今村夏子『こちらあみ子』(毎日読書メモ(330))
今村夏子『こちらあみ子』(筑摩書房、後ちくま文庫)。これがデビュー作。三島賞受賞。その後『むらさきのスカートの女』(朝日新聞出版)で芥川賞。寡作だが質の高い作品を送り続けている作家。
表紙が土屋仁応『麒麟』。土屋仁応の彫刻作品については先に読書メモを書いている。
『こちらあみ子』の読書メモはこちら:
あみ子から見える世界は、他の人が見ている世界とはちょっと違うようだが、そのことをあみ子はあまり認識していない。ささいなほつれから、崩壊していった家族。わからないあみ子。でもこうした不幸な行き違いは、色々なところにあるんだと思った。無邪気で、純心で、でも歯がなくなってしまうあみ子。幸福の尺度を考えさせられる。書き下ろし『ピクニック』は、主人公をここまで純心にしなかった分、逆にもっと切ない。(2011年12月)