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映画「港に灯がともる」を観て思ったこと、感じたこと
先日、「港に灯がともる」という作品を鑑賞しました。この作品では、阪神淡路大震災の翌月に神戸市長田区(以下、長田区)に生まれた在日コリアン三世の主人公・灯の葛藤や成長を描いています。
時代は、震災から20年が経った頃からコロナ禍までの期間。父母が語る家族の歴史や震災当時の記憶に苦しんできた灯が、様々な人との関わりを経て、自分や家族、長田区の方々と向き合いながら生きていくお話です。
時折抱く緊張感
この作品では、家族内で口論になる場面や登場人物が苦しむ場面などがあり、観る側にとってそれらが精神的なストレスに繋がることがあります。私は作中、自分もその場にいるような感覚になってしまい、ストレスを感じました。
鑑賞した次の日には軽い頭痛があり、それほどまでに灯役である富田さんの演技や作品が、私の中に深く刻まれた気がします。
主人公の外見の変化や内面の成長
灯は、父母が語る家族の歴史や震災後の大変さが理解できずにいました。産まれた時から日本で暮らしており、震災当日は産まれる前だったため、それらの話が重荷に感じているように見えました。
上記から怒りや不満が積み重なり、灯は精神的に不安定になりますが、友達から勧められた病院での治療や転職が転機となり、徐々に変化していきました。父や故郷である長田区の方々など、誰かに向き合ったり誰かのために行動したりするようになります。
このような内面的な成長が描かれたと同時に、外見にも変化が現れます。精神的に不安定な時期は、髪をとかすにも途中でひっかかったり肌も健康的ではないように見えたりしました。一方で、終盤では髪や肌の質が綺麗になっていました。
様々な人との関わりを経て、灯が成長する過程が描かれるのが良いと思いました。
在日コリアン二世・三世の意識、考え方の違い
灯の家族は在日コリアン。作中では、二世(親)・三世(子)との間で、意識や考え方の違いが表れていました。一方で、相手と向き合おうと歩み寄る姿も描かれており、家族との距離感や関わり方について考えさせられる作品です。
二世の方は、朝鮮人であることをとても大切に感じているように見えました(特に灯の父)。二世である灯の父は、自身の親が日本で苦しい思いをしながら生きてきたことに心を痛めていました。
私は、灯の父は「朝鮮人である自分」を守ろうとしていたのではないかと思っています。
今後どのような生き方をするにしても、朝鮮人として日本で生きてきた家族の歴史と、自分たちは朝鮮人であることを忘れないでほしい。作中で、灯たちにはそのように伝えたかったのではないかと思います。
一方、三世である灯たち子どもは三者三様。結婚を見据え、帰化申請を進める姉。帰化申請に同行しつつも、朝鮮人でありたそうな弟。特に帰化したい理由はなく、流されるままに帰化申請を行う灯。
3人とも意識や考えは違いますが、二世と比較すると、朝鮮人でありたいという強い思いはないように見えました。二世と三世の意識や考え方の違いが、父との不和につながった気がします。
それでも灯は、物語終盤にかけて、100%ではなくても父を理解しようと向き合い始めていました。お互い意識や考え方は違えど、父と向き合うことも灯自身の出自と向き合うことにつながっている気がしました。
崩れても再建できる、希望はある
灯は、転職先である設計事務所で働く中で、故郷・長田区にある丸五市場の再建に携わります。丸五市場はシャッターが閉まっている店舗が多いですが、市場を大切に想い、店を経営する方も多い場所です。
しかし、感染症の流行が原因で、丸五市場の再建が中止になってしまいます。また、家族との関係など様々な出来事が重なり、設計事務所の代表である青山さんがお酒に溺れ、入院してしまいます。
支え合いながら震災を乗り越えてきた市場を、居場所として残していきたいという焼きそば屋の女性の想い。再建イメージを膨らませていた青山さんの想い。この想いを無駄にせず、市場の再建のために何かできないか。
丸五市場のため、焼きそば屋の女性に語りかける灯の姿に、とても成長を感じました。
最終的には、丸五市場の歴史や店を構える方々の家族、居場所としての市場の姿などを写した写真展が開催されました。会場は賑わっていて、市場が居場所として再認識されていると思い、希望を感じました。
もう一度見たいと思た映画
物語終盤、入院した青山さんのその後が気になってしまい、「最後に出てこないかな」と期待していました。結局、最後まで青山さんが出てくることはありませんでしたが、その後無事退院して社会復帰できていたら良いな……と願っています。
物語前半は緊張感を抱く場面が多かったものの、後半になるにつれて灯が成長すると同時に、その成長を心の中で応援している自分がいました。もし機会があれば、もう一度見たい映画です。
長文にはなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。