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出会った時から、君は立派だった

通信制高校時代の生徒との出会いは全てが刺激的
全ての出会いが、自身の成長にも繋がる
あの時の真剣勝負は、いまに活きる


ご覧いただきありがとうございます。
今日は、自身の備忘録として”卒業生”のストーリーを書いていきます。
書こうと思い始めたら、一人一人のストーリーが濃すぎるので、別の生徒版も今後作成していきます。


出会い

私の記憶では、Nくんが転入してきたのは高校1年生の時。

一番最初に入学前面談をした担当の職員から「この生徒はenya先生にしか頼めないから、よろしくお願いします」と言われた。

おー、またなかなかの生徒なのかな?
そう思いながら、生徒情報を見る。写真を見る。
全く普通の真面目そうな子じゃないか。

…アレルギー発症後、治療の過程で記憶喪失がある?
…学習の記憶等にかなり障害がみられる…?

さて、これは直接お話をしないと。

入学後最初の担当のガイダンス。いわゆる三者面談。
緊張の面持ち。
本人は非常に真面目な雰囲気で、少しずつ語り始めるも、
途中で言葉が詰まる。

「この子は、途中記憶がなくなっているところがあるので、ここからは私が補足しますね」
という母親。

簡単にまとめると
中学校在学時にアレルギーが発症し、そこで治療が行われた。
その際の治療の注射についても、アレルギー反応が発生し、複合的反応により、短期的な記憶障害が残ってしまっているとのことだった。

中学在学時は、学年でもトップクラスの成績。
運動も万能。いわゆる優等生で、性格も明るい。
学園物の漫画に出てきそうな”リーダー気質”のある子だった。

でも、特に学習に関する記憶がなくなり、
小学校~中学校内容について、ほぼ分からなくなってしまっていた。
そしてこのアレルギーは、またいつ発症するかわからない。
脳に刺激を与えることも危険かもしれない。
季節の変わり目の気圧の変化によっても、何か起こるかもしれない。

そしてお母さんは最後涙ながらに語った。
「ここまでの話をすると、どの学校でも首を捻られ、ウチでは対応できないの一点張りだったんですが、初めてココだけが受け入れてくれたんです」

なるほどね。そういうことね。
私の中で、燃え上がる何かが出てきました。

「わかりました。では一つ一つ明日から登校していけるように、学校の説明と不安点があればゆっくり話していきましょうか」

一通り話をし終わって最後に、
「特に確認しておきたいことはある?」
「(Nくん・保護者ともに)特にありません!詳しくありがとうございました!」

「…じゃあ最後に、少しだけ待ってもらえますか?」
一旦面談室を離れ、あるものを持って戻る
「これを渡しておきます。必ず携帯しておくようにするといいかもしれないね」
普段は渡さない”名刺”さらにあえて”写真付き”にして、裏面には
”何か”忘れた”ときはここに連絡”と記載。

Nくんは、物事を忘れないようにするために、すぐにメモする癖をつけていたようでした。それでも”何か”あったとき、どこにメモをしたかを忘れてしまうこともある。
ならば、学校の事に関しては、ここに聞けば大丈夫!という安心感を与えることが最重要だと考えました。


環境変化で成長する

その後、病気に関する不安は抱えつつも、
・登校を自分のペースで出来ること
・卒業という通過地点のためにやらなければならないこと(課題提出)
・学び直しを自分次第で出来る環境にあること
これが彼にとって、不安をなくし、自分の努力次第で変えていけると思えたのでしょうか。すさまじい勢いで成長を果たしていきました。

英語に関しては、高校2年修了時に英検準2級、漢検2級を取得していた記憶があります。※でも英語は滅茶苦茶、苦手と言ってたかな?

学校内でのイベントでは、実行委員に立候補したり、司会進行の時は堂々と話をしたり。何よりも、どんな生徒とでも分け隔てなく話をすることが出来るその力は、全職員誰しも認めるところでした。

そして自身の抱える病気に伴うことについても、
「enya先生、ちょっといいですか?」と自ら相談に来て、
「本当に信頼できる友人に対して、自分の病気のこと、そろそろ話をしてもいいかなと思うんだけど、先生はどう思いますか?」
と上手く担当の私を使うことが出来るとてもバランス感覚の優れた生徒に成長していきました。

ただやはりアレルギー関連については、過敏になるので、そうした面での配慮や環境設定を整えていくことは、私自身のかなりのミッションだったかと思います。


その時は突然訪れる

高校3年の夏頃。朝、職員室にいた私に一本の電話が入ります。
「Nくんからなんですけど、なんかenya先生を…としか言わないです」

何だろう…。Nくんから、直で連絡とは珍しいな。
まさか…?

「はーい、どうした?」
先生、やばいです。とりあえず、”忘れたら”ここに連絡って書いてあって連絡をしたんですけど、電車の乗り方も時計の読み方も、学校への道のりもなんか思い出せません…。最初携帯の使い方もわかんなくて…
今にも、焦りで泣き崩れそうな声が聞こえてきました。

「じゃあ、今日は家で待機しようか。で、今から言うことだけメモって!」
と伝え、”先生とお母さんと話す”だけ書いておいてもらいました。
そしてその後、お母さんに連絡。

「このタイミングで来ましたか…しばらくお休みになるかもしれませんが、主治医との相談をしたうえで状況を、またご報告させていただきますね」
「ちなみに卒業要件はどうなんでしょうか?卒業できますかね?」
お母さんは冷静でした。

その後、2週間から3週間ほど休みが続きました。
お母さんより連絡があり
「改めて今後の事について、面談をお願いしてもいいですか?」
とのことでした。

まずは状況の確認
・症状は悪化していない。ただし少し忘れている部分もある。
・気持ちの面で不安定な状態ではある。
・激しい運動はオススメはしないが、問題はなし。
・以前ほど免疫が出来ているので、成長と共に緩和されているかも。

Nくん・お母さんからはこんな提案が出てきました。
・このまま行けば大学進学も出来るかという話だったが、やはり厳しいか。そのため、本人のやりたいことを相談の上、就職も専門学校も含めて全ての可能性を再検討したい。また最悪は今年度の卒業を諦める判断もある。
・一時的に忘れているものが、どの程度なのかわからないので、入学当初と同様なリズムの登校・学習スタイルに戻したい。
・心配している友達もいるので、話をしたいが、全員ではなく、一部生徒のみにしたい。全員に聞かれたくないので、面談用の個室を使って話をしていきたい。

私の質問はこれだけです。
「Nくん自身は、どうしたい?」
私が一番気になっていたのは、”今年度の卒業を諦める”という判断についてでした。

「出来れば、同じ年代の友達と一緒に、卒業したいです」

「じゃ、それを今段階の最上位目標にしよう。進路は同時進行ではやるけど、優先順位は”卒業”ね」
…お母さんが横で泣いてました。


そして卒業へ

その後、本当に大きな症状の悪化はなく、微妙な体調不良に悩まされ続けながらも通学や学習を進めていくことが出来ました。

進路は、専門学校。
ホスピタリティを学びたいとのことで、進路決定についても、きっちりと面接練習をし、そしてあっさりと進路決定の報告をしてきました。

卒業式の少し前くらいに、Nくんから呼び出しを受けました。
感謝を伝えたいのと懐かしい話を、1時間くらい続けていたと思います。
途中からは、仕事が終わらなくなるので
「事務作業手伝え!」
「人遣いが相変わらず雑。本当に無茶振りと雑さがヒドいっすね(笑)」
とまぁこんなやり取りができる関係性で巣立っていきました。

その雑談の時に
「夏頃の三者面談の時に、うちのお母さん泣いてましたよね?あれ何でだかわかります?」と聞かれました。

「初めてだったらしいすよ、オレ(Nくん)の意思を完全に最優先にしてくれた先生って。腫れ物に触るみたいに、こっちの言うことをハイハイ聞いたり、学校としてはそこまでは出来ませんってピシャリとされたり…。だから『Nくん自身はどうしたい?』って質問が嬉しかったって」

「そういう話を、あの時は…っていう風に今、ここで私(enya)に話をできるアナタ(Nくん)が立派だし、本当に成長したんだろうね」


出会った時から、君は立派だった

しかし、改めて考えれば、まだ15~18歳くらいの若い年代にどれだけの重荷を背負って、Nくんは私と時間を過ごしたんだろう。

その重さは、私の想像を超える。
というより、想像してもしきれない重さ。

それを切々と、初対面の私に出会った時に語れた。
もうすでに君は「立派」でした。

彼らの年代が卒業後、私がその勤務地を離れる(異動)と決まった時の3月。
7名くらいの男子陣が一斉に訪ねてきました。

Nくん主催なのか、その時のメンバーの総意なのかわかりませんが、
私の”卒業式”をしてくれました。
おそらく進学先で学んだ”ホスピタリティ”が如何なく発揮されていたのでしょう。

その後、連絡先は知っているものの、お互い連絡は取りあいません。

私の主義ですが、
”その生徒の人生の中で、先生という存在は忘れ去られても良い存在”だからです。いつまでも先生に頼るのでは、巣立った割には羽ばたきが足らないかなと思ってしまうのです。

お互い同じ土俵で、あの時は懐かしかったね。
そんなお互い成長した姿で、また出会えるのを楽しみに。

きっとその時も、君は立派になっているはずです。

最後に
”この生徒はenya先生にしか頼めない”と言ってきた職員から、
「だから言ったでしょ?笑」と、滅茶苦茶ドヤ顔されたのも、鮮明に覚えています(笑)


ご覧いただきありがとうございます。
読まれる楽しさを噛み締めながら、継続していきますね。

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