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退化なんじゃないか

公園を散歩している。ふと、カラスが目に止まった。ポテトチップスの袋を咥えて、飛んでいる。

あのカラスは、ポテトチップスの袋を、どうするのだろうか。袋についた「しょっぱ」の部分を舐めるのか、はたまた、その袋ごと食べるのか。

しかし、カラスは、なんでも食べる。逞しい。


落ちたもの、拾って食べる息子に「食べちゃダメでしょ!」と、母親がキレている。とても、幼稚園児に受け止め切れる熱量じゃない。死ぬほどキレている。息子も息子で、慣れているのか、何食わぬ顔で、食い続けている。今の僕ですら泣く、キレられ方だ。逞しい。母親も、絶対に食べさせたくないんだろう。

落ちた物を食べると「細菌」に感染する。腹を壊す。だから、食べちゃダメなんだろう。

小さい頃、僕も怒られた。なんでも食べていた記憶がある。その結果、怒られるは、ギョウ虫検査に引っかかるは、大変だった。学校で行われるギョウ虫検査。「肛門に、セロハンテープを貼って、学校に持ってくる」という、面白検査に引っかかってしまった。もちろん、いじめられた。今となっては、良い思い出だ。

症状としては、肛門が痒くなるらしい。あと、落ち着きがなくなるらしい。確かに落ち着きがなかった。それが、ギョウ虫のせいなのか、教育のせいかは、よく覚えていない。

もし、カラスのギョウ虫検査をしたら、引っかかるだろう。今思うと、新宿のカラスが落ち着きがないのは、ギョウ虫の仕業かもしれない。かわいそうだ、肛門が痒くなったら、どうやって掻くのだろうか。心配だ。


僕の嫁は、軽く潔癖である。

結婚当初は、戸惑った。家に帰ったらまず、手洗いうがいをしないといけないし、布団は、風呂に入った後でしか、触れる事が出来ない。その他、もろもろルールがあるが、守らないと、詰められる。

彼女は、何をするにも除菌する。なので、つい「妖怪除菌ババア」とあだ名をつけてみた事があった。フルスイングでビンタをされた。100%僕が悪い。嫁が、ギョウ虫検査に引っかかる事は、ないだろう。

結婚して7年。綺麗好きが移って来た。

基本、良い事だらけではある。自然と清潔感が出てきたし、腹を下す回数も減ったように思える。しかし、一つ残念な事がある。

東南アジアに行った際、市場に売られている食材が、汚く見えてしまう。食べる事に躊躇するようになってしまった。これは、本当によくない。

「細菌」と言うものを学習した事で、危機回避能力がアップデートされた。だが、これは果たして、進化なのだろうか?



「落ちたもの、食べちゃダメでしょ!」
息子にキレていた、母親に聞いてみたい。

もし、今の僕が、今の感覚で、子供に戻れたのなら、あの母に聞いてみたい。

「カラスは、何でも食べてるのに、僕は何で、食べちゃダメなの?」

母は言うだろう。「カラスと人間は、体が違うでしょ!」

「なら、日本人観光客が、インドの水を飲むとお腹を壊すのに、インド人はなんでお腹壊さないの?」と返すだろう。

母は、黙るだろう。




すなわち「カラスと人間は、体が違う」は、大人の逃げであり、菌は、食べ続ければ、免疫がつくのだ。

綺麗に磨かれた野菜ばかり、食べるようになった人間は、汚い水で洗った野菜を食べられなくなり、衛生的によくない国の、意味のわからない、未知の食べ物を、新しい知識を、口に運ぶ事を、躊躇するようになる。東南アジアの市場で売られている、確実におばちゃん手作りの、ほぼ茶色の、愛の料理が、食べられなくなる。最終的に、驚くほど高い八百屋の、一個一個ラップで梱包してる、機械が生産した野菜しか、食べられなくなるのだ。

これを、進化と言えるだろうか。僕は、訴えたい。

そして、あの母親の前で、子供に言ってやりたい。

「落ちたものくらい食え」

まあ、僕は、食べないが。

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遠藤ビーム
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