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毎日読書メモ(57)『王とサーカス』『真実の10メートル手前』(米澤穂信)、ついでに『さよなら妖精』と『パンと野いちご: 戦下のセルビア、食物の記憶』(山崎佳代子)にも言及

米澤穂信『王とサーカス』、そして『真実の10メートル手前』(ともに東京創元社、その後創元推理文庫)の感想掘り起こし。『さよなら妖精』は更に昔に読んだけれど、山崎佳代子『パンと野いちご: 戦下のセルビア、食物の記憶』を読んだあとに再読して、胸にぐっと来た。ちなみに山崎佳代子さんは『さよなら妖精』の監修をされていたのを、再読時に知った。

『王とサーカス』:1991年の『さよなら妖精』から10年、新聞社をやめ、フリー記者となった太刀洗万智は、取材旅行先のカトマンズでネパール王族殺害事件と遭遇し、取材を申し込んだ軍人に、取材して報道することは、外国人にとってただのサーカスのようなものではないかと糾弾される。その軍人が遺体で見つかったのは王族のクーデタと関係あるのか? 殺害状況を、殺害場所を、犯人を万智が追及していくミステリであり、また、報道するとは何かを最後に改めて問いただされる、驚きのラストが待っている。その重さで、書くということについて考えさせられる。(2016年1月)

『真実の10メートル手前』:『王とサーカス』で突然再登場した太刀洗万智の、空白の10年間を、その間に発表された短編等で点々と再現。『蝦蟇倉市事件』収録の、マーヤの兄との蝦蟇倉での謎解き、その他、万智が対峙するさまざまな犯罪や謎。やや若書きで詰めの甘い落ちもあるがどれも独創的でうならされる。そして、万智の筋の通った意固地さ、潔さ、冷静さ。すべてが『さよなら妖精』から始まり、『王とサーカス』に向かっている。(2016年3月)

追記:HenryQuinさんのご指摘により時系列を整理。単行本刊行は『さよなら妖精』が2004年2月、『王とサーカス』が2015年7月、『真実の10メートル手前』が2015年12月で、所収の短編のうち、「真実の10メートル手前」は『王とサーカス』より前の、万智新聞記者時代のエピソード。「正義感」「 恋累心中」「 名を刻む死」「ナイフを失われた思い出の中に」「綱渡りの成功例」は『王とサーカス』以降のフリー記者になってからのエピソード。突然再登場、という表現に違和感があったようですが、わたしは自分が読んだ順での感覚として「突然」という表現をとったけれど空白は10年間ではなく、間に「真実の10メートル手前」があったということになります。

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