柳沢有紀夫『会社を辞めて海外で暮らそう―海外家族移住という選択』(毎日読書メモ(346))
友人でもある柳沢有紀夫君が2005年に出した『会社を辞めて海外で暮らそう―海外家族移住という選択 (クロスカルチャーライブラリー)』(スリーエーネットワーク)の読書メモ(2015年6月)。
『会社を辞めて海外で暮らそう―海外家族移住という選択 』を図書館の棚で見かけ、ぱらぱらとめくってみたりしたので、長く会っていなかった彼が、会社を辞め、オーストラリアで暮らしている、ということは10年近く前から知っていたのだが、自分自身海外に住むことに興味がないため、これまで読もうとは思っていなかった。
柳沢君が一時帰国する際に会うことになり、ちょっと読んでみようかな、と思って、借りてきたが、海外移住願望のないわたしにとっても十分面白い本でした。
わたしは、小学5年生の夏から中学1年生の秋まで、2年3か月位アメリカに住んでいた。
海外で暮らすことなんて何も考えていなかった子どものうちに、父の転勤で否応なく海外暮らしをすることになった結果として、わたしは海外に住んだり留学したりすることに全く興味を持たない人生になってしまった気がする。
なんだか不思議。
結果的に、この僅か2年ちょっとの海外暮らしのなかで会得した半端な英語力で、大学入試を突破し、これまでの職歴の大半で英語を使う仕事を続けて来たのに、英語圏で暮らすことにはまったく興味が持てないのである。
アメリカの暮らしが楽しくなかった訳ではない。多くのカルチャーショックを受け、日本では見られない風景を眺め、多民族国家の多様な人生を受容することを学んだ。
それでもなお、わたしは家の本棚に並んだ日本語の本を読み続け、細々と放映されていた日本語のテレビ放送を食い入るように眺め、渡米2年目から通い始めた土曜日の日本語補習校での人付き合いをむさぼっていた。
僅か2年で帰国することになったのは残念でもあったが、日本に戻れることはとても嬉しかった。
それ以来、旅行以外で海外を訪れたことはないが、ほんとに、旅行よりじっくり海外に滞在することは特に希望しない自分をいつも認識している。
そうした自分にも、この本の中で取り上げられている、日本での仕事をなげうち、海外で新しい仕事を始めた人たちの物語は十分興味深い。
この本はノウハウ本ではないので、移住のプロセスとかは最低限しか書かれていない。日本を出て、海外での暮らしを選んだことで、自分そして家族がどう変わったか、という体験が書かれている。
人生にはさまざまな可能性があり、それを拓いていくのは自分だ、ということがよくわかる。
海外に移住したことで年収は落ちたが、より充実した人生を送っている人もいれば、前職より収入の上がった人もいる。まぁ挫折した人がこの本の取材に応じることはないだろうから、物事の明るい面だけを見ているきらいはあるだろうが、なりたい自分を意識して生きることの重要性はよくわかる。
ちょっと長くなるけれど、前書きの一部を引用する。
大袈裟だけど、「でも海外で物書きになった今、日本でサラリーマンをしたいとはまったく思わない。というか、他の何かになりたいとは全然思わない」というところを読んで、雷に打たれたようなショックを受けましたよわたし。
柳沢君の本は何冊か読んだけど、どの本の読後感もいいのは、中途半端な迷いがないからなのかな、と思った。
勿論10年前と今で心境に変化はあるかもしれないけれど、きっと今も彼は幸せなんだろうと思う。この本に出てくる他の人たちも皆、日本に置いてきた別の自分より、きっと幸せ、、かな。
別に海外には住みたくないけれど、今の自分に安住していてもいけないよね、と、考えるきっかけになった本でした。
柳沢君がお世話係をやっている「海外書き人クラブ」
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