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【読書】「死神の精度」伊坂幸太郎

伊坂幸太郎はだいぶ以前に1冊手に取ったが、私には合わないな、と全く読んでこなかった作家さん。
「死神の精度」は読書会に参加した際に、お若い方が、ついでに、くらいで紹介なさっていた本。

死神が調査対象者の死の可否の判断を下すお話。

面白かった、すこぶる面白かった。伊坂幸太郎の食わず嫌いを解消してくれるくらい面白かった。
6つの短篇で構成されていて、それぞれの主人公に死神が死の可否の判断をするわけだが、
『その判断は残念』と思いつつそんな「死に方」もあるかな、と納得したり、
『その判断、納得だわ、だってあなた(<死神のこと)、音楽好きだものね』と、当然の帰着を納得したり。
先に登場した人物のエピソードが後のお話で生かされたりと、これって伊坂あるあるなんでしょうね。

6つある短編集で私は「旅路を死神」が一番よかった。
主人公は、人殺しのどうしようもない奴なんだけど、最後の最後にぐっと来た。

死神の頓珍漢な受け答えも実にいい。

煩わしいくらいに、高揚と落胆を繰り返し、無我夢中なのか五里霧中なのかも分からなくなる。病とも症候群ともつかないが、とにかく面倒くさい状況に、溺れそうになっている。「それはあれか」と記憶を引っくり返し、「かたおもい、というやつか」と言ってみる。
 萩原は一瞬、面食らったがすぐに唇を震わせて、笑った。「千葉さん、よく真面目な顔でそんなこと言えますね」
「恥ずかしい言葉なのかこれは」
「いい大人が口にするには、度胸が」
「悪い大人ならいいというわけか」
「いや、そういうわけでも」萩原はそこでまた笑う。

恋愛で死神


一番好きだった箇所はここ、

「お袋や深津が本当のことを言ってくれりゃ、俺は無駄に人を殺さずに済んだかもしれねえじゃねえか。違う人生だったかもしれねえだろう。ふざけんなよ」
 私は、人のやることはたいがい無駄なものだと思っているので、それについては答えなかった。ただ、森岡が気づいていないようだったので、口に出した。
「そういう下らないすれ違いは、人間の得意とするところじゃないか」

旅路を死神

はい!私の人生は「下らないすれ違い」だらけでした!きっと、これからもそう( *´艸`)。

この回の読書会に参加しなかったら出会わなかった嬉しい副産物。これだから読書会好きなんだ。

これだけ売れている作家さんだと、文庫本もたくさんある。さ、次は何を読もうか。

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