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世界はうつくしいと。


油断していたら、凍っていた朝。
霜もおりて、霧も立ちこめて、浮かび上がるライトと信号のぼんやりしたまるい光を頼りに進む。
車のシートヒーターは好き、おしりがぬくぬくになってしあわせ。

山には雪もふったかもしれない。
あっというまの夜のほんの手前、パステルカラーの景色はシルエットだけになってはっきり見えなかったけど、その姿はうつくしかった。


冬がくるまえの、曇り日の、
南天の、小さな朱い実はうつくしいと。

「世界はうつくしいと」


昨日、コメダを出たあと、駅前の大きな書店に寄った。
文庫本コーナーは見ないと決めて、料理の本、手芸の本、あとは文芸書のコーナーを、ゆっくりじっくりと視線を滑らせるように見る。


大きい本屋さんのよいところ、それは、以前にネット上でおすすめに上がってきて気になりながらも通りすぎて行った本たちに、不意に出会うこと。
あぁ実物はこんなだったんだ、と装丁を眺め、手に取り開く。

昨日もそんなふうにして、忘れていたいつかの気になる本たちに出会い、めずらしく即決で買った2冊。
そのひとつが、長田弘さんの詩集「世界はうつくしいと」。


私、(自分でも残念に思うけれど…)詩を味わう、と言えるほどの心を持ち合わせていない。
でも、この長田さんの言葉は、まっすぐ、強く、静かに、確かな重みをもってお腹の中におちてゆく感じ。
そう、心というより身体の中に。


大げさかもしれないけれど。
あぁこれがあれば生きていけるかも、と思えるものに出会えることってありますよね。







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