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微熱.2


微熱2ヶ月目。

この少し高めの体温に慣れてきたけれど、やっぱりコンディションは万全ではなくて少し辛い。何度か病院に行ったけれど、原因は分からないまま。

いつもは受け流せていた上司の理不尽な言動を上手く流せなくて、一昨日つい嫌味な返事をしてしまった。

体調不良が続くことにも、余裕がない自分にも腹が立ってストレスが増していく。


そんな私のここ2ヶ月ほどの癒しは、週に一度会うあの人。私が休みの日に仕事の合間を縫って会いに来てくれる。

家から徒歩3分の喫茶店で待ち合わせが最近のお決まり。コーヒーを飲んでケーキを食べて、帰る時には歩いてすぐの距離を車で少し遠回りして家まで送ってくれる。


最初は軽い気持ちでランチの誘いに乗った。ただ誘われたからごはんに行くだけ。それ以外の気持ちはなかったし、特別な感情を抱いてはいけない相手だった。私も彼も、お互いに。


なのに気づいたら、どうにもしようのない感情が芽生えてしまっていた。会う回数を重ねれば、そうなってしまうことは明白だったのに。誘いに乗るんじゃなかったと後悔してももう遅い。


最初の頃は、彼に触れられても、だめだと分かっていたから私は彼に触れなかった。けれど、不思議なことに触れられるほど触れたいと思うもので、触れるほどもっと触れたいと欲が出るものだ。



許される限りは一緒にいようね、といつか彼が言っていた。私たち以外の誰にも許されるはずがないのに。


未だ分からない長い微熱の原因は、ひょっとしたら彼なのかもしれないな、なんてふと思った。


いくら検査しても分からなくて、もしかしたら霊なのかもと非現実的なことを思いついた。目に見えない悪いものを断ち切ろうと、先週、胸より下まで伸ばしていた髪を肩につかないくらいの長さにばっさりと切った。


引越した先のマンションの空気が悪いのではないかと心配する彼氏が空気清浄機を買ってくれた。


それでもいっこうに微熱が下がる気配はなくて、考えつくものが彼の存在しかなかった。笑えてしまうけれど、100%否定もできない気がする。だって私たちは誰にも許されないことをしているから。恨まれても仕方のないことをしているのだから。


彼をばっさり切り捨てられたらいいのに。そう思うのにどうしても手放したくない。私はひどい人間だと思う。


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Rin
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