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映画感想文『ブリキの太鼓』*多分ネタバレ注意

(大昔に書いたブツの再掲です)

原作がエゲツないというか、知人から「読んで生理的嫌悪を感じる」とも聞いていたのである程度内容は覚悟していたのですが、実際映像化されるにあたりそこまで際どい描写はカットせざるをえなかったからか?案外拍子抜けしました。
ただ排泄シーンが多かったり食事シーンがことごとく汚かったり(チェコのシュヴァンクマイエルも食事の場面を汚らしく描いていたりするけど、あっちの方の文化だとそういうコンテクストがあるからなのか?)わりとどぎつい性描写(修正まで入ってる…)もいくつかあったし、魚を捌くようなこりゃ人によってはダメでしょって思える場面もあったけど(でもちゃんと「映画内で〆たお魚は俳優さんが頂きました」的な展開になっててまだよかった)。あと小人のサーカスとか、今倫理的に見たら完全アウトだろうな。

で、本題だけど、主人公のオスカルってまさに「戦争そのもの」のメタファーにしか見えないわけですよ。
ドラムの音はナチス時代の放送やユーゲントの演奏する音楽(劇中にもあった!)のようなメディアを用いたプロパガンダだし、絶叫してガラスを破壊するという能力は暴力行為や破壊とそのショックの比喩。
あと、「3歳で成長を止めた」と言っているのにその理由含めて嫌に全体的にシニカルだし(実の親が死んでも泣かない)、後半に出て来るマリアやロズビタに欲情するくらいには性的にも発達するし、3歳で精神の成長を止めていないどころか四六時中マセガキの振る舞いを見せている。最初はダンツィヒ(グダニスク)に来たナチスをおちょくっていたのに小人サーカスに入って前線へ慰問に出かけたりする。まあ、彼が当初軽蔑して成長を止める理由だった汚い大人たちとえてして変わらない。
そういうのも全部ひっくるめてオスカルは「戦争」そのもの(特に第二次世界大戦)を体現しているんだなあとしか思えない。よくある「汚い大人たちが戦争でやり合ってるのを純真無垢なオスカル少年がシニカルな目で見て…」なんてあらすじなんだろうな、って思って見始めると期待を裏切られますよ。良くも悪くも。

それと舞台のグダニスク、また原作者グラスのルーツにも関わるカシューブ人の扱いもこの映画ではキーポイントとして出て来ましたね。祖母アンナの妊娠からラストまで。借りてきたDVDには生憎ドイツ語にしか字幕がつかず、ポーランド語とカシューブ語はさっぱりわからなかったぶんもう少しここは勉強しておくべきところだったかな。(つまりそれくらいしかかけない)

ついでに(どうしても自分がそういう象徴とかそういうものに惹かれてしまうからか?)母親アグネスが産褥以外ではいつも赤い服を着ていたのも、彼女の不貞を暗示していた象徴だったのかな。それにラストのダンツィヒ陥落に出て来たアジア系のソ連兵も、東部戦線に中央アジア出身者が多く送り込まれたということから来ているのかな。

とりあえずいつものように観た直後に思いつくばかりの感想文を書き立てました。ちゃんとまとめたのをいつアウトプットするかはわからないけど。(主題は第2段落になりそうかな??なんてね)

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