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津村記久子『現代生活独習ノート』激おも! (毎日読書メモ(361))

津村記久子『現代生活独習ノート』(講談社)を読んだ。めちゃくちゃ面白かった!

初出はすべて文芸誌「群像」、2012年から2021年にかけて。全く連関のない短篇8編。どれもすごく面白い。簡単にまとめてしまうと、「生きにくさ」について色々な角度から書いているのだが、アプローチが作品ごとに全然違って、読んでいてワクワクする。
表題作「現代生活独習ノート」は驚きのSF、自宅で自営の仕事をしている主人公が、年に1回更新される現代生活独習ノートをディープに読みながら、自分の生活に必要なものを費用対コストを考えながら検討しているけなげさ。
録画しておいた「刑事コロンボ」を、リフレッシュ休暇中に消化しようとしていたら別の番組が録画されていて、それを少しずつ見ながら、生きる気力を取り戻していく「レコーダー定置網漁」、台所に蔓延する母の、自分の、娘のルールを、打破しなくてはと激しく自己分析する「台所の停戦」、他者からマウントされる人、する人の関係を定義して、マウントされてきたB群の人が自分のライフをいかに生きやすくするかを模索する「牢名主」はあまりにもリアルで泣きそうになる。仕事で選択し判断することを繰り返していた結果、自分自身の生活で何かを選ぶことに全く意欲を持てなくなった人の「粗食インスタグラム」。唯一別の国を舞台に、安楽椅子探偵に自分の問題を解読してもらうミステリ「フェリシティの面談」、津村記久子節全開の会社員小説「メダカと猫と密室」、津村記久子のゲーマーぶりを披露する、マインクラフトとゲーマー的別世界構築がオタク心をくすぐりまくりの「イン・ザ・シティ」、すべての作品が別々のアプローチで、どれもすごくワクワク読めた。
主人公たちは生きにくさをかかえて、苦しそうなのに、どの物語も、明るい未来を感じさせる終わり方をしているのが、この作品集全体に明るい光を当てている。

章扉の木下晋也のイラスト(それを表紙にも使用)が、押しつけがましくなりすぎずにその物語への導入となっている。表紙だけに出てくるイラストが、更にわたしたちの肩を押してくれている?

一気読みして、深呼吸して、自分を大切にして暮らしていかなくてはね、と思う。

もっともっと津村記久子を読まなくては、と思う。

他に読んだ津村記久子作品 アレグリアとは仕事はできない つまらない住宅地のすべての家 サキの忘れ物

#読書 #読書感想文 #津村記久子 #現代生活独習ノート #木下晋也

#講談社  

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