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【美術展】物、ものを呼ぶ/出光美術館

出光美術館を初めて訪れたのは、20代。もう四半世紀も前!
出光美術館は、入っている帝劇ビルの建替計画に伴い、2025年1月から休館な上に、再開館の時期や休館中の活動も今のところ未定。
DIC川村美術館も2025年1月下旬から休館することとあわせて、美術品鑑賞がお好きな方にとっては残念なこと。

ロビーからの皇居の眺め

人生2度目の出光美術館、会期早めにいってゆっくり楽しみたいと思って、学芸員によるギャラリートークの初回の日、2024年9月12日(木)に行ってきた。展覧会は早めが成功セオリーだと思っていたら、行って、びっくり、結構な人だかり。ギャラリートークの日はいつもこうなんだろうか。。。。

印章に残った作品


★「蔬菜群虫図そさいぐんちゅうず」鈴木其一きいつ 江戸時代

江戸時代のボタニカルアート!描いていた時の画家の心の有り様なんて、もちろん分からないけど、きっと楽しかっただろうな、と思ってしまう、リズミカルな感じ。

「蔬菜群虫図」部分


★「風神雷神図屏風」酒井抱一ほういつ 江戸時代

俵屋宗達の国宝「風神雷神図屏風」(京都・建仁寺蔵)が原案。尾形光琳が宗達本を模写し、さらに抱一が光琳本を模写。
恐ろしい異形の神が、軽快な神に描かれている、そのギャップに惹かれるのだろう。
尾形光琳の風神雷神図屏風は、文化庁のオンラインで見られる。


★「鳥獣花木かぼく図屏風」伊藤若冲 江戸時代

2020年のNew York Timesの記事だが、心震える良い記事だった。

「鳥獣花木図は、うれしいときも悲しいときも私どものそばにあり、心をともにしてきました。言葉を必要としない世界、ひとりでいても寂しくならない楽しい世界、あなたはひとりぼっちではないですよ、と語りかけてくれる屛風です」

出光美術館にこの絵を売却したエツコ&ジョー・プライス夫妻、エツコ夫人談
https://www.tjapan.jp/art/17396489
画像は「Then New York Times Style Magazine : Japna」から

若冲は、実際にはこれらの動物たちの実物を、目にしたわけではないだろう。(現存していないであろう)若冲が当時目にした絵などからの、想像の産物。若冲の憧れや、描くことが楽しかった?!ことが伝わってくる素晴らしい絵だった。描くことが楽しかった?なんて、どうして言える、ですが、だって、この絵の描き方「桝目ますめ描き」は、約1cmの升目を無数に描き、その中を同色の濃淡か別色の2色を使って塗っていくというもの。そんな気の遠くなる手法の絵、本人が楽しくなかったら、とても描けないんじゃなかと。


★「十二ヵ月花鳥図貼付屏風」酒井抱一 江戸時代

出光美術館は先にこの屏風の方を所蔵していて、その後、アメリカのプライス夫妻から、図様ずようがそっくりな掛軸を購入する機会を得た。
まさに、「物がものを呼んだ」!
通路を挟んで左に「屏風」が右に「掛軸」が展示されている。
10月の三羽の目白の可愛さと言ったら。この部分を拡大して絵葉書にして欲しい~。

★「十二ヵ月花鳥図」酒井抱一 江戸時代

こちらが、「掛軸」バージョン。
8月の芙蓉の白、なでしこの赤がとても印象的だった。

左が9月、右が10月
https://www.tjapan.jp/art/17396489?page=6

「江戸絵画は日本美術史の中でも大変特殊なもので、日本が外からの影響を受けなかった時期の純日本的な絵画です。この時代の絵画の構図は、無駄な線が省かれ、余白の美しさが特徴です。日本の文化は足し算ではなく引き算で、無駄はすべて省かれます。これは神道の精神にも通じるものだと思います。若冲の絵は、世界で一番完璧な絵と考えております。写真的な絵や、ユーモラスで心が温まるような墨絵。そのテクニックは類を見ず、人間の手でこのような絵が描けるのか、と驚き以外の言葉が見つかりません」

Then New York Times Style Magazine : Japnaの記事からエツコ・プライス談


★国宝「伴大納言ばんだいなごん絵巻」平安時代

抱一も若冲も飽かず見ていることができるが、激しく心動かされたのがこの絵巻。四大絵巻の一つである、この「伴大納言絵巻」は応天門放火にまつわる伴大納言の失脚事件の絵巻。
四大絵巻:「源氏物語絵巻」「伴大納言絵巻」「信貴山縁起しぎさんえんぎ」「鳥獣人物戯画」の4つを指し、いずれも平安時代末の作と考えられている。

この絵巻の何にそんなにも心を鷲づかみにされたかというと、躍動感あふれる火事場と人の動きと、一番が「人の表情」。あの時代、やんごとなき人は感情をありのままにさらけ出すのははしたないこと、と考えられてきた。
それを抑制し、隠すことにこそ美がある、と。それが、彼らの顔を描く時の表現法「引目鉤鼻ひきめかぎばな」に繋がっているんじゃないかと私は思っている。

表情が「引目鉤鼻」で描かれている。国宝「源氏物語絵巻 宿木二」復元模写
匂宮(光源氏の孫)と六君(こちらも光源氏の孫)の「三日夜みかよ」(婚姻三日目の夜)の翌日の情景。

下々になると表情も多彩に描かれていて、そのvividさがたまらなく楽しかった。

風上側の会昌門かいしょうもん前で、火事を高みの見物する官人たち

平安時代の絵画は剥落や褪色が多く、一体何が描かれてる?な物が多い(源氏絵巻とか)。伴大納言絵巻も剥落等、甚だしかったが、同じ国宝でも源氏物語絵巻より、見ていてホント楽しかった。
国宝「源氏絵巻」は当時の通産省の力も借りて、科学的解析が行われたり、復元模写が連綿と行われてきた。願わくは、この「伴大納言絵巻」も復元模写してくれないだろうか。

伴大納言絵巻が面白過ぎて小冊子(510円)と絵葉書を購入。


★重要文化財「四季日待ひまち図巻」英一蝶はなぶさいっちょう 江戸時代

vividさで負けていなかったのが、この絵。日待とは、前夜から身を清めながら朝日を待つ神事。正月、5月、9月の順に、歌舞や人形芝居などに興じながら夜を明かす人々の姿。この色彩豊かで、楽しげな絵を一蝶が描いたのが、三宅島に流刑されていたとき!島流しですよ、島流し。そんなどん底の時に、よくぞこのような朗らかで楽しげな絵が描けた、と俄然この絵師に興味が沸いてしまった。
奇しくも、サントリー美術館で英一蝶の回顧展が開催されている(2024年9月18日(水)~11月10日(日))。行かねば。

ぐるっとパス2024で3周目、行ったよ
1. 山種美術館 割引額200円(割引前の金額1,400円)
2. 出光美術館 割引額200円(割引前の金額1,200円)

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