。
 が、無防備なときの顔ときたら!
 自信なさげに背中を丸め、口角は下がり、顔には不用な影ができ…。
 普段こんな顔を晒しているのかと悲しくなるくらいであったのだが、今はちょっとましになってきている(あくまでも個人の感想です)。

 そして痩せてみて初めてわかったこと。
自らを「ダイエッター」と言えるのは痩せてからだということ。
 お得用サイズであった頃には例えダイエットに励んでいても、恥ずかしくてとても公言はできなかった。
「食後にアイス食べる?」
「ダイエッターなんで、やめておきまーす」
と明るく返せるようになったのは、十キロ減量できた頃からだった。

 幼い時からぽっちゃり型で、何回となくさまざまなダイエットに挑戦しては、少しの成果と大きなリバウンドを繰り返して来た。
 小学校高学年の頃、漠然と食べないダイエットを始めようとした時、父に言われた。
「痩せたら今よりも魅力的になるの?」
 痩せてどうしたいのかまでは、全く考えてなかった当時の私に言ってあげたい。

 食べたいものを我慢して、手っ取り早く体重だけ減らしても意味ないよ。
 結局は、運動と食事。これに尽きるよ。
 そして、痩せられたら少なくとも今よりはずっと、きれいになれるよ。
 
大きな声で叫びたい。

「好きな服が着られるよーー!」

 もっと早く気づけよと思わなくもないが、還暦前に気づけて上等!
この先何年生きるとしても、今が一番若いのだから。

言い訳的な追記:やせたけど、やせた人にはなっていません笑。


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