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【美術展】平安文学、いとをかし/静嘉堂文庫美術館(東京都千代田区)

「源氏物語」を読むと度々出てくる、光源氏や公達たちによる舞。どの様な楽曲や舞かすごく興味があったが、想像するしかなかった。今回、静嘉堂文庫美術館で2024年11月16日(土)~2025年1月13日(月)に開催されている「平安文学、いとをかし」で「源氏物語」の音楽シーンを再現する、雅楽のコンサートがあった。

雅楽奏者「怜楽舎れいがくしゃ」の皆さん
2024年11月24日(日)

★源氏物語に綴られた音楽

全6曲。「源氏物語」中のその楽曲が現れる箇所を引用してのパンフレットが用意されていた。
「青海波」
第7帖「紅葉賀」

源氏の中将は、青海波をぞ舞ひたまひける。

★高麗楽「長保楽破ちょうぼうらくのは
第7帖「紅葉賀」

|保曾呂俱世利《ほそろぐせり》といふものは名は憎けれど、おもしろう吹きすましたまへるに、掻き合はせまだ若けれど、

★催馬楽「青柳」
第24帖「胡蝶」

兵部卿宮、青柳折り返しおもしろくうたひたまふ。
第34帖「若紫上」
夜の更け行くままに、物の調べども、なつかしく変はりて、「青柳」遊びたまふほど、

催馬楽:平安時代、各地の民謡を雅楽ふうに編曲し、管絃の遊びなどの中で歌っていた宮廷歌謡。

★「皇麞急おうじょうのきゅう
第24帖「胡蝶」

暮れかかるほどに、「皇麞おうじょう」といふ楽、いとおもしろく聞こゆるに、

秋風楽しゅうふうらく
第21帖「少女」

秋風楽」に掻き合はせて、唱歌したまへる声いとおもしければ、

舞楽「春鶯囀入破しゅんのうでんじゅは
第8帖「花宴」

春の鶯の囀るといふ舞いとおもしろく見ゆるに、源氏の御紅葉の賀のをり思し出でられて、

パンフレットに度々出てきた言葉「中世以降廃絶しており」、「舞は廃絶」、「今では廃絶曲となって」、に雅楽の火をともし続けるのは並大抵のことではないのだな、と思った。
この日のコンサートは、展示品の鑑賞時間付きで6,000円。私は「舞」も期待していたが、舞があったのは最後の曲のみ。ちょっと残念だったが、源氏物語の世界を音楽から確かに感じることはできた。

展示品のいつくかをご紹介。国宝「曜変天目ようへんてんもく」以外は撮影できたのは、有難い。
作品の解説もクスっと笑えるものが多く、それも楽しかった。

★后の位より「源氏物語」!「更科日記」

「更科日記」|燕雀堂版 1704(元禄17)年・江戸時代
『更科日記』唯一の絵入版本。

ガイドに従って実物を見てみると、右から三行目に「源氏を一乃」と読める♪。この部分は今で言うところの「大人買いした漫画を一気読み」や、「ドラマ一気見でネトフリ廃人」なんじゃないだろうか( *´艸`)。

この部分は「皇居三の丸尚蔵館」での国宝「更科日記」の展示の際でも、展示されていた。ことほど左様に有名な箇所。


★合戦絵巻の傑作 重要文化財「平治物語絵巻 信西巻しんぜいのまき」13世紀・鎌倉時代

平治元年(1159)の平治の乱を題材にした軍記物語「平治物語」。

この絵を見て、国宝「伴大納言絵巻」を思い出した。

国宝「伴大納言絵巻」部分 12世紀。
赤い門の雰囲気や群れだった人が駆けるさまとか。
「藤原信頼のぶよりと源義朝よしともに襲撃された信西が逃亡の末自害、そして首が獄門にかけられるまでを描いている」

へぇ、「首」ね、と思ってみていたら、あら、ほんとちゃんと首が晒されている場面が。

★継子いじめ譚の代表作 重要文化財「住吉物語絵巻」14世紀・鎌倉時代

修理後初公開。
ここでも「垣間見」( *´艸`)。
そして、この場面で私がこの人面白いやん!と目が釘付けになったのが、左端の白地装束の人。
まるで、「毎度毎度、垣間見に付き合わされて、シンドイなぁ。夜這いでもなんでもかけて正面突破せいや。暇~。はよ、帰りたい」とでも呟いて、指のささくれでもむしっているみたい(;^ω^)。

重要文化財になるような本物、一級品。だからこそ、こんなオモシロ~な、場面を見つけると、余計愛おしくなる!(^^)!


★「住吉物語絵巻」16~17世紀・桃山~江戸時代

第8段 姫君と侍従じじゅう出奔しゅっぽん を嘆き悲しむ中納言を、中の君と三の君が慰める。
珍しいことに、絵に人物名が記されている。
上の場面にも描かれている、名もなき赤い装束の子の困った、みたいな表情が可愛らしい~。

この場面では、私的にはあなたが主役よ!


★初公開「紫式部図」土佐光起 17世紀・江戸時代

月を墨の隈取くまどりで表してある。雲間に浮かび上がる月。ぼかしや濃淡によって、形を表現する。なんとも奥ゆかしい、いいなぁ。
「そうだ、『源氏物語』を書こう」
キャプションが秀逸だった。


★「源氏物語図屏風」住吉具慶ぐけい 17世紀・江戸時代 六曲一双

右隻「若紫」、「末摘花」、「葵」
第5帖「若紫」
北山での病の療養を終えた光源氏は、源氏を迎えに来た公達らとともに、桜の下で小宴を催す。
第6帖「末摘花」
光源氏は、末摘花邸に忍んでいた頭中将とバッタリ出くわす。2人はそのまま牛車に同乗し、笛を吹きながら左大臣(頭中将の父)邸に向かう。

「末摘花」の場面で、光源氏とその友人・頭中将が牛車に乗っては初めて見たな。この場面が絵画化されるのもいとをかし

第9帖「葵」
紫の君の髪が伸びたことに気づいた光源氏は、手ずからその髪の裾を切りそろえる。

光源氏が、紫の君の髪を切り揃える場面って、重要な場面というか、印象深い場面なのだがとあらためて思った。

左隻「澪標」、「薄雲」、「少女おとめ
第14帖「澪標」
光源氏は、願ほどきのため住吉社に参詣する。偶然船で参詣に訪れていた明石の君は、源氏の行列の華美な様子に身分の差を感じ引き返す。

この場面では必ず描かれる「明石の君が乗る船」。この絵では右上のそれ。そんなぁ、あなたそんな引け目を感じなくとも、といつもこの絵を見ると思ってしまう。

第19帖「薄雲」
明石の君は光源氏との間に生まれた幼い君と須磨から大揠おおいの山荘に移る。雪の日、明石の君と姫の乳母は行く末を案じた和歌を詠み交わす。

「薄雲」では、「源氏の指貫さしぬきの裾に、幼い姫君がまとわりつく」の場面を見かけたことがあるが、明石の君と乳母が和歌を詠み交わす、の場面は初めて。


第21帖「少女」
光源氏は、五節ごせちの舞姫を務める惟光これみつの娘の介添の童女を選び出すため、少女たちを二条院に集め、童女わらわ御覧ごらんの予行演習をさせる。

第21帖の「少女」がそもそも絵画化されるはあまりお目にかかったことがなく、この場面もキャプションによると『「少女」で童女の身だしなみを整える人を描くのは他の源氏絵に例がなく』とある。それも五節の舞がらみは珍しいだろう。
「光る君へ」では、五節の舞はこんな風にキラキラ感満載だった。

https://www.nhk.jp/p/hikarukimie/ts/1YM111N6KW/blog/bl/ppzGkv7kAZ/bp/p5rNYxEe45/

★俵屋宗達による源氏絵の最高傑作 国宝「源氏物語関屋澪標みおつくし図屏風」俵屋宗達 1631(寛永8)年・江戸時代

右隻に「関屋」、左に「澪標」

主人公の姿を明確に描かず、牛車と舟という乗り物で暗示。「関屋」の山や「澪標」の太鼓橋と浜松など、意匠的な造形表現を大胆に配した画面構成に宗達の優れた感性が表れている。宗達画の魅力を存分に伝える傑作。

静嘉堂文庫美術館
右隻。牛車から見える装束のみで「光源氏」の存在を暗示。
右隻の落款印章「法橋ほっきょう宗達」と「対青軒たいせいけん


右隻の「澪標」でも光源氏の姿そのものは描かれず、牛車からのぞかせる装束によって「ここにいるよ!」を表わしている。左にある太鼓橋は、どうやってその上を歩けるん?なくらい意匠的。
「明石の君」一行が乗っている舟。
左隻の落款印章「法橋ほっきょう宗達」と「対青軒たいせいけん

最近、落款を見るのが楽しい。絵師の確かな存在。

★嫁入道具と言えば「源氏」でしょ 「源氏物語蒔絵源氏箪笥」18~19世紀・江戸時代

「源氏物語」全54冊子が納められている蒔絵箪笥。外側には「空蝉」、「若紫」、「初音」、「柏木」の場面。

嫁入道具と言えば「源氏」でしょ、には激しく同意。この1年、源氏絵の推し活( *´艸`)をして、へぇ~だったのが、源氏が嫁入道具に頻々と用いられること。正妻と上手くいかないとか、生霊の存在とか、政敵の子どもにちょっかいかけるとか、もうたくさん「婚礼」に向かない場面があるのに、ここまで嫁入に使わる所以、あり過ぎて語っていたら日が暮れる。


★江戸時代のベストセラー 「絵入源氏物語」1660(万治3)年 江戸時代

慶安3(1650)年に蒔絵師・山本春生により、『源氏物語』の本文全文をおさめた最初の版本「絵入源氏物語」が出版されると、増刷を繰り返すほどの人気を博した。本書はその人気を受けて万治3(1660)年に刊行された、「絵入源氏物語」。

静嘉堂文庫美術館


★「色絵源氏香透冠形すかしかんむりがた香炉」18世紀・江戸時代

パッと見「椅子?」と思ったら、「冠」ね!。言われてみれば、あの時代の人、こんな形の被っている。
背面に源氏香図の「花散里」が透かし彫りされている。

確かにこれは「花散里」だわ。自分で自分の記事を読み返す( *´艸`)。


たなごころの中に宇宙を 国宝「曜変天目(稲葉天目)」12~13世紀・南宋時代

パンフレットから

完全に近い姿で現存する曜変天目は世界に3碗のみ。大徳寺龍光院りょうこういん(京都)、藤田美術館(大阪)、そして静嘉堂(東京)。
両手を合わせたその中に、すっぽり収まるほどの大きさ。「青から藍に輝く光彩」は正に、美しい夜空と星々。てのひらの中の宇宙。
国宝、と思ってみるから?、それでもいいじゃないか。
心震えるほど美しかった。

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