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ボローニャ国際絵本原画展を見に板橋へ

こんにちは、みしまです。
今年もまたこの季節がやってきました。夏といえば、板橋区立美術館で開催されるイタリア・ボローニャ国際絵本原画展です。

板橋区立美術館の入り口

ボローニャ国際絵本原画展は、イラストレーターの登竜門といわれていて、今年で58回目の開催だそうです。81の国と地域から3,520名の応募が寄せられ、日本人4名を含む78名が入選しています。板橋区立美術館では、これらの全入選作品を観ることができます。なんとも贅沢です!

原画展の良いところは、なんといっても、作品をより近い視点で見られること。作家のたどった筆の跡や、息づかいを感じることができるのが魅力です。一方で本展では、すでに出版されている作品のいくつかは、本の形でも展示されているのが良いです。「絵本」としてのストーリーや、本の造形を堪能することができるからです。

公式カタログのカバーイラストを担当したパロマ・バルディビアさん

今年、私が楽しみにしていたことの1つ。それは、チリ出身のイラストレーター、パロマ・バルディビアさんが、この展覧会の公式カタログのカバーイラストを担当していることです。

パロマさんの著書『わたしたち』を読んでから、私は彼女の絵の魅力にはまってしまいました。

『わたしたち』
(パロマ・バルディビア 作/星野由美 絵/岩崎書店 刊)

『わたしたち』は、時がたっても形が変わっても、消えることのない親子のつながり・愛情を描いた美しい絵本です。

パロマさんが、今年の公式カタログのカバーイラストを担当されると知ってから、いったいどんな絵を描かれたのだろう、とワクワクが止まりませんでした。

そんなパロマさんが担当された公式カタログの絵はこちらです。

『Illustrators Annual 2024』
(2024イタリア・ボローニャ国際絵本原画展 公式カタログ)

広い宇宙を、カラフルな動物の上に乗って子どもたちが旅をしている。そんな印象のイラストです。子どもたちは、見たこともない世界へ大冒険をしているのだけれど、この優しげで素敵な動物たちに守られてとってもうれしそう。赤く立派なたてがみのライオンや、真っ白くしなやかな鳥の背にのって旅をしてみたい。そんな気持ちにさせてくれる絵でした。

本の形を生かした作品の数々

今回、私が気になった作品の特徴として、1つの本の中に複数のストーリーが展開される形式をとっているものがありました。どんな作品なのか、紹介したいと思います。

■「ALULA ジャングル/庭」

「ALULA 庭/ジャングル」(Reto Crameri/スイス)は、表裏両サイドから読める双方向の絵本です。テキストのないサイレント・ブックです。

1つ目のストーリーとして、庭を探検する2人の子どもが描かれています。そして、絵本の上下を逆さにして、反対側の表紙からめくってみると、今度は別のストーリーが展開されているのです。探検の舞台はジャングルに変わっていました。2つの方向からそれぞれ進んできた物語が、本の中心で出合う作りになっています。その出合い方がとても素敵で、感動を覚えました。ぜひ会場で、実際にページをめくって体験してみてほしいです。

子どもたちは、庭を探検しながら、想像力を使ってジャングルを探検している。そんな絵本でした。

■「Here/There」

「Here/There」(Thea Lu/中国)は、造本が斬新で驚きました。表紙を開くと、左右両側に2つの別々のお話が綴じられています。2つのストーリーを並行してめくることで、2人の主人公のストーリーを同時に味わえます。

それぞれの背景を持ち、別々の選択をして人生を進む2人ですが、実はつながっている。強いけれど穏やかなメッセージを受け取りました。離れて暮らす友人や家族と読みたい絵本だなと思います。

作者のThea LuさんのWebサイトで本のつくりについて詳しく説明されていますので、ぜひご覧になってみてください。この絵本もまた、板橋区立美術館に展示されているので、ぜひめくってみて体験してほしいです。

■「カタツムリを動かさないで」

最後にご紹介するのは「カタツムリを動かさないで(Da Wu/中国)」という絵本です。

https://flyingstarscc.com/Never-Help-the-Snail

岩を登っているカタツムリ。男の子がそれに気づき岩の頂上に乗せてあげます。すると鳥がやってきて、そのカタツムリをくわえていき……。町全体が、予期せぬ事態に巻き込まれていきます。些細に見える出来事が、どんどん別の事象を引き起こしていく流れが、紙面上でうまく展開されているなと感じました(言語が中国語のみだったので、想像力で補って理解しているところがあります)。読者は、絵本の中の人たちの混乱を俯瞰でみることができるので、くすっと笑ってしまうのです。


ブルーが印象的な『最初の舟』

今回の展示の中で一番心惹かれたのは、アマンダ・ミハンゴスさん「最初の舟」という作品でした。海の青い色の表現がすばらしくて、思わず息を飲む美しさです。

生命の息吹を感じる深い海、荒々しく打ち寄せる波。そして、穏やかな昼の海。さまざまな海の表情が人の感情と響き合っている。そんな風に感じました。

ミュージアム・ショップで絵本を見つけて購入し、帰宅後に調べてみると、文章を書いたジョゼ・サラマーゴさんは有名なポルトガル人作家だと知りました! 1998年にポルトガル語初のノーベル賞作家となった方だそう(無知を恥じます…)。

『El primer barco』
(José Saramago 作/Amanda Mijangos 絵/Lumen 刊)

AI翻訳(ChatGPT)を駆使して文章の内容を把握すると、ますます美しい絵本だなと気づかされました。

絵本の冒頭はこんな感じで始まります。

最初の船を作る前に、その男は浜辺に座って海を眺めていた。

『最初の舟』

海辺に住む人間と海の関わりを描いた美しい詩的なストーリーでした。
ぜひ、この絵本も板橋区立美術館で手に取っていただきたいです。

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板橋区立美術館での展示は8月12日までだそうです。暑い夏に、イラストレーターの皆さんの熱い想いがのった作品をぜひ感じてみてください!



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