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白隠禅師のマインドフルネス法 その2「輭酥(なんそ)の法」

1 「輭酥(なんそ)の法」って何?

今回は、白隠禅師の「輭酥(なんそ)の法」について深堀してみましょう。
「輭酥(なんそ)の法」は、白隠禅師の著作『遠羅天釜』全三巻の巻之中「遠方の病僧に送りし書」に出てきます。

「内観の法」と同じく、「輭酥(なんそ)の法」も、丹田に気を集中させ、ゆっくり深く腹式呼吸します。ただその際、「輭酥の法」では、ドロドロと溶けるチーズ・バターを想像します。

「酥」(そ)は牛や羊の乳を発行させて煮詰めたもの、今でいうとチーズやバターのことで、それをやわらかくした食べ物が「輭酥」です。

チーズ・バターを頭に置いて、それが徐々に溶けていき、それが上半身から内臓、そして足の裏まで体内を温めるようにイメージします。

より詳しく参照したい方は、コチラをおススメします👇


2「輭酥の法」の効能

原文の一行目に「輭酥(なんそ)の法」の効果がはっきりと述べられています。

「虚弱の人に宜し。心気の労波を救ぶ事甚だ妙なり。上昇を引き下げ、腰脚を温め、腸胃を調和し、眼を明かにし、真智を増長し、一切の邪智を除く事大いに効あり。」

簡単にまとめるとこのような効能があります。
・特に身体が虚弱な人によい
・心気の疲労からの回復によい
・熱を抑え、足腰が温かくなり胃腸が良くなり眼もすっきりとする
・邪念が消える

3 輭酥(なんそ)のレシピ

白隠禅師は輭酥のレシピも公開しています。これが、とても禅僧らしくとても面白い発想で表現されています。

輭酥丸一剤を作るにあたって7つの成分を配合します。

(1)諸法実相一斤
「この世に存在するすべては真実のすがたそのものである」という天台宗の中心的教えの一つが諸法実相が600グラム(一斤)。

(2)我法二空各一両
「自己もこの世にあるもののすべても実体はなく、ただ縁起で仮に存在しているだけ」という大乗仏教の核の教えが我法二空であり、それをそれぞれ一両ずつ(38グラムx2)

(3)寂滅現前三両 
寂滅現前とは涅槃寂静のことです。一切皆苦はすべて人間の心が諸法無我や諸行無常といった世の中の法則を忘れたところに生まれるので、それさえわかれば苦しみは消滅する、これが寂滅現前という世界、つまり悟りの境地です。このような安らいだ心の状態を三両。

(4)無欲二両
欲望のない心を二両。

(5)動静不二三両
動いている時も坐禅している時も寝ている時も食べている時も、行住坐臥の全てが禅であるという意味の動静不二を三両。

これは動とか静とか分け隔てることなく、つまり決して一つのことに執着してはならないという禅の基本です。それはあたかも、高速スピンしているコマが止まって見えるようなもので、動と静は二つ別ではなくて一つであるということを意味しています。

(6)糸瓜の皮一分五厘
0.55グラムとほんの少量のヘチマの皮を混ぜます。当時、ヘチマは痰(タン)を切るために使われていました。

(7)放下着一斤
放下とはすべてを手放すという意味で、着はビックリマークのような強調接尾語です。なので、妄想する心を投げ捨てて身軽になった心を600グラム。

この忍辱から搾り取った汁に7つの成分を混ぜて一夜漬けにして、時間をかけて陰干しした後、粉にして、般若の智慧(悟り)で練り上げて鴨の卵ぐらいのサイズに丸く固めれば輭酥丸一剤の完成です。

忍辱とは、ニンニクではなく、仏教が苦しみから解脱するために教える六波羅蜜のうちの一つで、耐え忍ぶ力のことです。

仏教や禅の肝心かなめの教えを成分にして説明しているところは、白隠禅師が如何にユーモアに富んだ禅僧だったかわかりますね。

4 輭酥(なんそ)の法の実践

輭酥(なんそ)を頭の上に乗せます。
初心者の場合は、7つの成分の配合などは考えずに、色や香りがいい鴨の卵ぐらいの輭酥(なんそ)が頭に載っていると考えるだけでよいということです。病人は厚い座布団の上で、半眼となって姿勢を正して坐禅を始めます。

身心が落ち着いてきたら、
「まずは命を長らえるためには気を養うことが最も大事である。気が尽きると命は途絶えてしまう。それはあたかも国民が衰えたら国が亡びるような者である」と心の中で三度繰り返します。

その後、このようにイメージします。
頭の上に置いた鴨の卵の大きさの輭酥(なんそ)が溶けて頭から首にかけて潤し、次第に両肩、両手、胸を流れ、心臓・肺臓・脾臓・肝臓・腎臓を潤し温めていく。その過程で段々悩みや痛みが心と一緒に身体の下の方に水のようにさらさら流れて、全身を潤して、最後に両脚そして足の裏にまで行き渡りそこでとまる。

ここまで出来たら、再度、心で「頭から溶けて最後に足の裏まで身体全体を浸し流れ、両脚が温かくなる現象は、まるで、世界中にある良薬を集めて煎じて風呂に入れて、半身入浴しているのと同じである」と思いを巡らします。

そうすると、心が顕わとなり、鼻には絶妙な香り漂い、 身体全体が軟らかく包まれ、身心が調ってとても快適になります。そう感じると、身体に蓄積された毒が消え去り、胃腸も調子が良くなり、肌につやもでて、気力がとてもみなぎってくる。

これが白隠禅師が残した「輭酥(なんそ)の法」の全容です。

原文は少し長いので、コチラで引用しています。👇

5 輭酥(なんそ)の法で伝えたかった真実

白隠禅師は、最後にこう言います。

輭酥の法こそが、養生の秘訣であり、長生きのコツである。
この法は釈尊が始めて、高祖天台智者大師が実践し、多くの人々を救い、実兄も救った方法であるが、今日この方法を知る人はいない。
輭酥の法は、どれだけ真剣に行ったかによって効く効かないは差が出てくるものだが、怠らずに熱心にやり続ければ長寿を全うできるはずである。

白隠禅師は、輭酥(なんそ)の法によって死に至る病から一生を得たという自信と経験をもとに、白隠禅師に助けを求めてきた病人たちを救ってきたことは事実であると思われます。

皆さんも「輭酥(なんそ)の法」を試してみたらいかがでしょうか。日本で200年以上前から実践されている究極のマインドフルネスの方法です!


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