見出し画像

疲労の内部構造を知り克服する

 肉体的、精神的、神経的と疲労は分類されていますが、疲労の原因は自律神経の中枢である脳にありすべてが同じ内部構造になってます。運動後の息の上がった状態や身体の張りによって疲れや怠さを感じると思われがちですが、肉体的疲労は運動による乳酸の蓄積や内臓や筋肉の機能低下です。

 疲労の原因ですが、それは活性酸素です。ヒトの身体は細胞で構成されています。細胞は酸素を大量に消費してエネルギーをつくり出し、そのエネルギーを使って活動をします。エネルギーを作りだす過程で生成された活性酸素が細胞を酸化させ、錆びた細胞は本来の機能を果たせなくなります。そしてその連続によって身体の組織全体の機能をも低下させることになるのです。

 運動においてですが、コンタクトを伴うものやウェイトリフティングのような競技では筋肉がつぶれ、その過程で逸脱酸素が出てきて筋肉疲労が身体にあらわれます。しかし実際にはスポーツの99%が筋肉ではなく身体疲労であり自律神経が疲れてしまいます。

 運動した際にもっとも変化が激しいのは脈拍・呼吸・体温調節です。これらを統制しているのが脳の自律神経になります。その中枢はピンポン玉ほどの大きさですがそこが全てをコントロールしています。

 自律神経は、脈拍や血圧、体温を調節することで身体が常に安定した状態を保とうとするのをミリ秒単位で制御しています。走ったり階段を上ったりすると自律神経の中枢では、心拍を上げ、呼吸を速め、血圧を上げ、汗をかいて体温調節を行い、常に身体にとって一番良い状況を保とうとフル回転で働いているのです。

 例えば、夏や冬の時期と気候の良い時期に走るのでは、同じ運動量でも疲労度は大きく異なります。この差は体温調節のためにエネルギーを使うことにより生じます。気温の高い夏や低い冬では体温を調節するためにより一層自律神経が働かなければなりません。すなわち気温差によって起こる疲労は、運動量ではなく自律神経の働き具合によるものなのです。

 疲れにくい身体をつくるために本当に強化しなければならないのは自律神経の中枢です。自律神経の強い人は身体の恒常性(ホメオスタシス)を維持することに長けており疲労に強く持久力がある人といえます。裏を返すと持久力や忍耐を必要とする人ほど慢性的な疲労を自覚するケースが多いようです。

疲労を解決・克服する方法

 
 「自律神経を疲れさせないようにする」か「疲れた自律神経を迅速に回復させる」の2つになります。疲れてしまった自律神経を回復させるための手段としては『睡眠』しかなく日中にできることは何もないようです。ですが、自律神経を疲れさせないためにできることはあります。食事や入浴、空調の使い方を工夫することによって自律神経をいたわることが可能です。

 まず食事になりますが、自律神経は脳内にあるため条件として脳に作用する物質であることが大前提です。また、脳には血液脳関門(血液と脳の組織液との間の物質交換を制限する機構)があるため脳に届く物質でなければいけません。そして、活性酸素が細胞に影響を及ぼし疲労の原因になっているため、抗酸化物質が自律神経細胞に作用することも重要です。活性酸素は細胞を錆びさせるとすぐに死んでしまいますが、自律神経を使っている間は絶え間なく出現しています。そのため連続した運動に耐えうる持続的に抗酸化能力を発揮し続けられる物質であることが鍵を握ります。

 それらの条件がそろう物質は限られており、なかでも効果的なものは【イミダペプチド】という成分です。これは鶏胸肉やカツオ、マグロなどの回遊魚に含まれる物質です。渡り鳥が米国からニュージーランドまで11000kmもの距離を休むことなく飛び続けられるのはなぜかを調べた研究によって、羽の付け根の筋肉にイミダペプチドが豊富にあることがわかりました。寝ずに泳ぎ続ける回遊魚のカツオ、マグロでは尾ひれの近くにイミダペプチド合成酸素が豊富にあり持続的に再合成されています。イミダペプチドは細胞の錆を防いでくれる成分なのです。
 
 そしてヒトにも、自律神経の細胞にイミダペプチド合成酸素が豊富にあり、そこに再合成するための材料を送り込めばいいわけです。その材料として適しているのは、鶏胸肉やカツオ、マグロでありこれらを食べると体内で一度分解されてアミノ酸となって脳に届きます。そして持続的に抗酸化力を発揮します。できるだけ疲れる前に摂取するのが効果的です。

 イミダペプチドの働きは抗酸化能力自体というよりも、持続力の面でほかの抗酸化物質に比べて明らかに優れているのが強みです。抗酸化物質として知られているポルフェノールやアントシアニンは、体内から95%が2時間ほどで消え効果が失われます。

 
 入浴方法も重要です。お風呂に入ると疲れが取れスッキリすると感じますが、実は誤りで疲れている時ほど入浴を避けなければなりません。湯船につかる場合には全身浴で汗をかくことを避けぬるま湯で半身浴にとどめシャワーで汗を流す程度にした方が良いでしょう。温泉に入るとぐっすり眠れるのは発汗によって疲れてしまうからです。運動後のサウナはもってのほかです。真夏の夜にエアコンをつけず、汗を流しながら寝ているのも自律神経を酷使していることになります。

 汗をかくことは自律神経が体温を下げようと働いており、つまりは運動していることと同じ状態となります。運動後に長時間入浴やサウナに入り汗をかけば、身体はオーバーワークの状態となり翌日に疲れを残してしまいます。体温の上下は自律神経の敵対行為となりますので、できるだけ避けて欲しいと思います。トップアスリートの中には湯船に浸からないという人は多く、あるメジャーリーガーは登板した日は入浴を控えるそうです。

自律神経の疲労具合を見極める

 疲れているかの判断は自身で見極めるのは難しいものがあります。ゲームやアニメが好きな人は寝ずに朝まで長時間でも全く平気です。旅行やに出掛けている間はあまり感じないけれど、帰ってくるとドッと疲れが出るという経験はあると思います。実際は疲れていても楽しかったり、緊張状態にあったり、意欲や達成感が強かったりすると疲労は感じにくいのです。
 
 アスリートの場合、大会前は誰もがそのような状態ですから調子がいいと思ってしまいがちです。もっと練習すればいい成績が出せるのではないかとの思考に行きつきオーバーワークになってしまいます。また、責任感や意気込みの強さが関係して疲労を感じにくくなることもあります。疲労度の高い状態が続けばいずれはパフォーマンスが落ちてきます。

 若い方は代替補完能力が高くパフォーマンスに影響が出てくるまでにはかなりのタイムラグがあります。つまり、無理が効くため自身の疲労に気づくのが遅れます。あるときに一気に症状が出る恐れが大きくなるので注意が必要です。

 引退を控えた大会、大きなプロジェクト、年度締めの後には日常でもやる気がいまいち出ないという状態になるのは、これらの疲労要因が重なり燃え尽き症候群(バーンアウト)の症状があらわれているのだといえます。

 自律神経のポテンシャルは人それぞれでかなり差があり、素質よりも大きな要素なのが年齢です。20歳と40歳の筋力を比較しても2〜3割ほどの低下が見られる程度ですが、自律神経機能は半分以下になります。加齢に伴って老化が進むのは身体能力よりも自律神経なのです。もちろん個人差はありますが、多くのアスリートが年齢とともに引退をするのは自律神経機能の保持にダメージがあるからです。

 調子が上がっている時こそ疲労はピークにある危険性がありますので注意が必要です。睡眠をしっかりとり、食事を意識し、空調などで適切な環境を整えるなどの自律神経をいたわる方法はありますが、自身へ時間を割き、自身へ目を向けて日々の心身の調子を見極めていくことが大切だと思います。

いいなと思ったら応援しよう!

中山 建(Takeru Nakayama)
いただいたサポートは挑戦するアスリートへの活動支援に使わせて頂きます。