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『ライオンの隠れ家』9話の愛生をどう受け止めるべきか考えたい

まずは、8話をふりかえる


「いや、『開けて〜〜〜〜〜〜!!!!!』とかじゃなくて!!!!
バールを!!!!バールを今すぐ持ってきて!?!?!?」

「そのドアをこじ開けて、今まさに中で暴力をふるわれている息子(及び絶賛気が狂ってしまっている自分の旦那)を助けて!?!?!?」

と、友人と語り合っていたのもつかの間。
怒涛の展開が気になりすぎていた『ライオンの隠れ家』第9話が放送されたよ!!!!!こっからどうすんの!どうなんの!みんな!!!!

AIに図解させてみた・そちらの世界線のオノマチ

一旦、もうちょい8話の内容から言及しておきたい。

愛生(尾野真千子)が兄弟の避難先である別荘で再会を果たし、迷惑をかけたお詫びにすべてを打ち明けると洸人(柳楽優弥)に伝えたシーンがあったはず。

こちとらやっと「戸籍を変えるような罪を犯してまで偽装死を計画した理由」について聞けるかなって期待してたのよ。

そしたら、あの姉ちゃん何て言ったと思う?

「夫は危険な人なのかもしれない(キリッ)

か…か…かもしれない………?「かもしれない」なの……?

「夫は危険な人物である。自分と息子はこういった経緯でこういった被害に遭ってきた。こういったことも試みたがダメだった。こういう理由で公的機関にも頼ることができなかった。したがって、偽装死という一見突拍子もない方法でしか息子と自分を守ることができないのだ」

みたいなの……ないの………!?!?!?

ウチら視聴者は回想シーンで見てる部分もあるから100譲って想像力でカバーしてあげられる面もなくはないけど、それにしてもよく見て!!!?ちゃんと見てあげて!!!!それ聞いた自分の弟の顔!!!!

やっと9話の内容に入ります

もちろん、我々部外者が愛生を責めることなんてできない。
警察は何かあってからじゃなきゃ動いてくれない。行政に頼るには膨大な手続きや時間がかかる。なにより、地元で権力を持つ夫の会社の力が働けば、かえってどんな目に遭うかわからない。そういうことなんでしょ?

でもさ、相手を刺激しないように穏便に事を運ぶのも一つの手なのはわかるけど、文字通り死ぬほど大事になってんのよ偽装死のせいで!!

刺激しないようにどころか、全国ニュースレベルじゃん。被害者ヅラしてインタビューとか答えさせちゃってる状態じゃん。超刺激的な環境じゃん。祥吾(向井理)のフラストレーションとんでもないことになってるよ!!!!!!!!

次回予告によってすでに、そんなフラとん旦那ムカイリに連れ戻されたこと自体は把握していたはずだった。まあそうなるよな、とも考えていた。

ただし、この時点で私はまだ誤解してしまっていたのである。「メタ的に見ればあのセリフは我々視聴者を焦らすためであって、きっといよいよ今回の9話で核心に迫るのであろう」と。

そして、その時は訪れた。

「新しく人生をやり直したほうがお互いの為になると思ったの」とフラとん旦那に語る愛生。うんうん。

「大切な家族も増えて、大事なあなたを責めたり訴えようとは思わなかった」ん…?うん。

「偽装死を選んだのは最後に残った愛だったんだと思う」ぅ………え?

ん???????

なんか、「嘘(偽装死)はとびきりの愛なんだよ☆(推しの子)」みたいな話してる……?

大切なものを守るための優先順位

何度も言うけど、日常的に暴力を受けて追い詰められていた状態の愛生の精神状況を当事者以外が断定することなんて絶対にできない。それが、かつて愛し愛された、心を通わせた相手からの行為ならなおさら。

そんな非日常の状況を、何をどうやって解決するべきかなんて正解はどこにもない。こうすれば良かった、ああすれば良かったって安全なところから口を出すのは簡単だ。実際の対応としても「これがベストアンサーだ」と覚悟を決めて、答えがない答えを自分で選ぶしかないはずだ。

だから、愛生は息子であるライオンがいちばん大事なのかなって思ってた。
だから戸籍変更や偽装死だなんて、そんなとんでもない行動してまで守りたいのかなって理解してあげたかった。

だけどさ、「本当にそれしかなかった?」ってずっと考えてた。「それしかなかったんだね」って納得するための展開を見守っていた。

あったじゃん。責めたり訴えたりする選択肢。自分がやりたくなかっただけなんじゃん。

息子に名前を、人生を変えさせて、嘘をつかせてまで守りたかったもの。それは、息子自身じゃなくて、旦那への愛情だったって言うの………?

こっちにも書いたけど、ラスト・フレンズのソウスケをものすごく思い出した

自分を救うのは自分の意志の力だけ

私の大好きな映画の台詞に「Nobody can help you better than you.」というものがある。

たしか字幕だと「自分を救えるのは自分だけ」とあった気がするけど、もっと直接的な意味を推測するなら「あなた以上にあなたの助けになれる人はいない」というニュアンスである。

もし愛生が自分の友人だったなら。余計に苦しめるかもしれないという無駄な優しさや遠慮のフィルターを一度外して良いのなら。かけたい言葉が本当はいくつかある。

1つ目は、やっぱり優先順位を決めてほしい。じゃないと、誰もあなたを助けてあげられないから。洸人と柚留木が合鍵まで作って様子を見に行ったのに、すごすごと帰らなければいけなくなっちゃうのはそういうこと。DVや虐待について周囲はきちんと「介入する」べきだけど、スタンダードな生き方をしていてそんな腹が決まっている人間はまずいない。

この方のツイートが最高にこの温度差を表していると思う

2つ目は、独りだと思わないでほしい。
だって、一人で解決できるわけなかったんだから。ちゃんと人の手や知恵を借りなければいけない場面だったんだから。実際、何年も会ってない兄弟に子供を預けたんだし。だったら最初に相談しようよ。
どれだけの人が、あなたの力になりたいと実際に動いてくれたと思う?面識のないはずのたくさんの人も、口だけではなく時間を割いて覚悟を持って行動してくれた。 

3つ目は、大切にしてくれる人たちをないがしろにしないこと。
離婚の話をしたいとか、最後に穏やかな思い出を作りたいっていう提案を受け入れる気持ちは痛いほどわかる。たぶん、私もそうするんじゃないかなと思う。
だけど、あなたたち親子のためにあれだけ尽力してくれた柚留木がボコられてるのを見て平気でいてはだめ。自分を含めてだれかが暴力を受けることに慣れちゃだめ。せめて、平穏な話し合いができるはずないって気づくべきだった。気づけないんじゃなくて、気づきたくなかったんだよね。自分を大切にしてくれる人じゃなくて、自分を大切にしてくれない旦那のほうが大事だったんだから。

閉じた問題にしないために

離婚届もさ〜〜〜、なんで出す前に弁護士さんに相談しなかったのよ。
争わなくて良いから、事前に内容を精査してもらおうよ。慰謝料とか養育費の話だってあるでしょ。旦那の社会的な信用云々言ってるけど、あの人ら守秘義務あるんだから。地元だとそれでも噂になりそうとか言うんだったら、東京まで足を運んでバリバリやってるベテラン弁護士に頼めばいい。アスレチックに行くのは、法律事務所の後!!!!!!

だから、ムカイリも「ピッピ!ハイここ消しました!親権やっぱ譲りませんアッカンベ〜!」みたくなっちゃったでしょうが。

……と、ここまで好き放題私の意見を言ってきたけど、おそらく現実社会ではここまで口を出してしまうとDV被害者には逃げられるし嫌われる。だから、洸人みたいな人は苦しいのだ。できるだけ平穏に和やかに、味方としての安心感を与えたいから。事態が把握できる距離感にいてあげたいから。

だから、玄関のドアを超えられない。言い返せない。DVを「家の中の問題」にするしかなくなってしまう。

その結果、顔が真っ赤に腫れるまで殴られて、口を塞がれて拘束されて監禁された彼女のことを私たちはどう受け止めればいいんだろう。

たぶん、それを考えるために社会はあるのだ。


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