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【適応障害・パニック障害】元の元気な自分に戻れなくても

10代の頃の私は、毎日があっという間に過ぎていくような、活気に満ち溢れた毎日を送っていた。友人と笑い合い、好きなことをして、将来への希望に胸を膨らませていた。そんな私が、いつからこんなにも小さなことで動悸が激しくなり、息苦しくなるようになったのか。

適応障害・パニック障害と診断されてから、私の世界は一変した。電車に乗るのも、人混みにいるのも、気が気じゃなかった。外出する度に、いつ発作が起きるのかと、恐怖に怯えながら過ごしている。

体調に異変があったのは、システムエンジニアになって1年が過ぎた頃。深夜に吐き気に襲われた。食中毒を疑い、病院へ行ったところストレス性胃炎だと診断された。

その頃はブラック企業に勤めていて、終電帰宅が当たり前。経験不足な自分に、案件の全ての責任がかかっていた。エンジニアの仕事はチームで分業体制をとって行うのが一般的だが、人手不足だったのだ。辛かったし、しんどかったが、自分にとってチャンスだと考えていた。この試練を越えれば、一人前のシステムエンジニアになれる気がしたのだ。

でも、少しづつ異変は大きくなっていく。ある日、都会の人混みの中で吐き気に襲われたのだ。動悸もする。どこにいけばいいかはわからないけど、どこかに逃げ出したい。怖い。どうすることもできず、トイレに駆け込んだ。

この日を境に、同じような症状がたびたび現れるようになった。映画館、電車、車など、どこにも逃げられないような場所へ行くと苦しくなる。心臓の病気なんじゃないかと思って、病院を受診したが異常はなし。血液検査も異常なしだった。

その時は、本気で心臓病だと思っていた。インターネットで検索すると、症状が出ているときに病院に行かないとわからない病気もあるとあったので、次に同じ症状が出たら循環器内科に行ってみようと誓った。

その機会は、すぐにやってきた。仕事中、動悸がして胸が苦しくなった。すぐに休憩をもらい、たかが100mの距離をタクシーで病院へ向かう。

病院は少し混み合っていたが、受付で「動悸がして苦しいです」と伝えるとすぐに先生のもとに通してくれた。これでやっと原因がわかる。この体調不良から解放されると、状況に似合わず心は踊っていた。心電図をとり終わり、結果を見ながら先生はこういった。

「最近ストレスを感じてない?」

異常はなかったのだ。こんなにも体調が悪いのに、体に異常がないなんてあるんだと状況に似合わない衝撃を受けた。

「こういった患者さんよく来るんだよ」、と先生はどこか悲しそうに言い、疲れているでしょ、と個室に通され、無償でマッサージチェアを好きなだけ使わせてくれた。病院でマッサージチェアなんて、こんなことあるの?と戸惑う気持ちと、きっと先生が休憩で使うのであろう部屋を使わせてくれた優しさに、なんとも言えない気持ちになったのを覚えている。

その後心療内科を受診して、適応障害だと診断された。

その後4ヵ月の休職の末、転職をした。職種はまたシステムエンジニア。
まだまだエンジニアを頑張りたい気持ちでいっぱいだったし、何より元いた会社がブラックだったので、環境が変わればまた頑張れるに違いないと信じて疑わなかった。

次の会社は、とてもいい会社だった。人手もあり、しっかりチームで作業を分担している。1人で全ての責任を背負わなくていい。自分が望んだ環境が全てあったといっても過言ではない。ここでなら頑張れると意気揚々としていた。

しかし、そんな日々も長く続かなかった。ある日電車で突然、感じたことのある、あの嫌な動悸、吐き気に襲われたのだ。

まさか、また。

怖くなり仕事を調整するも、体調は悪くなる一方で、ある日ついに無気力で全く動けなくなってしまった。そして現在、私は人生2度目の休職をしている。

どん底に突き落とされる気がした。こんなに整った環境で。この環境でこうなってしまうなら、私はどこでなら元気でいられるのか。自分の人生ここまでなのか。私は何もできない人間なのかと、自分を責める気持ちが大きくなった。

周りの人からは、「真面目すぎる」と言われる。確かに、仕事をするからにはこだわって良いものにしたいと思う。今できないことでも、挑戦し少しづつできるように勉強していきたい。チームメイトが困っているなら助けたい。チャンスが目の前にきたら掴みたい。これらの気持ちを真面目と言うならば、私は真面目なのだろう。私なりに、これまでの人生で認識してきた自分の長所だったのに。まさか、長所に苦しめられるとは思いもしなかった。

体調が悪くなるたびに、自分自身を否定された気持ちになる。パニック発作の恐怖は、私をぐるぐると回る悪夢の中に閉じ込める。

以前のように、好きなことを心から楽しめない。大好きだった旅行にも、怖くていけない。友人にも気軽に会えない。将来のことも、漠然とした不安しか感じない。

「元の元気な自分に戻りたい」と願わない日はない。でも、あの頃の私はもういないのかもしれない。それは、私にとってとても辛い現実だ。でも、この現実を受け入れるしかないのかもしれない。

今の私は、以前の私とは違う。でも、それはそれで、今の私の「普通」なのだ。元の元気な自分が一つの通過点であったように、今の自分も通過点にすればいい。いや、通過点にしてみせる。

この経験を通して、私は多くのことを学んだ。自分の心の奥底にある弱さや脆さ、そして強さにも気づいた。「元の元気な自分」にしがみつくのではなく、今の自分を受け入れて、少しずつでも前に進んでいくこと。それが、今の私にできることだと信じると決めた。

この先も、パニック障害と上手く付き合っていくのは簡単なことではないだろう。それでも、私は諦めずに生きていきたい。

同じように苦しんでいるあなたへ。あなたは決して一人ではありません。私たちには、それぞれの人生があり、それぞれのペースで生きています。無理せず、自分のペースで進んでいきましょう。

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