豊島美術館の「母型」
表紙画像引用: https://benesse-artsite.jp/art/teshima-artmuseum.html
今回は香川県小豆郡土庄町にある2010年10月17日に開館した、豊島美術館の中にある、内藤礼さんの作品「母型」について記録していく。
この作品は40m×60m、高さ4.5mの巨大なドーム状のコンクリート建築となっている。すなわち、その中の空間自体が内藤礼さんの作品となっているのである。
空間といっても、そこには仕切りや窓ガラス等はなく、雨風がそのまま入ってくる野外的な空間である。
光や風などの自然現象の影響を受けて、作品の表情が刻々と変わるものとなっている。
驚くべきはこの床面。
目を落とすと、水滴が動いている。
コンクリートの床に設けられた発水口は186個。そこから地下水が断続的に湧き上がり、水滴がある一定の大きさを超えると、ほんの少し傾きをもった撥水処理された床の上を軽やかに進む。その水は最後、水たまりを構成したり、別の穴へと吸い込まれて行くと言った仕組みだ。
まるで水滴が生きているかのようだ。
この天井に大きく開いた空間と相まって、建築とアートと環境の一体化が巧妙に表現されている。
また自分がこの空間の構造について調べていく上で気になったのが、
最高天井高さが4.5mの低いシェル構造が250mmの壁厚のコンクリートで支えられている。
という点だ。
深く調べていく内に「アンボンド工法」というものを用いているという事がわかった。
簡単に言うと、コンクリートの躯体を打つ前にワイヤーで引っ張り力を与え、その上からコンクリート打設することで、引っ張りに力によって空間を持たせているとの事。非常に勉強になる。これにより水滴のようなシェル構造が出来上がっているのである。
また「豊島」に美術館を建設するにあたり、
・敷地内の植栽は全て豊島内に自生する雑草群で構成されている
・離島にある為、島の貴重な資源とされる上水を使わず、井戸を掘って汲み上げた天然水で作品の中の水滴を表現している。
といった、島という環境との一体化・共生について、これまでかという位に考えられているなと感じた。
自分もこれからの設計では今まで以上にその土地について深く考え設計していきたいと思う。